第7話 「碧き刃」
🚀 シーン1:開戦
「ターゲット、迎撃準備!」
ヴェール・バインドの隊員たちが、一斉に構えた。
黒い戦闘スーツに身を包み、ヘルメット越しに鋭い視線を覗かせる精鋭部隊。
彼らの手には、寿命を代償に力を引き出す《ライフ・エクスチェンジャー》が装着されていた。
然(ぜん)は屋上の縁に立ち、じっと敵の動きを見据えた。
その横で、ナヴィスが軽く指を鳴らす。
「さて、ゼイン。どうやって遊んでやる?」
風に揺れる無造作な黒髪、青い瞳が夜の闇に鋭く輝く。
彼は軽くジャケットの袖をまくると、腕の碧色の紋様が淡く発光した。
然は深く息を吸い、低く呟いた。
「……やるぞ」
次の瞬間、夜の静寂が崩壊した。
🚀 シーン2:疾風の戦場
「ライフ・エクスチェンジャー起動!」
ヴェール・バインドの隊員たちが装置を発動した途端——彼らの動きが爆発的に速くなった。
体の筋肉が膨れ上がり、装甲スーツの関節が唸る。
「っ、速い……!」
然が言葉を発する間もなく、一人の隊員が音速の勢いで跳躍した。
——銃口がこちらを向く。
「排除する」
瞬間、轟音と共に高エネルギー弾が放たれた。
超高速の弾丸が空間を裂き、然の額を撃ち抜かんとする——
だが、その瞬間。
「——《フォールトシフト》」
ナヴィスが軽く指を弾いた。
次の瞬間——然の体とヴェール・バインドの隊員の体が、一瞬で入れ替わる。
「なっ……!?」
然のいた場所に隊員が現れ、その背後から放たれた仲間の銃弾が——
「ぐはっ……!!」
自らの隊員を撃ち抜いた。
「……ナヴィス、相変わらずエグい使い方するな」
然はわずかに冷や汗を流しながら、左腕に力を込めた。
碧色の紋様が淡く輝く。
「《オーバーライド》——発動」
ヴェール・バインドの隊員たちのライフ・エクスチェンジャーが、一斉に停止した。
「なっ……!?」
装置が完全に無効化され、隊員たちの超人的な動きが消える。
「……さて、どうする?」
然は静かに言いながら、一歩前に出た。
「あんたらの武器は、もう使えねぇ」
だが、その言葉を嘲笑うかのように、ヴェール・バインドの指揮官が口を開く。
「なるほど……だが、それでも、我々が碧族を狩ることに変わりはない」
指揮官が小型のデバイスを握りしめた瞬間——
「《アンチ・フラクタル・フィールド》展開」
瞬間、青白い光が辺りを包み込んだ。
然の体が、一瞬にして鉛のように重くなる。
腕の紋様が、まるで力を奪われるかのように薄れていく。
「っ……フラクタルが……使えねぇ!?」
ナヴィスも思わず眉をひそめた。
「……これは、マズいな」
ヴェール・バインドの隊員たちが、不敵に笑う。
「貴様ら碧族にとって、フラクタルこそがすべての力だろう?」
指揮官がゆっくりと拳を握りしめる。
「それを封じられた今、貴様らはただの”狩られる者”に過ぎん」
然は歯を食いしばり、拳を握る。
「……ふざけるな」
「俺たちは、ただの獲物じゃねぇ……!!」
その瞬間、夜の空に新たな閃光が走った。
🚀 シーン3:碧き刃、閃く
「……はは、流石に絶望的か?」
ナヴィスが苦笑しながらつぶやく。
然は低く呼吸を整え、足を踏み込んだ。
——ヴェール・バインドの戦術が、読めた。
然は静かに拳を握りしめ、腕の力を抜いた。
「お前ら、何か忘れてねぇか?」
隊員たちは一瞬、戸惑った。
「俺たちは、フラクタルしか武器がないわけじゃない」
然は鋭く笑いながら、ポケットから取り出したのは——
碧族専用のナイフ。
「……碧素を使った物理武器か」
ヴェール・バインドの指揮官が眉をひそめた瞬間——
閃光が走る。
「……っ!」
然の体が一瞬、霧のように揺らぎ——
次の瞬間、彼は敵の懐へと滑り込んでいた。
「は……!? 速——」
言葉が終わるよりも速く、然の刃が隊員のスーツを裂いた。
「チッ……!」
他の隊員が即座に銃を構えるが——
「——ナヴィス!!」
「了解、《リバースバリア》!」
瞬間、ナヴィスの展開したフィールドが敵の銃撃をすべて反射し、逆に敵を吹き飛ばした。
「がっ……!!」
ヴェール・バインドの隊員たちが、次々と崩れ落ちる。
指揮官は歯を食いしばり、戦況を見つめた。
「……撤退する」
隊員たちが即座に後退し、ヘリが高度を上げる。
ナヴィスはそれを見て、軽く息をついた。
「……ふぅ、勝ったな」
然は静かにナイフを握りしめたまま、夜の空を見上げた。
「……いや、始まったばかりだ」
——ヴェール・バインドとの、本格的な戦いが。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!