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第五章:夏休みの終わり、ノートの行方
どんよりとした曇り空のまま迎えた夏休みは、どこか息が詰まるように長く感じられた。
あの日の廊下での気まずいすれ違い以来、僕と君の間にあった細い糸は、完全にプツリと切れてしまったように思えた。
休みが明けても、状況は何も変わらなかった。
クラスが分かれたわけでもないのに、僕たちはまるで最初から何事もなかったかのように、互いの視線を避け続けた。あのノートは今、どこにあるのだろう。僕の机の引き出しの奥で埃をかぶっているのか、それとも、あの時見かけた別の男子の手に渡ってしまったのか。それを確かめる勇気は、もうどこにも残っていなかった。
秋風が吹き始め、校庭の木々が少しずつ色づき始める頃、僕たちの間には決定的な沈黙だけが横たわっていた。
言葉を交わさないまま、ただ同じ空間で時間だけが過ぎていく。それは、どんなに激しい喧嘩よりも残酷で、僕たちの距離を修復不可能なものにしていた。
それでも、心のどこかで諦めきれなかった僕は、夏休みのあいだに書き下ろした小さな小説の原稿を、あのノートとは別に、封筒に入れて持っていた。
「これを渡せば、何か変わるかもしれない」
そんな微かな期待を胸に、放課後の誰もいなくなった教室で、僕はその封筒を君の机のなかにそっと滑り込ませた。
だが、翌日、教室の片隅でその封筒が君の手に渡ったのを見た瞬間、僕は自分がとてつもなく恐ろしいことをしてしまったのだと気づいた。
君は封筒から取り出した原稿用紙の束に目を落とし、数行を読んだだけで、急に顔を真っ赤にして俯いた。
その表情は、僕が期待していたような懐かしさや切なさの色ではなく、もっと戸惑いに満ちていて、どこか引きつっているように見えた。
「これ……なに?」
すぐ近くで聞こえたわけでもないのに、君の震える声が頭の中に直接響いた気がした。
別の男子の存在に揺らいでいた彼女に対して、こんな個人的で生々しい自分の気持ちを押し付けるような小説を渡すなんて、あまりにも的外れで、幼稚で、最悪な行為だったのではないか。
急激に冷や汗が背中を伝う。
胸がバクバクとうるさく鳴り響き、僕はたまらなくなってその場から逃げ出すように教室を飛び出した。
あれほど近づきたくて、あの頃の温度を取り戻したかったはずなのに、いざその一歩を踏み出した瞬間、僕たちはさらに取り返しのつかない深い溝に落ち込んでしまったのだった。
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コメント
1件
ひぃ〜〜…第5話、読み終わったよ…😭💔 夏休み明けても変わらない距離感、切なすぎる……。「これを渡せば何か変わるかも」って封筒を机に入れるシーン、もうドキドキしすぎて読んでるこっちまで息止まっちゃったよ!でも、彼女の「これ…なに?」の震えた声が脳裏に焼きついて離れない……。せっかく勇気出したのに、逆効果になっちゃうの辛すぎるよぅ😢💦 ノートの行方も気になるし、このすれ違い、どうなっちゃうの!?続きが気になりすぎるよ…次のエピソード、めっちゃ待ってるね!!📚💕