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8.後悔
笠井side
10年前。結婚も考えていた彼女がいた
向日葵。
彼女は、ネットで知り合い趣味が合うことからよく家の近くのカフェで朝から夜まで語り合っていた。
無邪気な彼女の裏には孤独を持ち備えていて、こいつを一生笑顔で養ってあげたいと思っていた。
彼女は、クリスマスが嫌いだった。
失敗したんだ。もし、クリスマスが嫌いなことがわかってたら。
気づけていたなら。
18歳のクリスマスの日少し早いが俺はプロポーズをしようとおもい、高級レストランに彼女を誘った。
待ち合わせ時間は18:00なのに、何時になっても彼女が姿を現すことは無かった。
閉店時間になり店から追い出されると雨が降ってきた。
その雨の音と共にひとつの通知音がなった。
“お店。予約してくれたのに行けなくてごめんなさい。大好きだったよ。短い間だったけどありがとう。もう会うことはできない。私は旅に出ます。クリスマスの日私のお父さんとお母さんが旅立ったの。だから18歳のクリスマスに私も旅立つって決めてた。止めないで、真斗くんのことほんとに好きだった。でも、私はやるべき事をする。クリスマスが嫌いなこと隠しててごめんね。私以外の素敵な女の子と幸せになってください。
向日葵より”
このLINEを見て何も考えずクリスマスに誘ったことに後悔をした。
人生でこんなにも泣いたことは無い。
雨の雫と自分の涙が混じり合い落ちていく。
あの日の匂い、光景、体感を今も鮮明に忘れることは出来なかった。
だから。人と関わることを減らし、1人で生きることを決めた。
1人の方が楽だから。
あの日から1度も泣いていない。
泣きじゃくる東雲を見て俺は一人そんなことを考えていた。
東雲に情があるわけじゃない。と言ったら嘘になる。
久しぶりの感覚
でもこれはただの同情に過ぎないのでは無いかと思う。
だが、心のどこかで東雲の事を考えしまってる自分がいた。
『先生ー?せんせっ!』
目が覚めると目の前に東雲の顔が
『うわっ!!』
驚きのあまり大声がでた。
『そんな声出さなくてもいいじゃないですか。朝ですよ?』
俺あのまま寝ていたんだ。
『おはよ。』
『おはようございます。』
『朝ごはん食うか?』
『いえ、いつも食べてないんで。』
今日は休日。いつもならまだダラダラするが東雲の前では流石にきちんとしておこう。
『先生。私、そろそろ帰ります。ほんとにお世話になりました。』
『あ、送るわ。』
『大丈夫です!1人で帰れます。』
『いや、ここから出てるのバレるとまずいだろ。車の鍵渡しとくから先行ってて』
『分かりました。』
“ガチャ
静かになった部屋。
俺はコートを取り家を出た。
『東雲。ごめん。遅くなった』
俯いてる東雲。怒らせたかな。
『東雲ー?ごめんな?おーい。』
反応は無い。
『東雲さーん?東雲りんさーん??』
助手席に座る東雲を下から覗いてみると、寝ていることに気づいた。
昨日あんだけ泣いたんだもんな。疲れているのに、早く家から出しちゃったな。
車に暖房をつけて走り出した。
早く返してあげたいところだが気持ちよさそうに寝ているので起こすことも出来ず遠回りして家に送ることにした。
『…せんせ??』
『東雲起きたか。』
『あ、え!ごめんなさい!寝ちゃってた。』
『疲れてるなら俺ん家でもう少し休めばよかったのに。』
『ごめんなさい。』
小さくうずくまっている彼女を見るとなんだか可愛くて
『ほら家ついたぞ』
『ありがとうございます。学校行けたら行きます。』
『明日も休みなんだからしっかり休んで来たい時に来いよ。』
『はい。ではさようなら。』
『じゃあな。』
東雲が降りたあとの車はなんだか寂しかった。
タバコを取りだし久しぶりに少しドライブをすることにした