「あー!まったく!何度、こんな、秘境のような田舎に通わなければならぬのじゃあー!」
張飛が、叫ぶ。
「そ、そんな、こと、知りませんよ!そ、そ、そちらが、勝手に押し掛けて来ていて、な、なんですかっ!」
「うるさいわっ!!そうじゃ、あの、生意気な、女と子供めっ!いっそ、火を放ち、あぶり出してやろうかっ!!」
なっ?!こ、これかっ!童子の言っていた、すぐ、放火するという、話は!!
均は、恐ろしさに震えていたが、火など放たれては、住む家が、無くなってしまう。それに、村にも、迷惑をかける。火が、燃え広がってしまったら……。
いや、まて、これは、これで……役に立つかも。
「ちょっと!あんた!そんなに、燃やしたかったら、ついてきな!!」
均の変貌に、張飛は、一瞬、たじろいだ。
「おい、張飛、その辺にしないか」
やっと、劉備が止めに入る。
「……私、思うんですけど、あなた様、劉備様でしょ?なぜ、いつも、後ろに、隠れているのですか?」
「隠れている……」
「でしょ?なぜ、すぐ止めないんですか?まあ、今回は、止めませんよ、燃やしてください。正し、こちらへ、どうぞ」
均は、すたすた歩み出す。
早く、ついて来てください!終わってしまいます!
と、先で、じれったそうに、均が叫んだ。
訳の分からない三人は、つい、頷いていた。
そして──。
「皆さん、ご苦労様です。助っ人連れてきましたよ」
と、均が言う先では、農夫達が、集まって、地面に、火をつけていた。
「あー、そりゃー、すまないねぇ」
劉備達は、呆然と立ち尽くしている。
「さあ、あなた、火を放ちたいんでしょ!」
均は、農夫達と合流し、張飛へ声をかけた。
「火付けの上手いの、連れてきましたから、存分に使ってください」
「いやー、わるいねー、均さん」
「いやいや、とんでもない。こちらこそ、いつも、灰を分けてもらって……」
すまんが、と、劉備が均へ、声をかけた。これは、何をしているのだと。
「焼き畑ですよ。こうして、雑草を焼いて、土地を開墾するのです。この辺りは、そう、秘境ですからね。こうして、先ず、平地を作っていかなければ開墾もなにも」
兄じゃ!こんなこと、できるか!
なんのためにっ!
と、張飛も関羽も、早速、文句を言った。
「ちょっと、あなた達、上に立ちたいのでしょ?ならば、民のことを、考えたらどうですか?何度も、訪ねてくる暇があるならば、民に、手を貸したらどうです!!」
均の、叫びに、張飛が、怒る。
しかし、劉備が、すぐに止めた。
「なるほど、このように、民は、土地を耕しているのか……張飛、静かにしろ!作業の邪魔だ!」
「はい、邪魔です。何でもかんでも、どこにでも、火を放なたれては、開墾どころか、村ごと、焼けていまいます。どうか、お引き取りを」
均に言われ、劉備は、返す言葉がなかった。