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「そんな……言っていいことと悪いことがあります!」
「仕方ありません。妻が娘にそう教えているんです。家庭に僕の居場所はありませんから」
悲しそうに航大さんが俯いた。そんな、ひどいよ!!
「航大さん。私もあなたが幸せになれるようにお手伝いします!」
夫を倒すお手伝いをしてくれる航大さんのために、私もひとはだ脱ぎたい。勇者として仲間のピンチを助けるのは当然のこと!
「紀美さん、ありがとうございます。一人で家に帰っても居場所もなくて辛いですから、ここで時々愚痴を聞いて下さるとありがたいです。多分僕と妻はもう修復不可能です。彼女は…僕を疎んでいます」
「航大さんを疎むなんてひどい…」
彼の言葉を聞いて、自分のことのように悲しくなった。まるで私自身を見ているようだった。建真に相手されなくて、自尊心も傷つけられて、不要なゴミみたいな扱いを受けて…。既婚者だからって、虐げられる理由はない。どんな人でも、もっと愛される権利があると思う!!
「航大さんのお気持ちはよくわかります。私の夫がそうです。私も給料を取り上げられていて、ATMみたいにしか思われていません。浮気もされて目が覚めました。あんなクズとは一刻も早く別れて幸せになる努力をします!」
「紀美さん……」
「航大さんも幸せになる権利はあるんですっ! 諦めないでください!! 良かったらご家庭のこと、話していただけませんか?」
「ありがとうございます。なんか、そういう風に心配されると…嬉しいものですね」
航大さんの瞳が潤み、彼は眼鏡を外して滲んだ涙を乱暴に拭った。不当な扱いを受け続けるとそれが慣れてしまうけれど、本当は心にずっと傷が付いていて苦しいんだ。虐げられていい理由なんかない。それに、航大さんはすごくいい人だ。見ず知らずの私のために怒ってくれて、建真のことも協力してくれて…。
「そちらのご家庭も大変そうですね。スマートウォッチ以外にもいい商品が揃っていますよ。いかがでしょうか? 妻のモラハラ具合を撮影するのにぴったりです!」
そして金さんは、航大さんに他のアイテムを売りつけるために頑張っていた。
航大さんのご家庭の事情を軽く伺いたかったが、お子様のお迎えがあるようで航大さんは金さんのアイテム売り付け攻撃も無視して帰っていった。
私も今日は小さなチューハイを1杯いただいただけなので、そのまま帰宅することに。お金は航大さんが払ってくれたので、いつか出世払い(離婚確定・慰謝料もらった後)で返そう。
とりあえずスマートウォッチの様子を帰って確認してみようかな。建真に飲ませられるなら、あの怪しげな粉も飲ませてGPS仕込むぞ!
1日でも早く離婚してスッキリしたい!!
秋葉原から電車に揺られ最寄りの駅で降りた。自宅へ向かって歩いていた時だ。少し先にタクシーが停められ、綺麗な女性が降りてきた。この先に西日暮里ヒルズという高級マンションがあるから、そこの住人かな。
(あれ……この人どこかで見たことがある)
タクシーから降りた彼女に見覚えがあった。どこだったかは思い出せないが、知っている顔だった。目元に特徴的なほくろがある。
彼女はキョロキョロしていた。なにかを探しているのかな。それにしても見覚えがあるのはなんでだろう。彼女は赤みがかったウェーブの長髪だ。なんかついさっき見た……
(あっ!!!!)
思い出した!
さっき画面で見た航大さんの奥様だ!!!!
なんでこんな辺鄙なとこに?