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ある日突然、高校時代に友達だった美咲から連絡が来た。別々の大学に行ってからは連絡はとっていなかったし、そもそも友達、というよりは知り合い、という程度の関係性だったから、連絡が来たときは少し驚いた。
「ひさしぶり。元気してた?」
「うん、元気」
「ねぇ、静香ってオカルト好きだったよね?」
ううん? 高校時代そんな話したっけな? 誰かと間違ってないかな? でもまあ、いきなりそういうのも気まずい思いをさせるかも……。
「まあ、人並み程度かな?」
「実はね、珍しいビデオが手に入ったんだ」
「珍しいビデオ?」
「そう。ある村の風習なんだけど、ガチで怖いんだって」
正直言って、このときはあまり興味がなかった。だから、なぜ美咲がわたしにそんなビデオを勧めてくるのかがわからなかった。
「見たかったんだけど、今の学校でホラー好きな人いなくて。一人で見るの怖いし、もしよかったら見に来ない? いっしょにどう?」
そんな美咲の言葉につられて、わたしはそのビデオを見に行った。美咲とはそれほど仲が良かったわけじゃなかったし、わざわざわたしを誘う理由がわからなかったけれど、まあ暇だったし、話の流れで「いいよ」と返事をしてしまった。
数日後、美咲に教えられた住所のマンションに行って、部屋を訪ねた。
「おじゃましまーす」
「どうぞ、入って入って。ビデオは先にセットしておいたから、すぐ見られるよ。ほら、こっちこっち」
美咲はわたしの手を引いて、部屋の奥に連れて行く。そして、壁に立てかけられた一枚の古い白黒写真を指差した。
「ほら、この写真が問題の村だよ。この風習がいつ始まったのかは知らないけど、少なくとも江戸時代から続いてるらしいの。でさ、この風習っていうのが……」
美咲の説明を聞きながら、わたしは写真に写る景色を眺めていた。山奥の村らしく、家々は密集しているけれど、どの家も古びていて、人が住んでいるようには見えなかった。
「冥婚、って言うんだって」
「めいこん?」
聞き慣れない単語に、思わずわたしは聞き返した。
「うん。冥婚。死んだ人と、生きてる人を結婚させるんだって」
「え、それ、どういうこと?」
「まあ見ててよ。ほら、これ……」
美咲は一枚の写真を指差した。その写真には一人の女性が写っていて、その隣には男性らしき人物の遺影が写っている。
「この人と……この女の人が結婚するの?」
「そうらしいよ」
「でも、どうして?」
「なんかね、思いを残して死んだ人の無念を晴らすために、そういう儀式が生まれたんだって。んでね。この男の人は、戦争で亡ったの。だから……」
「死んだ後、この女の人と結婚したんだ?」
「そう。それが冥婚なんだよ」
「……そんな風習、いまどきある?」
「まあ、今はめったに聞かないよね。でもさ、このビデオはその風習が残っている村で撮られた、本物なんだって。だから……ね? 一緒に見ない?」
美咲はわたしの目をじっと見つめる。わたしは少し考えてから、小さく頷いた。正直言って少し怖いけど……でもまあ、ただの風習だし。それに暇だしな……と自分を納得させて。
「じゃあ、始めるよ」
美咲はそう言ってビデオの再生ボタンを押した。画面は真っ暗で、しばらく何も映らなかったけれど……やがて、少しずつ映像が浮かび上がってきた。古い木造の建物の中だろうか? 薄暗い中にぼんやりとした明かりが見える。そして……その明かりの中に浮かび上がるように、一人の女性が現れた。しかもその女性は、全身を拘束され、目隠しをされている。
「ストップ、ストップ、ストップ!」
(続く)