テラーノベル
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ギルドの奥には、職業を判定するための小さな部屋があった。壁一面に並ぶ古い書物と、水晶のように淡く光る台座。
「こちらへどうぞ」
受付を離れた上田麗奈は、そう言って瑠璃子を案内する。
その声は落ち着いているのに、どこか“仲間を待っていた”ような温度があった。
台座の上に、薄い金属でできたカードが浮かび上がる。
「そのカードが、あなたのランクカードです」
瑠璃子が恐る恐る手を伸ばすと、カードはすっと手の中に収まった。
そこに刻まれていた文字を見た瞬間――
「……え?」
思わず声が漏れる。
【職業:勇者】
「ゆ、勇者?!」
カードを二度見する瑠璃子に、上田は一瞬目を見開き、すぐに小さく微笑んだ。
「……やっぱり」
「やっぱりって、え!? そんな、私が!?」
「この世界では、“声で人を導く者”が勇者になることが多いんです」
冗談みたいな話なのに、胸の奥が不思議と熱くなる。
怖いのに、逃げたいのに――なぜか、前に進まなきゃいけない気がした。
「……私、ちゃんとできるかな」
「一人じゃありません」
上田はそう言って、隣に立つ。
「私も一緒に旅に出ます。仲間を……取り戻すために」
その言葉に、瑠璃子は静かに頷いた。
⸻
二人は街へ出た。
石畳の道を歩いていると、どこからか澄んだ歌声が聞こえてくる。
「……この声」
上田が立ち止まる。
「間違いない。行きましょう」
広場へ駆けつけると、簡易的な舞台の上で、一人の歌姫が歌っていた。
透き通るような声。
観客の心を一瞬で掴む、圧倒的な存在感。
歌が終わると、拍手が広場いっぱいに広がり、人々は満足そうに去っていく。
その姿を見た瞬間、瑠璃子の胸が強くざわついた。
「あの……」
思わず声をかける。
「花凛ちゃん、だよね?」
歌姫は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、首を傾げた。
「……誰ですか?それは」
瑠璃子の言葉が、空中で止まる。
「私は、カリンです」
どこか機械的で、感情の抜け落ちた声。
上田が一歩前に出る。
「あなた、自分がなぜここにいるのか……覚えていませんか?」
カリンは困ったように微笑んだ。
「気づいたら、この街にいて……歌うと、みんなが喜ぶから。
それだけです」
その瞬間、瑠璃子ははっきりと言った。
「あなたは、私たちの仲間の声優……磯部花凛ちゃんだよ!」
その名前を聞いた瞬間――
カリンの頭が、ずきりと揺れる。
「……っ……!」
胸を押さえ、膝をつくカリン。
断片的な記憶が、波のように押し寄せる。
ステージ。
マイク。
仲間の笑顔。
「……あ……たし……」
ゆっくりと顔を上げ、涙を滲ませながら呟く。
「……花凛……」
上田と瑠璃子は、顔を見合わせた。
また一人、仲間を取り戻した。
けれど――これは、ほんの始まりに過ぎない。
勇者・野口瑠璃子の旅は、ここから本格的に動き出す。
キャラクター紹介
■ 野口瑠璃子
職業(現実世界): 声優
担当キャラクター: Leo/need 星乃一歌
異世界での職業: 勇者
仕事から帰宅後、眠りに落ちたはずが、目を覚ますと異世界の野原に立っていた。
ギルドで判定された職業は、まさかの「勇者」。
本人は戸惑いながらも、“声で人を導く力”を持つ存在として、仲間を取り戻す旅に出ることになる。
なぜか異世界での役割が、最初から決められていたような節がある。
⸻
■ 上田麗奈
職業(現実世界): 声優
担当キャラクター: 望月穂波
異世界での職業: ギルド受付嬢/回復系スキル
冒険者ギルドで受付嬢として働いており、回復や補助系のスキルを扱う。
冷静で落ち着いた立ち振る舞いは、パーティの精神的支柱。
なぜ自分がこの世界で“ギルド側”の立場にいるのか、その理由はまだ明らかになっていない。
瑠璃子の旅に同行し、仲間探しを支える存在。
⸻
■ 磯部花凛
職業(現実世界): 声優
異世界での職業: 歌姫/魔法使い
街の広場で歌を披露していた歌姫「カリン」。
美しい歌声で人々を魅了するが、当初は自分が声優であること、仲間の存在を覚えていなかった。
瑠璃子たちの呼びかけにより、少しずつ記憶を取り戻していく。
歌と魔法を融合させたスキルを持つ、パーティの重要な戦力。
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