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私はよく寝ている間に幽体離脱をする事が多いので、おそらくその場所もただの夢ではないのだと仮定した上でお話しします。
10年程前から今に至るまで私は3回引っ越しをしているのですが、1回目の引っ越しの辺りから何度も同じ場所が夢に出てくるのです。夢と引っ越しになんの繋がりがあるのか、未だに不明です。
最初は私の本家で気が付きまして、何となく長居したくない雰囲気から私は急いで自宅のアパートを目指すのですが、周りの土地は地元の見知った立地でした。
本家からスーパーに直進し、右に曲がってしばらく行くと信号にぶつかります。そこから左に曲がって直進するとドラッグストアがあり、そのドラッグストアの周辺にある薄いピンクのアパートが私の自宅だと、どうしてか強く思うのです。実際にはスーパーから左に曲がらないと現実の私の自宅はないのですが、夢の中では必ず毎回右折をしてしまうのでした。手には鍵があり、ここだと思うアパートの、1階左から2番目のドアを開けることが出来ます。外装からして現実で引っ越した事のあるアパートではありませんし、実際にドラッグストアの周辺にそんなアパートは存在しません。なのに何故か夢の中の私はその場所を懐かしいと感じ、必ずそこに向かうのです。途中で「あれ?こんなアパートあったっけ?本当にここは自分の家か?」と疑問が一瞬湧くのですが、まるで何かに圧力でもかけられているかのようにその概念は一瞬でなくなり、私は当たり前のように『見知らぬ自宅』に入って行きます。中は薄暗く、部屋は広めの2DKで、家具は本当に最低限しかありません。ほとんど何もないこの部屋に入ると、凄く居心地が良くてここから出たくない、そんな気分になるのです。毎回無人のこの自宅に帰ってくるまでが夢の内容だったのですが、3回目辺りで今の夫にその話をすれば「あんまり行かない方がいいよ、そこ」と言われました。好きでそこに行っている訳ではないので、何が引き金なのかわかりませんが、おそらく最低9回はそのアパートを夢で見ています。
5、6回目までは無人のアパートに帰ってくるだけだったのですが、おそらく7回目辺りからアパートの中に男女の小さな子供が遊んでいるのを目にするようになります。相変わらず何も無い部屋で走り回る子供達に、何故か凄く苛立ち「他人の家で勝手に遊ぶな!」と怒鳴ってしまうのです。怒鳴られた子供達は渋々何処かへ帰って行くのですが、8回目もまた部屋で遊んでいるのが見つかり、怒鳴られ渋々帰って行くのでした。そして回を重ねる毎に目覚めた時の私の心境に妙な変化が起きます。現実に目覚めた事への酷い不快感と一緒に、一瞬「ここは何処だろう?」と疑問が湧くのです。夫に変な夢を見たと言うと、必ず嫌そうな顔で「だから、そこ行ったらダメなんだってば」と言われます。何故か理由を聞けば「何回も行くと、そのうち帰って来れなくなるから」と。あれはそういう場所なのだと言います。なんでそんな事が分かるのかと訊(き)けば、「俺も行った事があるから。あそこに出てくる人物みんな真っ黒な影だよ。触ったらダメなやつ」と言うのです。私には生身の人間に見えましたが、「それは雪ちゃんが入り浸り過ぎて影響を受けているから。もう行ったらダメだよ」と注意されました。しかし2022年7月の末、9回目にして再び同じ場所が夢に出てくるのでした。
前回からかなり間が開きましたが、今回も今までと同じく本家で気が付きました。しかし今回は本家の人達の様子がおかしいのです。どうも私と口論したのか凄く怒っていて、急いで帰らないといけないと今まで以上に強く思った私は、本家にあった自分の持ち物を大きなキャリーケースとリュックに必要最低限全て詰めて、急いでいつものアパートに帰りました。鍵を開けようとして、施錠されていなかった事に気付きます。恐る恐る部屋に入る私ですが、中は無人でした。しかし違和感があり部屋を巡回すれば、今までなかったストーブがついていて、上にグツグツと煮えた鍋が保温されていました。今の季節は秋だったかな?外に積雪はないし……と首を傾げる私に「食べないの?」と急に声がかかり、振り向けば私の母が立っていました。お腹は空いていませんでしたし、何より自分が作った記憶もないので「結構前に作ったやつだから……お腹壊すから捨てるね」とシンクに鍋の中身を捨てれば、母はチッと舌打ちして「戸締りはしっかりね」と言い残し出て行ってしまいました。帰る時は1人でしたし、いつから背後に母がいたのかも全く気付かず、なんだか怖いなと感じていると、今度はガチャガチャとドアを開ける音が聞こえました。驚いて玄関へと走れば、見知らぬ親子(母娘)が立っていました。母は夏らしい服装、娘は何故か防寒具を身に着けていました。
