【体験者】K県在住Yさん
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【かげおくり】って、皆さんご存知でしょうか?
晴れた日に自分の影を10秒間見つめた後、空を見上げるとその影が空に映し出されるという、例のアレです。
要するに残像が瞳に映し出されているだけに過ぎないのですが、それにまつわる不思議な体験談をお話しします──。
遡ること20数年前。まだ私が小学3年生だった頃、【かげおくり】はちょっとしたブームになっていました。何かにつけては【かげおくり】をして、その不思議な現象を皆んなで楽しんでいたのです。
その日もやはり、Mちゃんと遊んでいた私は、どちらからともなく【かげおくり】を始めました。
「「い~ち、に~、さ~ん──」」
横並びになって手を繋いだ状態でカウントをし始めた私達は、足元にある自分達の影を見つめました。
「「──きゅ~う、じゅー!!」」
勢いよく空を見上げた私は、そこに浮かび上がった自分達の姿を見て、その嬉しさから声を上げました。
「……ねぇ! 私達、まるで空を飛んでるみたいだねっ!」
「…………」
「……Mちゃん、どうしたの?」
黙ったまま空を見つめ続けているMちゃんを不思議に思い、私はMちゃんに向けて声を掛けました。すると、ゆっくりとこちらを振り返ったMちゃん。
「……Yちゃんじゃない」
「え……?」
「Yちゃんじゃなくて、大きなおじさんと手繋いでた」
「……? ふ~ん。そうなんだ」
そう答えながらも、意味の分からなかった私は小さく首を捻りました。
「……私、今日ピアノのレッスンがあるからもう帰るね」
「うん。またね、Yちゃん」
「また明日遊ぼうねっ。ばいば~い」
そう告げてその日はMちゃんと別れたのですが、その翌日以降、私は二度とMちゃんと顔を合わせることはありませんでした。
その日の夜に行方不明者として捜索願いが出されたMちゃんは、翌日になっても戻ってくることはなかったのです。
何の手がかりがないまま20数年の月日が経った今でも、私は時折、あの時Mちゃんが言っていた言葉を思い出します。
『大きなおじさんと手繋いでた』
あの時Mちゃんが見たものとは、一体なんだったのでしょうか。私には、どうしても無関係には思えないのです。
─完─