サイド タエ
ダイキが、私の名前を読んでくれた……?
いつぶりだろう。どうしよう。凄く、心に沁みる。
「ごめんな。ずっとユイカのこと、傷つけてて。……やっぱ、俺ユイカのそういうところに世話になってたんだな」
「……ダイキ」
だけど、とダイキは真っ直ぐ私の瞳を覗き込む。
そして、もう一度「ごめん」と言った。
「……俺はまだ、キノのままでいい。忘れないと思うけど、忘れないために。……ルネに言ったことを戒めるために」
「そっか。ダイキが……ううん、“キノ”がそうしたいならそうするね。私も、まだ“タエ”でいるよ」
ダイキがこのモンダイジ団を捨てるより、ずっといい。私はそう自分に言い聞かせた。
…………本当は少し、寂しいけど。
「……今はまだ、抜け出せないけど、いつか“タエ”の名前を呼びたい。……だから!」
そう言ってダイキは私の肩を掴んだ。
「ふぇっ……?!」
いきなりのことに、私は顔が赤くなる。見なくても分かった。でも、それよりダイキの顔が真っ赤に染まっていた。
……待って、そういえば、私、さ、さっきまで凄く変なこと口走ってなかったっけ……?!
確か、ダイキのことが、好き、って……!
必死になりすぎた……!うぅ、恥ずかしいよぉ……っ!
「だから、それまで……!」
ダイキの次の言葉が、分かる。100%、私の希望で、妄想なんだけど……。
“それまで、ずっと俺の側にいて欲しい”
私が、その言葉をダイキの口から聞くことは、出来なかった。
ガンッッ!!って大きな音を立て、玄関のドアからマオが飛び込んできたから。
「オイッ!たいへn────!!」
「何いい雰囲気ぶち壊しにしてんの?!!」
私が振り返ったときには、既にアミさんが、マオに鋭い飛び蹴りを放った後だった。
…………ぇ?…………は、早すぎる………!
「今の動き、見えなかったっすよ、ね?」
「……まぁ、今のはマオが悪いよ」
な、なんかカワイソウ。声色ですっごい焦ってたってこと分かっているはずなのに……。
「マ、マオ。大丈夫?」
「ッ…………」
ややあってから、マオはうめきながら起き上がった。
「四人が、攫われた……っ!」
「「「「??!!」」」」
モンダイジ団は、モンダイジが集まるんじゃなくて問題が集まる。
リオさんが言っていたことは、どうやら本当と言わざるを得ないみたい……。