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22 ◇傷付けられた痛みは小さくなっていた
やはり美代志くんは忙しいみたいで,翌29日の夕飯を届けた時に
彼はまだ帰宅していなかった。
そして、続けて30日の日……この日は帰宅していた。
「こんばんは~。今日は早めに帰れたのね」
「ええ。仕事が忙しいのはいいことなんですが、周囲が休暇に入っている時は
精神的に堪えますね」
「ふふっ、分かる。そうよね」
「あと2日出勤すれば、3日間休めますから、頑張ります」
「物流じゃなかったら、30日31日と多めに休めたのにね。
でも、職業柄仕方ないわね。
美代志くんたちのお陰でみんな助かってると思うわ」
「それだと、頑張り甲斐がありますね。
ところで、一昨日息子さんたちを紹介してもらいましたけど……僕の立ち位置は
どんな風になってるんでしょうか?」
「あぁ、その件ね。説明もなく、急に息子たちを連れてきてびっくりさせて
しまっちゃったわよね。ごめんなさい」
「いえ、それはぜんぜん構わないのですが、その辺のところが気になっていて……」
「美代志くん、ナ~イス」
「……?」
いけない。
いつもの悪い癖が出てしまった。
説明をすっ飛ばし、自分だけで分かった気になり、相手のことを配慮できていない会話だった。
「うん……と、分かりにくい言い方でごめんなさい。
まず、私の説明不足を訊いてくれてよかった、ってことね」
「……?」
「息子たちには、美代志くんのことを遠縁の人間っていうふうに説明してあるの。
私の祖父の妹の旦那の弟の奥さんの弟の息子っていう風に……」
「すごい! それって遠縁というか、ぶっちゃけ赤の他人に近いですよね」
「あははっ、いいじゃない。
だって私たちと美代志くんに血は繋がってないし、結果的に嘘はついて
ないようなものでしょ」
「由香さん、上手いこと言いますね」
「ふふふっ。
だけど……美代志くん、私はあなたのこと親戚だと思ってるから。
それでね、息子たちとも親しくなってもらえたらいいなって思ってるの」
「そう言ってもらえると、僕もうれしいです。
弟のように接していい親戚が2人もできて」
「さてと、明日も仕事でしょ? 長話してちゃ悪いから、これで帰るわ」
「いつもすません。夕飯、ありがとうございます」
「いえいえ。じゃあね、また」
今日の美代志くんの感触を見ていると、息子たちと上手くいきそうで
ほっとした。
息子たちの彼に対する感触もいいものだったから。
自宅までの道のり、走らせる車の中――――
私は興味を失くした夫の存在が、更に小さくなっていることを改めて実感した。
そしてそれとともに、傷ついた自分の傷が、いつの間にか瘡蓋になるくらい
浅いものになっていることにも……。