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ただのあまとう
189
#stgr
ポテサラ
4,530
まるまろ
3
39,263
街へ近づくにつれて、空気が変わっていった。
砂の匂いが薄れていく。
代わりに、甘い花みたいな香りが強くなる。
空を見上げる。
浮かぶ街は、近づけば近づくほど現実感を失っていった。
建物が、逆さまになっている。
空へ向かって川が流れている。
青白い魚が宙を泳ぎ、ガラスのような鳥が鳴いている。
「……夢?」
思わず呟く。
らっだぁが笑った。
「綺麗だよねぇ」
街の入り口へ足を踏み入れる。
その瞬間。
ぐにゃり、と。
視界が歪んだ。
「わ゛あ゛っ!?」
身体が浮く。
重力が狂ったみたいに、一瞬だけ足元の感覚が消える。
次の瞬間には戻っていた。
「今の⋯っ」
「ここの世界、重力不安定なんだよね〜」
「軽く言うことじゃないだろ⋯」
らっだぁは楽しそうに笑った。
周囲を見回す。
街は静かだった。
いや、
静かすぎる。
建物はある。
店も並んでいる。
信号も動いている。
なのに、人の気配だけが存在しない。
風が吹く。
――カラン
何処かでドアベルが鳴った。
無人のカフェが視界に映る。
テーブルには湯気の消えたカップが置かれている。
まるで、さっきまで誰かが居たみたいに。
「……気味悪」
らっだぁは前を向いたまま歩いていく。
「この街は、もう半分くらい喰われてるからね」
「喰われてるって……エンティティに?」
「うん」
軽い。
本当に、世間話みたいに言う。
「世界ってさ、壊れる時は静かに壊れるんだよ」
らっだぁの声だけが響く。
その時。
――ザザザッ
ノイズみたいな音が頭の奥で鳴った。
視界がぶれる。
一瞬だけ、
どこかで見たような景色が見えた。
雨の街。
人影。
灰色の空。
『――”蒼い狼”って、知ってる?』
「っ、」
頭が痛む。
思わず額を押さえた。
「……ぐちつぼ?」
らっだぁが振り返る。
「今、なんか……」
言いかけて止まる。
記憶が、霧みたいに消えていく。
「……いや」
らっだぁは少しだけ目を細めた。
「この街、記憶が混ざることあるから」
「混ざる?」
「別の世界の記憶が流れ込んだりするんだよね〜」
そんな軽く言えることだろうか。
「まぁ、大体は思い出した自分の記憶だけどね」
「自分の⋯」
「そう。この街は結構思い出しやすいのかな」
考えを見透かされたような気持ちになる。
顔を顰めた、その時だった。
ギィィィィ……
街の奥で、何かが軋む音がした。
同時に、
空中都市の中心部。
逆さまに浮かぶ塔の頂上で、“巨大な影”が蠢く。
ぶわっ、と空気が振動した。
「あれだね、この街のエンティティ」
らっだぁが空を見上げる。
碧い瞳が、再度細められる。
「たぶん、あいつのせいでこの世界が崩れ始めてる」
影が動くたびに、街が軋む。
空に亀裂みたいな線が走った。
息を呑む。
目の前で、世界が壊れかけている。
「……どうすんの」
らっだぁは少しだけ笑った。
「とりあえず、街の中心まで行こっか」
その時だった。
――ガガッ
道端に転がっていた古い機械が、突然起動する。
青白い光。
ノイズ。
そして、
『――認証確認』
機械音声が響いた。
『識別コード照合⋯』
らっだぁの表情が、一瞬だけ止まった。
『⋯照合完了――蒼』
直後。
ガンッ
らっだぁが機械を蹴り飛ばした。
火花が散る。
音が止まった。
一瞬の沈黙が落ちる。
「……今の、何」
らっだぁは数秒黙ってから、いつもの笑顔を浮かべた。
「さあ?」
NEXT=♡1000
コメント
6件

その街の風景見てみたいかも…(( 実際こういうパラレルワールドは存在するんですかね……不思議だ… 面白くなってきましたね…