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【体験者】K県在住Yさん





◆◆◆




 【かげおくり】って、皆さんご存知でしょうか?

 晴れた日に自分の影を10秒間見つめた後、空を見上げるとその影が空に映し出されるという、例のアレです。


 要するに残像が瞳に映し出されているだけに過ぎないのですが、それにまつわる不思議な体験談をお話しします──。




 遡ること20数年前。まだ私が小学3年生だった頃、【かげおくり】はちょっとしたブームになっていました。何かにつけては【かげおくり】をして、その不思議な現象を皆んなで楽しんでいたのです。


 その日もやはり、Mちゃんと遊んでいた私は、どちらからともなく【かげおくり】を始めました。



「「い~ち、に~、さ~ん──」」



 横並びになって手を繋いだ状態でカウントをし始めた私達は、足元にある自分達の影を見つめました。



「「──きゅ~う、じゅー!!」」



 勢いよく空を見上げた私は、そこに浮かび上がった自分達の姿を見て、その嬉しさから声を上げました。



「……ねぇ! 私達、まるで空を飛んでるみたいだねっ!」


「…………」


「……Mちゃん、どうしたの?」



 黙ったまま空を見つめ続けているMちゃんを不思議に思い、私はMちゃんに向けて声を掛けました。すると、ゆっくりとこちらを振り返ったMちゃん。



「……Yちゃんじゃない」


「え……?」


「Yちゃんじゃなくて、大きなおじさんと手繋いでた」


「……? ふ~ん。そうなんだ」



 そう答えながらも、意味の分からなかった私は小さく首を捻りました。



「……私、今日ピアノのレッスンがあるからもう帰るね」


「うん。またね、Yちゃん」


「また明日遊ぼうねっ。ばいば~い」



 そう告げてその日はMちゃんと別れたのですが、その翌日以降、私は二度とMちゃんと顔を合わせることはありませんでした。

 その日の夜に行方不明者として捜索願いが出されたMちゃんは、翌日になっても戻ってくることはなかったのです。


 何の手がかりがないまま20数年の月日が経った今でも、私は時折、あの時Mちゃんが言っていた言葉を思い出します。



『大きなおじさんと手繋いでた』



 あの時Mちゃんが見たものとは、一体なんだったのでしょうか。私には、どうしても無関係には思えないのです。






─完─

短な恐怖〜短編集〜

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