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夜のバスで

3 - 第2話 言葉の意味

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20

2025年06月07日

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「え?おじさんもいえいっしょだよ?」

「ん?おじさんはおじさんの家があるんだよ?」

「いっしょ!」

「はい?」

俺の頭が混乱する。家が一緒なんてことない。まさか娘?いや違うだろう。俺も娘は右目の近くにほくろがある。でもこの女の子にはない。じゃあどういうことだ?

「おじさん知らないよ?君のこと。今日初めて会ったよ?」

「うん彩も!」

「じゃあ家は違うよね?本当のこと教えて?」

「ちがうよ!彩とおじさんのいえはいっしょ!!!」

「嘘はダメってお母さんから言われなかったの?お嬢ちゃん?」

「いっしょだもん!」

「だ〜か〜ら〜!本当の家を教えって言ってるだろ?」

「イッショダモン!うえええええええええん!」

女の子は大泣きし始めた。外に聞こえるのではないかと不安になる。

意味がわからない。家が一緒なんて。嘘に決まっている。子供はよく嘘を付く。子供の中で嘘が流行っているのだろう。これくらいの年では。

「お嬢ちゃん、そういえばお名前は?」

「彩の…ぐすん…おなまえ?」

女の子はぐすんと鼻をすすりながら俺に聞いた。

「そう。君の名前」

「彩は…谷杉(たにすぎ)彩!ママとパパとにいにがつけてくれたんだ!」

女の子は俺に向かって決め顔をして自慢する。俺の娘もこうだっただろうか。それすらも忘れてしまった。帰りにケーキでも買っていこうかな。娘のことを思い出しそう思う。

「お兄ちゃんいるの?」

「うん。いまあ小学2年生!ピカピカのしょうがくせいっていってた!」

「そうか。じゃあお兄ちゃんは家にいる?」

「ううん。だからさっきいったでしょ?ここにはいないって」

先程から「ここにはいない」という言葉が気になる。どんな意味なのだろうか。

「じゃあいつもはどこで暮らしてるの?」

「ん?いっかげつくらいまえからうえでくらしてる」

「上?2階ってこと?」

「ちがう!うえ!」

「上?」

俺は試しにバスの窓から顔を出し夜空を見上げる。冷たい風が俺の上半身に当たる。

空を見上げても何も無い。やはり嘘だろう。

「なにもないよ?…うわっ!」

俺が振り向くと俺の胸のあたりに女の子が飛び乗ってきた。

「ふふん!彩はてんさいだからこんなところにもとびのれるんだ!すごいでしょ!」

「ちょっと降りて。重いから」

「ええ?パパにやったらすごいねっていわれたのに…でもにいににやったらおこられた」

「ん…」

「ママにやってみたかったな…」

「やってみたかった…?」

「うん」

俺はこの子の「ここにはいない」という意味が分かった気がする。もしかすると、女の子の家族は……。

だとすると女の子をどこに帰せばいいかがわからなくなる。親御さんがいないのなら祖父母の家?いや親戚…?

「お嬢ちゃん。家ってどこ?家族が心配するよ?」

「いない。かぞくなんて。ぜんいんいなくなっちゃった。彩ひとり」

「家はあるでしょ?家」

「ない。彩はかわをわたっててんにのぼった」

「は?なにを?」

「おじちゃんもでしょ?」

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