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佐和さんからLINEがあって、現状をわかりやすく説明してくれた。
「術式を解くことはできないんですが、狭山さんと九さんの案で、術式作動後に莫大な霊力で術式を焼き切れば和泉さんを蘇生可能になる、ということで、今、あらゆるところから霊力を集めています」
朝霧家前当主の朝霧香駿、朝霧家現当主とその妻(つまり緑さんの義父母)、緑さん、南家当主、その他俺も知らない各家や寺社から霊力を調達しているそうだ。
「神仏からも霊力を借りられないか各地で頼んでいます。千歳さんにも、騙す形になりますが霊力を借ります」
「え、どうやってです?」
千歳にだけはバレちゃいけないんだが?
「峰伊吹さんが協力してくれます、霊力を剥がしやすい適当な術式を作って、それに千歳さんにありったけ霊力を込めてくれと頼みます。で、峰家の方でそこから霊力を回収します」
「なるほど」
そうか、それっぽい口実があればいいわけか。
「ただ、全力を尽くしていますが、焼き切れるだけの霊力が集まるかわかりません。今の見積もりだと神仏の力も借りないと到底足りませんが、神仏にそこまでの力を借りられた例は少ないんです」
「そうですか」
そもそも、術式が動いて俺の心臓止まったあとに術式を焼き切らなきゃいけないから、俺の心臓止まるのは確定なわけだしな……術式を焼き切ったところで、蘇生できる保証あるのか?
ちょっと調べたら、心肺停止の蘇生率は2%と出てきた。1分以内に救命措置を始めれば95%の蘇生率とのことだが、そんなリアルタイムアタックみたいなことできるのか?
とりあえず、俺は佐和さんに返事した。
「私は千歳にバレないように普通に暮らす努力でいっぱいいっぱいなので、他のことはお任せします。どうかよろしくお願いします」
「わかりました。霊力が集まったら和泉さんを病院で管理して術式作動を待てば蘇生率が高まるとのことなので、千歳さんに入院の言い訳を考えておいてください」
なるほど、それなら心停止後即救命措置ができる。8月半ばくらいまでに仮病使って、心臓調べてもらったら異常があるから検査入院するよ、とか千歳に言えばいけるかな?
「なんとかうまくやります。ありがとうございます」
その日の夕飯、千歳は、なすの焼きびたしを食べながら困った顔をしていた。
『なあ、峰伊吹さんにまた仕事頼まれたんだけど、すごく疲れそうだからあんまりやりたくなくて……』
あ、千歳から霊力をもらうためのダミー仕事か。
「どんなのなの?」
ひとまず、千歳にどう伝わっているか確認してみる。
『割と簡単な守護の術式なんだけど、それにもうとにかくありったけ念を込めてくれって言われてるんだ』
「大変なの?」
『すごく大変だし、すごく疲れて、前爆発しかけたあとに爆睡しちゃったみたいになると思うし、すごく食うかもしれない。ワシ家のこともあるしさあ、あんまり寝込みたくない』
「そっか……」
……千歳を疲れさせちゃうのは悪いが、俺が死なないで済む可能性は、なるべく増やしたい。ご飯作るとか洗濯物干すとか掃除するとか、そういうのなら代わりにいくらでもやるから、千歳にはフルパワーで霊力を出してほしい。
「でも、守護ってことは人助けなんだろ? わざわざ千歳に頼んできてるってことは、多分千歳くらい強い霊にしかできないんだよ。俺もさ、千歳ほどレベル高くはできないけど、ご飯作るとか他の家事とかやれるからさ、仕事頑張って、ゆっくり寝て、いっぱい食べてほしい」
『でも、お前今仕事大変だし、そんなに頑張らせたくない……』
千歳の眉尻がすっかり下がってしまっているので、俺はなんとか千歳を安心させようとした。
「今のところノルマは順調に果たしてるし、要領も掴めてきたから、大丈夫。千歳にしかできない仕事なんだから、それを頑張ってほしい」
『そっか……』
千歳の顔が少し和らいだ。
『じゃ、頑張って仕事して、がっぽり金もらうか』
「けっこうお金出るんだ?」
『追加で五百万』
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
「マジ!?」
俺のためなのに、峰伊吹さんそんなにお金払ってくれるの!? いや、千歳に怪しまれないためとか、千歳を大人しくさせてる筆頭人物が俺だからそれを生かすためとかも入ったお金なんだろうけど……。
「そんなに気前よく払ってくれる人なら、なおさらがんばんなよ」
『うん、後でやるって返事しとく』
千歳は頷き、俺はとりあえずホッとした。
……でも、今集められることが確定の霊力だけじゃ全然足りないし、霊力集まって焼き切れたところで絶対蘇生するとは限らないし、俺はやっぱり、覚悟を決めておかなきゃならないんだよなあ……。
コメント
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第480話、読み終えました。心臓が止まる前提の計画に、蘇生率2%の数字が刺さりました…。千歳に「人助けだから」と優しく背中を押す場面が、真実を知っているこちらには切なくて。でも、峰伊吹さんが五百万出すってくだりはちょっと笑っちゃいました。日常の穏やかな空気の裏で、大きな決断が進んでいる感じが、じわじわ来ますね。