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……走る車内で、どんな話をしたらいいのかもわからなくて、外の景色に目をやると、傍らでハンドルを握る彼の横顔がウィンドウ越しに映り込んだ。
その端正な顔立ちをじっと見ていたら、こんな風に自分がデートをしていることがなんだか不思議にも感じられた。
カーステレオからは、落ち着いた静かでクラシカルな曲が流れる中──
「永瀬さん?」
不意に呼びかけられて、
「えっ…?」
と、ハンドルを握る彼へ、慌てて目を移した。
「……私に合わせるだけではなく、あなたも行きたいところなどがあれば、希望を言ってもらえればと」
「あっ…はい…」
きっと固くなっているように見えたのを、気遣ってくれているんだろうと思うと、わかりやすく彼に気持ちが知れてしまっていることに、ますます身が固く縮込まってしまいそうになる私に、
「言ってくれないと、こちらもわからないですからね」
そう言い添えて、ふっと浮かべられた微笑に、思わず目が吸い寄せられそうになる。
柔らかな笑い顔に、身体の強張りはじわりと解けたけれど、「…はい…」としか返事はできなくて、私は赤らんだ顔を下へうつむけた……。