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「おはよう、主様。」
3人で向かい、食堂に着くとバスティンが待っていた。彼は隣にいる主様と挨拶を交わすと、既に用意されてある料理の前の椅子を引いた。
「わぁ!これまたお洒落な朝食だね。」
「今日のメニューはクロックマダムです!どうぞお召し上がりください♪」
ロノは相変わらず料理が上手だ。私も何度も彼の料理にお世話になっている。
ロノもバスティンも厨房へ戻ってしまったため、代わりに私ができることはないか尋ねることにした。私ばかり主様と話すのも申し訳ないし。
『何か手伝えることは?』
「なんもねーよ。 ムーは主様と話とけ。」
『2人も喋りたいでしょ?』
そういうとロノとバスティンは、一瞬顔を見合わせて再びこっちを見つめてから言った。
「主様はお前をお呼びだ。 ここは任せとけ。」
『…ありがとう笑。』
そうして私は主様のもとへ戻るのだった。
『ただいま戻りました〜♪』
「おかえり笑。 ムーも一緒に食べる?」
『私は、主様が食べた後に頂きますね!』
「めっちゃ美味しいよ。」
『後でロノに伝えておきます笑。』
「そーいえばさ、なんでここには女の子がムーしかいないの?」
『…なんででしょうねぇ。』
私もそれは思う。どうして女性の執事は私だけしかいないのだろう。
「なんかムーって謎多いよね笑。」
『えぇっ!?そんなことないですよ笑。』
「いやいやいや、本名も出身も隠してるし。」
『隠してるんじゃなくて忘れたんですー!』
「ふふ、ごめんごめんからかっただけ笑。」
『全くもう…』
「ムーはからかいがいがあって可愛い笑。」
『なっ、!!』
「照れる時も顔真っ赤!」
『からかわないでください…!』
「ごめんごめん笑。」
主様と話していると何だか懐かしい気持ちになる。まるで昔から主様と話していたような気分になってしまうのだ。
「ご馳走様でした!」
主様はお食事を終えると、そのままお庭の方へ日光浴をされに行ったようだ。
私は自分の朝食を準備して席に着いた。
ふと食堂の花瓶に目をやるとライラックの花が彩りを見せていた。
『いただきます。』
「俺も一緒に食べていいか?」
1人でもぐもぐと朝食を食べていると、厨房からバスティンが自分の分のお皿を持って隣に腰掛けてきた。
『もちろん!』
『ってバスティン今日も大食いだね笑。』
彼のお皿にはクロックマダムが5枚もあった。
「少ない気がするが…」
『いやいやいや!私は一枚だよ?笑』
「ムーさんが少ないだけだ。」
とは言いつつ、多分バスティンはつまみ食いもしてるだろうからもっと食べてるんだろうなぁと頭の中で思う。結局ロノにバレて怒られてるんだろうなぁ…笑。
「今まで思ってたんだが、ムーさんを見てると昔の主様を思い出すよ。」
『えっ?』
昔の主様。全執事から何度も聞いた言葉だ。
私が来る数年前までいた主様で、とても心優しい方だったらしい。悪魔執事を全肯定してくれ執事と互いに支え合っていたようだ。
しかし具体的な記憶が頭からやんわりと抜け落ちており、姿や名前、声までも誰も覚えていないらしい。なぜいなくなったかも分からないし、まだ10年ほどしか経ってないはずなのに、すごく昔の話をするかのように皆は振る舞う。
「思い出すと言うか、何かを感じるんだ。」
『へぇ〜。』
「頭の中では覚えていなくても、体は覚えている。だから、会った時に感じたこととかは多分同じように感じるんだと思う。」
『なるほどねぇ。 まぁ、残念ながら私は主様じゃ無いんだけどね笑。』
覚えても無い相手をどうしてここまで好きでいれるのだろうか。その人はもういないはずなのに、誰もがまだその人を懐かしむ。
そんなに大事にしてたんだなぁ。