その母親の手には鍵の束が握られていて、「その鍵はうちの?」と訊けば母親は笑顔で「そうだよ!」となんのわびれもなく頷くので、私は凄く焦りました。「うちの鍵は返してね」と強く出れば、母親はちょっと不思議そうに首を傾げつつも、返してくれました。傍にいた防寒具の娘は「あーあ。隠れる所ひとつ減っちゃったねぇ」と残念そうに呟き、母親も「そうねぇ。でもまだ何箇所かあるから」と諭すように鍵束をチラつかせて去って行くのでした。今までこんな事はなかったので、凄く混乱しました。勝手に合鍵を作られて入ろうとしていたのだから通報するべきだと思うのに、あんな単純な警察の番号が分からないのです。そして何より、携帯が手元にありません。不意に、私は今までここに帰らず本家にずっといたのか?何でまた本家に滞在?と現実では有り得ない事に疑問が浮かびました。夏休みだとしても、自分の娘しかお泊まりなんてしません。そして21時になるのに娘の姿がないのもおかしいのです。何だか嫌な予感がして、外に飛び出せば、見知ったドラッグストアや住宅街が目に入ります。付近の公園を通りすがろうとして、偶然娘を見付けた私は立ち止まりました。娘は元気に遊具で遊んでいました。「なんでこんな時間まで遊んでるの!危ないから帰って来なさい!」と呼び掛けると、ブランコに乗っていた娘は「はーい!」と元気よく振り返ったのですが、その顔は全く別人でした。ぎょっとして固まる私に、知らない女の子が近寄って来ます。女の子は公園に居た友達であろう女の子2人組にバイバーイ!また明日ね!と手を振って、私の手を握りました。
ーーー酷く冷たく固い手でした。驚いて女の子の手を振りほどき、私は逃げ出しました。女の子も追い掛けては来るのですが、大人の全力疾走には追い付けなかったようで、かなりの差がついて私は自宅のドアを開けて中に入り、急いで鍵を締めました。「お母さーん、お母さーん」と女の子が私を探す声が聞こえます。戸締りさえしてしまえばもう大丈夫だと、私は安堵してリビングに繋がる内ドアを開ければ、先程の小さい女の子の形をした黒い影が座っていました。「オカエリ、オカアサン」とノイズのかかった気味の悪い声と共に、黒い影が笑ったのが分かりました。我が子じゃない、誰だこの子!と危機感を覚えて咄嗟に口走ったのは「違う、帰らなきゃ」という言葉でした。「オウチハ、ココデショ。ナニイッテルノ、オカアサン」とノイズ混じりの声が迫り、私は急いで自宅を出ようとドアを開き……その瞬間「ツギハ、ナイカラナ」と低い男のような声が聞こえてーーーそこで目覚めました。が、目覚めた場所が何処だか分からなかったのです。ハンガーにかけた服、冷風機、ゴミ箱、兎の小屋、モニターに並ぶフィギュア達、それからゲーム機……見知った当たり前の光景があるはずなのに、部屋の構造などが夢のあのアパートと違い過ぎて、自分が今何処にいるのか本当に分からなくなっていました。
困惑している私に、隣で寝ていた夫が「なしたの」と声を掛けてきました。夫が影でない事に安堵しつつ、次第に先程のが夢でこっちが現実だと頭が追い付き、「あー……また変なアパートの夢見てさ、一瞬この部屋の中が何処か分からなくて焦ったわぁ」と笑い話っぽく言えば、寝起きの夫はキツい口調で「また行ったの?ダメだって言ったのに」と私を咎めました。「次で10回目だっけ?10回超えたら戻って来れなくなるよ。あそこはそういう場所なんだって。だから散々ダメだって言ったじゃん」そう言って私の左側の頭を引っ付かみ「しかも何かくっ付けてるし……」と溜息混じりに引き剥がしていました。夫の手には黒い影の塊が握られていました。「あそこね、多分記憶が混ざるんだよ。夢の中って認識が出来なくて、こっちに戻って来た時に現実の場所が何処か分かんなくなるの。思い出せなくなるのさ。今さっき雪ちゃんも少しなってたでしょ。あれ、最後は思い出せなくなるの全部。だからもう絶対行ったらダメ。呼ばれてるんだろうけど聞いちゃダメなの。ね、分かった?雪ちゃんすぐ飛ぶ(幽体離脱する事)から……全く……」後半は呆れたようにブツブツ呟いていましたが、彼なりにかなり心配していたようでした。
ーーーもし10回目にまた呼ばれた時、行ってしまったらどうなるのでしょう。仮に戻って来られても、現実の自分の家が思い出せ亡くなるのでしょうか。実際9回目に夢から醒めた後、自分の家の構図はすぐに思い出せましたが、本当に30分くらい外の風景が全く思い出せなかったのです。窓の外を眺めて、本気で「私こんな所に引っ越したっけ?こんな風景知らない……」と思ったのです。本家からスーパーまでの道のりは思い出せるのですが、自宅に行くにはそこから左折するのがどうしても思い出せなくて、こんな立地は知らない……と混乱してしまいました。新聞を取りに外に出てようやく風景も全部思い出せたのですが、後々考えると自宅が思い出せなくなるなんて、かなりおかしいですよね。夫が言うにはあそこは幽体離脱して行った先の空間だったようですが、記憶障害の残る霊障は初だったので、凄く奇妙な体験をしたということで、この話は終わりです。これに関しては後日談があってはいけない気がします。今後私の投稿が無くなった場合、10回目のあの夢を見てしまって戻れなくなったのだと思って頂ければ幸いです。私的にはその後の展開が凄く興味深いので、次に呼ばれたら行く気満々でございます。運良く行った後に帰って来れたとしても、何も思い出せなくなる事を想定した上で、文に残しておきます。