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ふと時計を見ると、既に六時を過ぎてしまっていた。
キリのいいところまで書き終えてノートを閉じた私の横で、七宮先生は眼鏡を軽く押し上げた。
「お疲れ様です。今日はここまでにして帰ろうと思います」
「おう、気をつけて帰れよ」
「教えて頂きありがとうございました。ここ最近で一番頭使ったかもしれませんε-(´∀`; )」
「三日坊主にならなければ良いがな」
「気をつけます。でも…理解が深まって問題の正解数が増えるにつれて、勉強が楽しくなってる気がします!」
「嬉しいこと言ってくれるな。教えた甲斐がある」
「やる気だけは人一倍あるんで!明日から毎日学校に残って勉強しちゃおうかなって感じですっ」
「それなら、時間が空いてたらここに教えに来ることにするよ。一緒に頑張ろうな」
「はい!……あ、でも金曜日は毎週ちょっと用事があるので来て頂かなくて大丈夫です」
というのも、担任に一方的に熱願されていた恋愛助言授業(?)が色々あって断り切れず、最終的に金曜日の放課後だけ時間を設けることになってしまったのだ。…引かれるに決まってるから七宮先生には言えるわけないのだが。
「そうか。毎週ってことは通院でもしてるのか?」
「えっ…え〜と……それはですね……あっ!そういえば、七宮先生ってなんで教師になろうと思ったんですか?とっっても気になります!!!」
「え?あー…そうだな…きっかけは俺が高校生の時だったな」
なんとか話題を変えることに成功。そのまま話を続けてもらうため私は興味深そうな表情を保ったまま数回頷いた。
「今はこんな感じたが…当時はどうしようもねぇ不良で、学校もヤンキーばっかで治安最悪の底辺校に通ってたんだ。勉強もしねぇわ、他の不良達と連んで遊び回るわで、案の定退学ギリギリだったな。だが、高三の秋のある日、教室に忘れたケータイを取りに戻ったら俺の隣の席の女子が一人だけ残っていた。そいつはその高校の中で一番頭の良い、あの学校に不釣り合いな真面目なヤツだった。まぁ、そいつのことは気にせず自分の机からケータイ取り出して帰ろうとしたんだが、急に『七宮君』って呼び止められた。…振り向いたときにアイツに言われた言葉は今でも覚えてる。『人生が勿体ない』だとさ。『意味分かんねぇ 』って言ったら、『あなたがくだらない遊びで時間を無駄にするのは損です。恵まれた才能が可哀想』…って返された。その時は無視して教室を出たが、後から一向に決まらない進路のことが頭を過ぎった。その次の日、俺は放課後遊びに行く気にならなくて教室に残っていたんだが…隣からアイツが数学の問題冊子を押し付けてきた。『蛍光ペン引いてあるとこ、解いてみて』…つって。俺は無視したが、アイツは『変わりたい、現状をどうにかしたいって気持ちを………希望に昇華するのが勉強だ。……私の人生を、私だけは絶対に無駄にしてやらないから』…って呟いた。その言葉を俺は暫く自分の中で反芻した。…そんで、渡された問題を解いてみることにしたんだ。そっからだよ、俺が変わり始めたのは。数学に取り憑かれたようにハマった。どんな遊びよりも、数学を学ぶことが楽しくなった。…他の教科はてんで駄目だったが、アイツが教えてくれたおかげで偏差値はかなり上がった。今思えば、…自分で言うのも何だが、アイツは俺の数学の才能を見抜いていたんだろうな。結果的に、俺は目標の大学に現役合格したんだーーーー長くなったがこれが理由だな 」