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「……わかったよ。午後、絶対だからな」
渋々、遥が私の袖を離した。成瀬先輩が「じゃあ、遥くんは私たちが預かっとくね」と、不機嫌な遥を小谷先生の方へ促していく。小谷先生も「……やれやれ」といった様子で、遥の背中を軽く叩いて人混みの向こうへ歩き出した。
急に静かになった空間で、凌先輩と二人きりになった。
「……びっくりした。成瀬、あんなこと提案するなんて」
凌先輩は少し笑いながら、でもその瞳には隠しきれない熱が灯っていた。
「ふふ、助かったよ。成瀬のおかげで、やっと邪魔者がいなくなった」
凌先輩の声のトーンが、一瞬で変わった。
人混みを避けるようにして、彼は私をクラゲが漂う薄暗いエリアへと導いていく。ゆらゆらと青白い光に照らされる空間は、まるで世界の果てに二人きりで取り残されたような錯覚に陥る。
「紗南ちゃん。……さっきの続き、いいかな」
壁一面が水槽になった、静かな場所。凌先輩は私の逃げ場を塞ぐように、そっと壁に手を突いた。
「俺のことだけ、見てて。……今日は、遥の兄貴としてここに来たんじゃないんだ」
至近距離で見つめてくる、凌先輩の瞳。いつもは余裕のある微笑みを浮かべているのに、今の彼は、少しだけ余裕がないように見えた。
「俺は、本気だよ。……紗南ちゃんが思ってる以上にね」