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「今日で、メンバーが揃います」
社長のその一言で、
レッスン室の空気が少しだけ張りつめた。
四人での仮活動は、悪くなかった。
でも、どこか“足りない”感覚があったのも事実。
――五人目。
その扉が、静かに開く。
「……こんにちは」
入ってきたのは、
長い黒髪に、透き通るような目。
一瞬で、空気が変わった。
正直、鳥肌が立った。
何この子。
まだ十四歳なのに、“完成されすぎてる”。
立ち姿、目線、呼吸の仕方。
アイドルっていうより、もう“ステージの住人”。
「一杏(いあん)です。よろしくお願いします」
その声。
……歌わなくても、“歌う人”だってわかる。
怖い。
でも、目が離せない。
視線が集まるの、慣れてる。
でも、この事務所の空気は、前と違う。
探るような目じゃない。
“受け入れようとする目”。
「じゃあ、さっそく歌ってもらおうか」
マイクを渡される。
心臓は、静かだった。
歌う前って、いつもこう。
頭が真っ白になって、身体だけが前に出る。
音が流れる。
声を出した瞬間、空気が震えた。
……やば。
うまいとか、可愛いとか、そういうレベルじゃない。
“引きずり込まれる”。
感情が、そのまま音になってる。
こんなの、ファンが放っておかない。
同時に、思った。
この子がセンターだな、って。
悔しいけど、納得しちゃうのがもっと悔しい。
歌い終わると、静寂。
……からの、
「決まりだね」
社長が笑った。
「今日から、君もこのグループの一員だ」
胸の奥が、少しだけ熱くなった。
でも――
喜びだけじゃない。
ここは、“復讐の舞台”でもある。
この子、可愛い顔して、目が冷たい。
優しい笑顔の奥に、何か燃えてる。
普通の新人じゃない。
たぶん、“捨てられた側”。
だからこそ、強い。
「グループ名は――」
ホワイトボードに、大きく書かれた文字。
LUMINA(ルミナ)
“光”を意味する名前。
……皮肉…。
いあんは、光に捨てられて、また光になる。
初めての五人でのダンス。
フォーメーションに入ると、自然と視線が集まる場所がある。
いあんが立つ、そこ。
……やっぱり。
視線が、勝手にそこに集まる。
センターの“器”。
怖いけど、この子がいないと、グループが完成しない。
汗が落ちる。
でも、楽しい。
ここは、ちゃんと“戦える場所”。
捨てられたままじゃ、終わらない。
ステージの上で、名前を呼ばせる。
__いあん、って。
その日、LUMINAは、本当の意味で動き出した。
光の中に、闇を抱えたまま。