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入寮してから数日が経った。変わらず寮の他の生徒はこちらに対して不干渉を貫いている。はじめはオレたちが異物であることを感じ取ってのことかと思ったが、単純に今のところ会った同じ寮の生徒は他人に興味がない性格らしい。
リツキさんは比較的人懐っこい性格のようで度々話しかけているようだったけど、あまり関心を抱かれてはいなかった。端的にいえばスルーされている。話しかけていた相手の一人は新入生だったので少し心配になったが、まあ、何とかなるだろう。両方とも。
「ルカくん、明日からいよいよ授業なんだよね。楽しみ」
入学式とオリエンテーションを終えて上機嫌になったリツキさんが顔を覗き込んできた。彼女は他人に対しての距離感が近い気がする。直接触れることこそないけど、それ以外の部分で。女子にそんな対応をされたことがないから、少し気まずい。
なお女子の例外は、当然のことながら先生だ。先生も距離感が近いが、見た目はともかく中身の年が離れすぎていて、オレの中では女子のカテゴリには入らない。
「そうだね。僕も楽しみだよ」
もちろん、これは本音だ。特に隠す必要もないけれど。今まで先生に師事してきたこともあって、彼女以外から魔法を学ぶことがなかった。あまりにひょんとしたきっかけではあるが、この機会を生かしてもっと魔法を学びたいと思っている。
……何か、飢えるような強い思いが、あるいは願いが魔法使いに必要なのだとしたら、オレにはその必要なものが欠けている。ただ、幼い頃から周りに当たり前にあった魔法に惹かれて、祖母に、あるいは先生に憧れているだけの子供だ。
「新入生歓迎パーティはこちらでーす」
大きな声で看板を持って生徒を呼び寄せている女子生徒がいる。新入生歓迎パーティ、そういえば端末に連絡が来ていた。ある程度着飾らないといけないようだから参加する気はなかったが、リツキさんもそれでよかったのだろうか。
「あーっと、リツキさん」
「えっと……ルカくん?」
顔を見合わせる時間がある。表情からは特に行きたさそうには見えないけれど、心を読めるわけじゃない。さりげなく聞いてみよう。別にどちらでも構わないけど、そういえば、みたいにさりげなく。
「リツキさんは歓迎パーティに興味あったりするのか?」
目を丸くしている。そのあとその視線は泳いで……次の言葉が遅い。明らかに何か迷っている。
「え、っと。ううん。大丈夫。疲れたよね? 今日は早く休んだ方がいいんじゃないかなって」
分かりやすいほど、遠慮している。よく考えてみれば、数日見かけたあの人懐っこさから興味を示さないわけがないことは明らかだった。口に出して確認してみてよかった。
このまま黙って帰ってしまえば彼女が少しでも行きたいと思っていただろうことには気付かなかったと申し訳ない気持ちになる。人懐こさに影響されてか、どうも彼女に甘くなってしまっているなと思いつつ、端末をもう一度確認した。
一応服は借りられるようだ。それなら何も問題はないだろう。
「いや、リツキさん。いい機会だから行こう。僕たちはこの学園に何もつながりがないだろ? それを作りに行っても損はしない」
彼女は何度か目をぱちぱちとさせて、そのあと微笑んだ。物静かだが、無邪気な微笑み。
「すみません。ドレスとスーツを借りたくて」
大声で生徒に呼び掛けていた女子生徒に話しかける。高い位置で一つに髪を結んだ活発そうな少女で、きっとこういうイベントを好むのだろうと勝手に思ってしまうような人だ。
「はいはーい! あっちに行ってくださーい。担当の……誰だっけ。いっか。とにかく行ったら案内してくれるはずなので!」
看板で指した先の建物へ目を向ける。恐らく校舎の一つだが、着替えの場所として部屋をいくつか借しているのだろう。学園は広大で、まだ全体を早くしきれていない。
「えへへ、行こう? ……ルカくん、一緒に来てくれてありがとう!」
ふらりと先に足を踏み出したリツキさんがくるりと振り返って言う。彼女のまっすぐな言葉は心地がいい。
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