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【音楽番組のあと楽屋にて】
「お疲れーりょうちゃん!今日の俺さ喉の調子良かった!?ちゃんと歌えてた?」
もときが楽屋のソファに座って嬉しそうに話しかけてくる。
子供のように可愛い顔で褒められるのを待っているもとき。ほんと可愛い。
でも…
「うん…そうだね。もときはいつも完璧だよ」
「えっ何その引っかかる言い方!俺なんかしたっけ?」
ごめんね、年下の君にそんなこと言わせるなんて。
自分でも馬鹿げていると思う。
大人になりきれなくてごめん。
「何もしてないんじゃない?俺がおかしいだけ…」
「りょうちゃん…なんか俺に言いたいことあるんでしょ…」
「あ、やめて。その目で見るの」
僕を上目使いでじっと見るもときの大きくて可愛い目。
その目でじっと見つめられると胸の奥がギュッとなる。
だからもときの視線に気付いてもいつも振り返らないようにしている。
だいぶ前から僕のことだけ特別な目で見ているのを知らないふりをして過ごしていたから。
「あーりょうちゃん、やきもち?」
元貴が嬉しそうに笑いながら言う。
図星を刺されて僕は黙る。
「相変わらず自信家だね、元貴」
可愛くなれない。元貴の前で。
素直になれない。自分に自信がないから。
「りょうちゃん、こっちおいで」
いつものように元貴が僕を呼ぶ。
低音で俺の名前を呼ぶ彼の声が好き。
僕は怒っているのに抗えなくて元貴のそばに歩み寄る。
「りょうちゃん、俺の上に乗って」
言われるがままソファに座っている彼の太ももの上にまたがって座る。
「あ、りょうちゃんの下半身が当たる!」
「もときのバカ…」
そのまま元貴は僕をぎゅっと抱きしめる。
「りょーちゃん、何怒ってんの?謝るからいってごらん?」
元貴はいつだって優しい。
僕にだけは甘いの知ってるから僕も少し上手に出てしまう。
そうしないと愛されていることに気付けないから…
いつか飽きられるんじゃないかって怖いから…
「もとき、誰だっけ…あの歌手…」
「えっ誰?」
「今日トークの時交流があるって話してた…俺知らなかった…」
「あっ…あー!あの人ね。だいぶ昔に皆でご飯行ったぐらいで別に仲良くは…なぁに?りょうちゃん、それでやきもち焼いてるの?かわっいい!!」
もときはさらに強く僕を抱きしめる。
こうして体温を感じていられる時は彼を独り占めした気分になれるのに…
「可愛くはないでしょ、面倒くさくない?俺」
「りょうちゃんなら何だって可愛いよ…もっともっと俺を縛って独占して?愛されてるって安心するから」
抱きしめられながら目をつぶって耳元で囁くもときの声が嬉しくて切なくてたまらない気持ちになる。
横から見るもときの長いまつ毛が色っぽくて好き。
「もときはモテるから心配」
「それは俺の台詞!りょうちゃんのファンが増えて、他の芸能人にも連絡先いつの間にか聞かれてるし。俺はいつ誰に君を取られるか毎日不安よ?」
「嘘ばっか。」
あ。また可愛くないこと言った。
素直になれないな、もときの前だと…
「じゃあ言うけどさぁ~りょうちゃん、なんで黙って誰かと連絡先交換してんの?後で知ってショックだし俺」
「だって断れないじゃん」
「じゃあ、せめて俺にすぐ知らせて…」
もときが喋り終わる前に僕は自分の唇を彼の唇に重ねて黙らせる。
「もとき…やめよ。こんな不毛な話」
「りょうちゃん…もう一回して」
もときが潤んだ瞳を閉じる。
僕はもう一度彼の形のきれいな唇にそっとキスする。
もときの舌が入ってくる。
「あ…」
「りょうちゃん、俺もう無理…我慢できないから今日は俺の家来て?」
ディープキスをしながらもときが色欲を含んだ目で僕を見る。
本当はこの目が一番好き。
「やだ…行かない…」
「りょうちゃんの意地悪!!小悪魔!!」
小悪魔なんかじゃない…
愛されてるって確認したくてつまらない意地をはってしまう。
本当はずっと朝まで二人で居たいよ。
なんて悔しいから言いたくなくて。
もときの腕の中でキスを何度も繰り返した。