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8 - 第8話 旦那様は時々頼まれ講師。4

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2024年01月12日

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「嬉しいなら何よりですよ」


微笑まれるので、気持ちを切り替えた。

何よりデザートはまだまだ残っているのだ。


刻んだ朝摘み苺をふんだんに乗せたブランマンジェは、舌に残るねっちり感が堪らない。

それだけを食べるなら甘いだけの方が良いが、合わせて食べるのなら甘酸っぱい苺もアクセントになる。

特に飲み物が甘いので酸味は歓迎だ。


「……作る時間より、食べる時間の方が多いのはセレブ向けだから?」


「どうでしょうねぇ。この講座の場合は交友を深めるという要素も多分にあるので、特に顕著だとは思いますが」


なるほど、と思うそばで、三人が揃って顔を上げた。


「スケジュールの調整完了!」


「この日程で大丈夫ですか?」


「御無理なら再調整をしますので、遠慮なくおっしゃってくださいね」


指し示されたのは、ちょうど一ヶ月後。

私に問題はない。

夫の様子を窺う。

外出に関してはそもそも私に決定権はないのだ。


「ええ。それで大丈夫です。当日私は不参加ですので、女性だけで盛り上がってくださいね」


夫は大きく頷いた。

よほど三人を信用しているのだろう。

女性に向けるにしては、表情が何時もより穏やかだった。


「まぁ、嬉しい!」


優貴が満面の笑みで手を叩く。

純粋に私との交友を喜んでくれるのが、面映ゆかった。


「いろいろと持ち込みますね!」


「私も気合いを入れて取り寄せをしないと!」


「和菓子を持ち込んでもよろしいですか? 家の者に作らせますので」


「勿論! 私も頑張って準備しますね! 何かリクエストがあったら遠慮なくメールをください」


夫がいないティーパーティーは初めてだ。

失礼のないようにマナーなどの確認もしておくべきだろう。

自分を友人にと望んでくれ、夫も許可している人たちに失望されたくはない。


夫が静かに腰を上げる。

どうやら講座は終了の時間を迎えたらしい。


「……当日までに、電話とかメールとかしてもいい?」


「SNS系はやっていませんので、逆にその二つなら何時でも大丈夫ですよ」


「お買い物とかもお誘いしたいわぁ……」


「私も皆さんと御一緒したいですねぇ……」


「外へ出るとなると警護の問題で、私たちの方も迷惑をかけかねないので、念入りに計画を立てましょうね」


私自身単独外出は夫の許可的にかなり難しいが、三人も似た状況のようだ。

名家のスケジュールは厳しく管理されているとも聞いている。

専用の執事などがいるのかもしれない。

もしかしたら女性執事もいるのだろうか?

まだ出会う機会には恵まれていないので、もし女性執事がついているなら、是非紹介してほしいと思う。


夫による締めの挨拶が終わり、優美な別れの挨拶をすませた人たちから帰宅してゆく。

三人も名残惜しそうに迎えの車へ乗っていた。


「さて、麻莉彩。少しだけ後片付けがありますので、ここで待っていてください。そうそう、イヤリングはちゃんとつけておいてくださいね」


「……これからどこかへ行くの?」


「ええ。楽しみにしていてくださいね?」


どこへ、とは教えてくれず、キスを額へ落とした夫が外から施錠をして、部屋を出て行ってしまった。


「どこへ行くのかしらん? 食事には早いし……季節の華展とか? 招待状が来てたしなぁ。乙女ゲームショーの事前公開のチケットも取れそうとか言ってたし? まぁ、どこへ行こうとがっつり外出は嬉しいかも。あまりないからねー」


一人でによによと怪しい笑顔で独り言を呟いていれば、扉が激しい音を立てて開く。

夫はそんな迂闊な真似はしない。

きちんとしたノックと声がけをしてくれる。

家でいるときですらそうなのだ。

外出先で前触れなしに扉を開け放つなんて、突発的な災害でも起こらない限りはあり得なかった。


「ちょっと! あんた! お教室に出入り禁止とか、ふざけないでよ!」


「また、イロメ使ったんでしょう? たかひとせんせが、かわいそすぎるよぅ」


「そのサファイア! あんたには似合わないわ! 早く私に寄越しなさい!」


教室出入り禁止は、恐らく三人を除く生徒の総意だったと思います。

そもそも出入り禁止前提で許可されていたのでしょうね。

文句を言う相手も違うでしょう?

物申すなら夫本人か、夫に講師を依頼している人物にするべきです。


イロメとか頑張って使ってみた日には、三日は声も出せない状況にされます。

そんな怖い事態になるとわかっているんです。

頼まれない限りしません。

頼まれたらしますよ?

私、夫の頼みには滅法弱いので。


似合っていないかもしれないサファイアですが、貴女に差し上げる気持ちは微塵もありませんよー。

高校生のときから全く変わっていませんねぇ。

似合わないから寄越せとか、酷い暴論です。

今までそれが許されてきたのだとしたら、環境が問題なのかもしれません。

一番悪いのは本人以外の何者でもないでしょうけれど。


三人に向って心の中で言ったのだが、表情に出ていたのかもしれない。

愛魅のピンクのハートメインでデコられた爪先が伸ばされて、ネックレスに触れようとした瞬間。


視界が純白に染まった。

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