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蒼い糸を結んで

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蒼い糸を結んで

27 - 第27話 繋いで、蒼い糸

♥

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2024年08月28日

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「樹!小夜ちゃんが!」

うつ伏せで倒れていた小野寺さんが声を上げる。


樹くんがこちらに走って来るのが見えた。


私は、背中に一瞬痛みを感じた。

同時に背中から、勢いよく熱いものが流れていく感触が残る。


「小夜!」


そうか、切られたんだ。

先程私のことを押さえつけていた隊士が、僅に残っている視力で私を後ろから切りつけた。


樹くんが自分の刀を隊士目掛け投げつけ、それが命中し、隊士は倒れた。


私も立っていることができず、地面へ倒れ込んでしまった。

樹くんが私のことを優しく抱き上げる。


「小夜……?」


彼は今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「どうして……。そんなに……。悲しそうな顔をしているの?せっかく、勝てたのに」


手を伸ばして、彼の頬に触れる。

「勝てたって、小夜がいないと意味がないんだ」


身体の感覚が無くなっていく。

痛みを感じないのが不思議だった。


「私……。幸せだったよ。樹くんに……。また逢えて、嬉しかった」


私の頬を涙が伝った。視界がぼやけ、白い靄がかかる。


「もう話すな。医者に連れて行く。絶対に助ける」


自分でも出血量が多いことは理解しており、ここで死ぬのだと覚悟した。


「私はもう……。生きられない。だから最後に聞いて?樹くんと……。気持ちが繋がって……。幸せでした。樹くんは……。私のことは、忘れて……。私の分まで幸せになって」


私の頬に涙が落ちてきた。視界はぼんやりしていて、彼の顔が見えない。彼は泣いているのだろうか。


「小夜じゃないとダメなんだ。だから、そんなこと言わないでくれ」


最後に自分の気持ちを伝えたい。


「ありがとう……。愛して……る……」


私の手が樹くんの頬から離れる。


「小夜……?小夜……!!!」





その時、髪の毛を結んでいた紐が切れた。

彼女からもらったものだった。


どうしてこんな時に切れてしまうんだ。


どうにか……。何か方法は……。


絶対死なせたくない。


そう言えば彼女と再会をして、初めて任務に行く時に彼女から渡された薬があった。


「これ、両親が残した最後の薬です。効能はよくわかりませんが、なんでも効く薬だって言っていました。月城さんに持っていてもらいたくて。なんでも効く薬なんて。この世にないと思います。それでも私は、両親からの贈り物を信じたいんです」


そんな大切なものを貰えないと最初は断った。


だが彼女は

「では、預かっていて下さい。私に何かあった時 はこれを飲ませて下さい」

そう言ってほほ笑んでいた。


一か八か。

懐から薬を出し、彼女の口を少しだけ開け、薬を流し込む。


頼む、飲み込んでくれ。

しかし喉は動かず、薬は口の中に残ってしまっている。


「すまない、誰か水を持ってきてくれないか?」


見守っていた隊士が慌てて水筒を持ってきてくれた。


小夜の口に水を流す。零れてしまいそうだった。

自分の口に水を含ませ、口づけをし、彼女の口の中に流し込む。


少しは飲めているのだろうか。


その時

「ごほっ」

と彼女が咳をした。


「小夜……?小夜……!?」


意識はない。

だが、微かに息をしている。


「負傷者が多数だ!本部へ応援要請はかけているが、予想以上に多い。至急、救護班も増員しての応援を要請しろ」


頼む、助かってくれ。


願うしかなかったーー。







目が覚めると、自分の家だった。


あれ。私、生きている?


隣を見ると、樹くんが私の方を向いて寝ていた。


これは夢?


樹くんの頬を触ってみる。


「ん……。小夜?」


横になったまま視線が合った。


「小夜、起きたのか!?」


樹くんは起き上がり、私の顔を覗き込む。


「これは夢ですか?夢だったら幸せな夢で良かった」


なぜだか生きている実感がしない。


「夢じゃない」


そう言うと、樹くんは私に優しく口づけをした。

唇の感触がする。


「ほら、夢じゃないだろう?」


「しばらく病院で治療を受けていたんだが、命に別状がなくなって自宅に運ばれたんだ。医者からはもう起きてもいい頃だって言われてたんだが、なかなか起きなくて心配だった。もう一週間くらいずっと寝ていたんだよ」


「そんなに寝ていたんですか」


それから樹くんは、あの時のことを教えてくれた。

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