テラーノベル
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二人は自然と縁側に並んで座り、境内から下の町を見下ろした、山の頂上のこの場所に夕暮れ時の海風が、汗まみれの身体を優しく撫でていく、眼下には、戦争のようだった祭りの余韻で賑やかな喧騒と、屋台村の灯りと美味しそうな匂いがここまで漂って来る
「ふぅ~~・・・あ~・・・疲れた・・・もう暫く酒はいいですよ~」
政宗が深くため息をついた、ジンは思わず噴き出した
「・・・本当にここは自然が綺麗ですね・・・」
「ああ・・・そうですね」
ジンに微笑んで受け答えをした政宗の言葉には、この町の愛情と諦めが混ざっていた
政宗にとってこの町は生まれ育った場所であり、ある意味ずっとここで育った政宗をジンは羨ましく感じた
磯の香りを含んだ海風が、火照った頬を優しく撫でていく、目の前に広がる太平洋は、夕陽の光を受けて金色に波打っていた、都会では決して見ることのできない、圧倒的な静寂と心地良い波の音・・・
ジンは深く息を吸い込んだ、ふと桜の笑顔が脳裏に浮かぶ、偽装結婚のはずだった・・・半年間ビジネスライクな関係のはずだった、なのに、なぜこんなにも胸が苦しいのだろう、ふと政宗と桜の過去を想像するだけで、ジンの心は乱れた
「ここはずいぶん都会と違うでしょう?」
「ハハッ」
ジンは思わず笑った
「全然違いますね、みなさんパワーがあって何よりです」
政宗も同意する様に小さく笑った、しばらく沈黙が続いた・・・ジンの心臓が早鐘を打ち始める、聞くべきではないかも知れないけど、でも、聞かずにはいられなかった
「あの・・・彼女と・・・桜と・・・付き合っていたんですか?」
その言葉が出た瞬間ジンは言ってしまった事を後悔した、だがもう遅く、政宗は驚いた様子もなく、ただ静かに頷いた、その反応が、ジンの胸をギュッと締め付けた
「・・・小さい頃から一緒に育ちました、いわゆる幼馴染みですよ、親同士が将来結婚させようと決めていましてね」
政宗の声には懐かしさと痛みが混ざっていた・・・ジンは息を呑んだ
―親が決めたとはいえ・・・結婚を前提とした関係だったのか・・・―
政宗は遠い目で海を見つめたまま続けた
「高校でも当たり前に同じ学校に通って・・・将来は山田旅館の経営主になるのかなと・・・漠然と思っていました・・・でも・・・」
政宗の声が震えた、ジンは黙って次の言葉を待った
「でも?」
「高校三年になって・・・クラちゃんが大阪の大学を受験するって・・・僕にも一緒に大阪の大学を受けないかって・・・」
政宗の声がわずかに低くなった、ジンは拳を握りしめた、桜は政宗を誘ったのだ、一緒に来てほしいと・・・しばらく二人は海風にさらされるままに、お互い海を眺めていた
波の音だけが規則正しくここまで響いている、ジンの頭の中で様々な感情が渦巻いていた
コメント
2件
2人は付き合ってたのね… ジンさんの心中は複雑だよね💦 政宗から語られる2人の過去、気になります・・・💭💭
くぅぅ…😂遠い日の思ひでは明日までおあずけですね😆 ジンと政宗2人の心の葛藤、痛みがじんわりチクチク伝わります😌