テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「・・・大阪の大学・・・受験したんですか?」
政宗は寂しく笑って首を振った
「僕はこの土地から出たことがありません、これからも出るつもりはない・・・親の仕事を継ぎ、地元の人間関係の狭い世界で生きています・・・それはずっと変わりませんし・・・変えるつもりもない・・・」
その言葉に、ジンは複雑な感情を抱いた、安堵と疑問・・・彼は愛する女性を選ばずに、この土地で生きていく事を選んだのだ
政宗は海に向かって呟くように言った
「だから僕が出来る事は・・・クラちゃんが都会の生活に疲れて帰って来るのを、待つだけだったんです」
ジンの想いは複雑に交差した、政宗は今でも桜を待っているのだろうか・・・胸が締め付けられる、政宗がフッと笑った
「ずっと恐れていました、クラちゃんが都会から素敵な人を連れて来て「この人と結婚する」と言い出すのを、そして・・・」
じっと政宗がジンを見つめる、暫く二人は見つめ合った
ジンは自分が彼女にとって何者なのかわからなくなった、偽装結婚の相手、ビジネスパートナー、それ以上でも以下でもないはずだった、そしてその関係は半年経てば解消される・・・半年経てば桜が政宗を選ぶことだって出来るのだ・・・
政宗はゆっくりとジンから視線を外した、その表情は穏やかで、諦めに満ちていた
「今日・・・ジンさんと戦えてよかった、あなた方はお似合いのご夫婦ですよ。どうかお幸せに」
政宗の言葉は心からの祝福のように感じた、そして同時に静かな彼の桜への想いの別れの言葉でもあった
政宗はポンッとジンの肩を叩くと座敷の方へと歩き去っていった、その背中はどこか小さく見えた、ジンは一人残され、深いため息をついた
政宗は桜への未練を断ち切り、男らしくジンと桜を祝福した、そして自分は・・・自分は何だ?
偽装結婚のはずなのに、桜のことばかり考えている、彼女の笑顔、仕草、声・・・全てが愛おしい・・・愛していると言ってもいい、なのに・・・未だにこの偽りの、偽装婚にしがみつこうとしている
二人が心から愛し合い・・・将来を誓い合って・・・家族を増やすつもりで・・・純粋にここにやって来るべきだったのではないか?自分の失態の猿芝居に付き合わせている彼女には・・・
こんなにも彼女を大切に思っている人達が大勢いる・・・
自分とは大違いだ・・・
胸の中のもやもやを吐き出すようにジンは空を見上げた、つい先ほど上った一番星がまるで自分を見下ろしているようだった
「本当に好きなら着いて行けばよかったんだ、なりふり構わず・・・」
ジンは誰に言い聞かすでもなく、ポツリと呟いた、潮騒だけが、ジンの想いを知る証人として永遠に響き続けていた
そしてこのままいけば自分も政宗と同じ、愛する人を手放すような愚かなことになりかねないと少し不安にかられた
コメント
2件
政宗が心から幸せだと思える日がきますよーに!!🙏
うんうん😔深いなぁ 政宗が地元を捨てられないように、桜ちゃんも都会での夢をあきらめられないもんね😌 ジンさんあなたは心のままに!!! 政宗グッドラック👍