テラーノベル
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街へ近づくにつれて、空気が変わっていった。
砂の匂いが薄れていく。
代わりに、甘い花みたいな香りが強くなる。
空を見上げる。
浮かぶ街は、近づけば近づくほど現実感を失っていった。
建物が、逆さまになっている。
空へ向かって川が流れている。
青白い魚が宙を泳ぎ、ガラスのような鳥が鳴いている。
「……夢?」
思わず呟く。
らっだぁが笑った。
「綺麗だよねぇ」
街の入り口へ足を踏み入れる。
その瞬間。
ぐにゃり、と。
視界が歪んだ。
「わ゛あ゛っ!?」
身体が浮く。
重力が狂ったみたいに、一瞬だけ足元の感覚が消える。
次の瞬間には戻っていた。
「今の⋯っ」
「ここの世界、重力不安定なんだよね〜」
「軽く言うことじゃないだろ⋯」
らっだぁは楽しそうに笑った。
周囲を見回す。
街は静かだった。
いや、
静かすぎる。
建物はある。
店も並んでいる。
信号も動いている。
なのに、人の気配だけが存在しない。
風が吹く。
――カラン
何処かでドアベルが鳴った。
無人のカフェが視界に映る。
テーブルには湯気の消えたカップが置かれている。
まるで、さっきまで誰かが居たみたいに。
「……気味悪」
らっだぁは前を向いたまま歩いていく。
「この街は、もう半分くらい喰われてるからね」
「喰われてるって……エンティティに?」
「うん」
軽い。
本当に、世間話みたいに言う。
「世界ってさ、壊れる時は静かに壊れるんだよ」
らっだぁの声だけが響く。
その時。
――ザザザッ
ノイズみたいな音が頭の奥で鳴った。
視界がぶれる。
一瞬だけ、
どこかで見たような景色が見えた。
雨の街。
人影。
灰色の空。
『――”蒼い狼”って、知ってる?』
「っ、」
頭が痛む。
思わず額を押さえた。
Sora🫧🐋
844
翠(´・ω・`)
30,939
「……ぐちつぼ?」
らっだぁが振り返る。
「今、なんか……」
言いかけて止まる。
記憶が、霧みたいに消えていく。
「……いや」
らっだぁは少しだけ目を細めた。
「この街、記憶が混ざることあるから」
「混ざる?」
「別の世界の記憶が流れ込んだりするんだよね〜」
そんな軽く言えることだろうか。
「まぁ、大体は思い出した自分の記憶だけどね」
「自分の⋯」
「そう。この街は結構思い出しやすいのかな」
考えを見透かされたような気持ちになる。
顔を顰めた、その時だった。
ギィィィィ……
街の奥で、何かが軋む音がした。
同時に、
空中都市の中心部。
逆さまに浮かぶ塔の頂上で、“巨大な影”が蠢く。
ぶわっ、と空気が振動した。
「あれだね、この街のエンティティ」
らっだぁが空を見上げる。
碧い瞳が、再度細められる。
「たぶん、あいつのせいでこの世界が崩れ始めてる」
影が動くたびに、街が軋む。
空に亀裂みたいな線が走った。
息を呑む。
目の前で、世界が壊れかけている。
「……どうすんの」
らっだぁは少しだけ笑った。
「とりあえず、街の中心まで行こっか」
その時だった。
――ガガッ
道端に転がっていた古い機械が、突然起動する。
青白い光。
ノイズ。
そして、
『――認証確認』
機械音声が響いた。
『識別コード照合⋯』
らっだぁの表情が、一瞬だけ止まった。
『⋯照合完了――蒼』
直後。
ガンッ
らっだぁが機械を蹴り飛ばした。
火花が散る。
音が止まった。
一瞬の沈黙が落ちる。
「……今の、何」
らっだぁは数秒黙ってから、いつもの笑顔を浮かべた。
「さあ?」
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コメント
6件

その街の風景見てみたいかも…(( 実際こういうパラレルワールドは存在するんですかね……不思議だ… 面白くなってきましたね…