テラーノベル
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前回の続き
⚠︎︎『俺の秘密』と設定は一緒だけどはなしは別物とみた方がいいかもしれない…(時系列とかごちゃごちゃ)
※赤ちゃんはbabyと勘違いしちゃいそうなので赫ちゃんに変更しました。
それに合わせてこはゆが分かる範囲で翠とか瑞とか使ってみました。
【翠 side】
朝になって、家の中が少しだけ明るくなった。
でも俺の体は、まだ夜のままだった。
胸の奥が重くて、息を吸うとどこか引っかかる感じが残ってる。
布団から起き上がっても、ふらっとした。
でも、転ぶほどじゃない。
だから、だいじょうぶ。
廊下のほうが、朝からざわざわしてた。
黄ちゃんは、まだ咳が止まらなくて、
瑞ちゃんも、呼吸のたびに小さな音を立ててる。
「治まりきってないな」
「今日は病院行こう」
桃にぃと、茈にぃの声。
俺は、壁にもたれながら、その会話を聞いてた。
胸の奥が、きゅってなる。
……病院。
行くのは、黄ちゃんと瑞ちゃん。
「翠は、赫と2人で留守番できるか?」
その言葉が落ちた瞬間、
俺の中で、何かがすとんと決まった。
(あ、俺は行かないんだ)
不思議と、安心した。
病院は、怖い。
よく分からないし、知らない人がいっぱいだし、
苦しいのがバレるかもしれない。
それは、ちょっと嫌だった。
「俺、だいじょうぶ」
「赫ちゃんと、待ってる」
そう言ったら、桃にぃが少しだけほっとした顔をした。
「ありがとうな、翠」
ありがとう、って言われたから。
役に立てた気がして。
だから、言わなかった。
昨日の夜のことも。
今も、息がうまく入らないことも。
赫は、玄関の近くで立ってた。
小さい手をぎゅっと握って、不安そうにしてる。
「……瑞、いたい?」
「ちょっとだけだよ」
俺は、そう言って、赫ちゃんの頭をなでた。
本当は分からないけど、泣かれたら困る。
玄関のドアが閉まる音がして、
足音が、遠ざかっていく。
家の中に、俺と赫ちゃんだけが残った。
「しずか……」
赫ちゃんが、ぽつりと言う。
「うん」
静かすぎて、音がないのが、逆に怖い。
赫ちゃんは俺のそばに寄ってきて、
服のすそをぎゅっと掴んだ。
「翠にぃ、ここ」
「いるよ」
ソファーに一緒に座る。
背中を背もたれに預けると、胸が少し楽だった。
……気がしただけかもしれない。
時間が、ゆっくり進む。
テレビをつけても、音がうるさく感じて消した。
おもちゃを出しても、赫ちゃんはすぐ俺の横に戻ってくる。
俺は、そんな赫ちゃんの頭をなでながら、
呼吸のことばかり考えてた。
息を吸う。
浅い。
もう一回。
うまく入らない。
胸の奥が、じわじわ苦しくなってくる。
でも、俺は動かない。
(だいじょうぶ)
心の中で、何度も言う。
(昨日より、ましだし)
昨日の夜より、少しだけ楽。
それだけで、耐えられる気がした。
赫ちゃんが、俺の顔をじっと見てくる。
「……翠にぃ、くるしい?」
心臓が、どくって鳴った。
「……だいじょうぶ」
ちょっと間が空いたけど、そう言った。
なつは、少しだけ首をかしげて、
俺の腕にぎゅっとしがみついた。
「いっしょ」
「うん」
赫ちゃんがそばにいるから、
俺は、もっと我慢しなきゃいけない。
泣いたら、怖がらせる。
倒れたら、困らせる。
だから、息が苦しくても、
ただ、耐える。
胸がきゅっと締まって、
喉の奥がひゅって鳴る。
でも、声は出さない。
出せない。
俺は、病院に行かなかった。
選ばれなかった。
……それで、いい。
俺は、留守番だから。
強くなくても、
役に立たなくても。
せめて、迷惑だけは、かけないように。
玄関の時計を見つめながら、
兄たちが帰ってくるまで。
俺は、赫ちゃんを抱えたまま、
静かに、静かに。
ひとりで、耐えてた。
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