裏路地は、まだ明るい時間帯だというのにも関わらず、やけに薄暗かった。
まるで先の見えない迷路を歩いている様な、ただひたすらに仄暗い永遠に続く洞窟を歩いている様な、そんな感覚だった。
「なんかいかにも風俗街って感じ・・・」沙月が怯えた顔で辺りを見回す。
裏路地には針の穴程度の隙間も無いほどに雑居ビルが並び、至る所に風俗店と思しき看板が取り付けられている。女子高生が歩くには不釣り合いな場所だ。
「本当にこんな所に梓のお母さんが入ってったの?間違いなんじゃない?」
「絶対に梓のお母さんだったって!」
聖奈と沙月が軽く言い合いをする。
「ちょっと!2人とも!」梓が2人の仲を取り持とうとするが、手前から若い男が話しかけてくる。
「あれー?こんな所に女子高生が何の用だ?あぁ?」
男は前屈みになり、聖奈を見上げる様に見つめる。
男は上下赤色の、PUMOのジャージを着用してており、カタギで無い事は両頬に彫られた龍の刺青からうかごい知る事が出来る。
「みんな・・帰ろう」聖奈は梓と沙月の腕を引っ張り、来た道を戻る様に裏路地から出ようとする。
しかし、男は聖奈の肩に腕を回してそれを妨害する。
「おいおい!ちょっと待てよ!せっかくだからよ、ちょっと遊んでけよ!な?な?」俺は聖奈の胸を触りながらニヤリと笑う。
「ちょっと離して!やめて!」聖奈は男の腕を振り解く。
「大声出すよ!?」聖奈が挑発するが逆効果だった様で
「やってみろ!やったら使い物にならなくなるまで輪姦してやるだけだけどな!ゲヘヘ!」男は下品に笑う。
3人が怯えた目で男を見つめていると、そこにブランド物のスーツに身を包んだ小綺麗な中年男性が現れる。
「お前は何をやっているんだ?任せた仕事はどうした?」中年男性は刺青の男を睨む。
「か、梶橋さん!あ、いや、これは・・・」
男はひどく怯えた様子で震えている。
「さっさと行け!」梶橋の言葉に刺青の男は「すいません」と頭を下げて、裏路地の奥へと消えていく。
「高校生がこんな場所をうろつくもんじゃないよ?この辺は物騒だからね?」梶橋は皆に優しく語りかける。
「あ、ありがとうございました」聖奈が頭を下げると、それに続いて梓と沙月も頭を下げる。
「今日の事は忘れて、家に帰るんだ!いいね?」
梶橋の忠告に、聖奈と沙月うなずき、その場から立ち去ろうとするが、梓だけは違った。
その場から動かずに、ずっと怯えた目で梶橋を見つめている。
「ちょっと梓?いくよ?」聖奈がその場から離れる様に促すが、梓は聞く耳を持たない。
そして震えた声で「か、金森こずえって人、知りませんか?」と梶橋に問いかける。
「金森・・こずえ?」梶橋は首を傾げる。
「私の・・お母さんなんです。ずっと行方が分からなくて・・」
梓の言葉に梶橋は同情する様に「そうか・・それは心配だね」と優しく語りかける。
「さっき・・お母さんに似た人をココで見たんです・・知りませんか?」
梓の問いかけに、梶橋は「うー・・ん、私の知り合いには居ないね」と言い切る。
「そう・・ですか・・・」梓は残念そうにうつむく。
「力になれなくて申し訳ないね」梶橋は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いえ・・大丈夫です・・失礼しました。」
梓は聖奈と沙月の腕を引っ張って裏路地から出る。
そんな3人を黙って見つめる梶橋。
「こずえさんの娘か・・なるほど・・よく似ている」梶橋はそう呟き、雑居ビルの中へ消えていく。
雑居ビルの一室。そこには風俗のプレイルームがズラリと並んでおり、中からは男女の喘ぎ声が絶え間なく聞こえてくる。
その通路を梶橋は咥えタバコで素通りし、奥の部屋に入る。
その部屋では、椅子に座ってドレッサーで小慣れた手つきで化粧をする金森こずえの姿があった。
「あら?龍彦さん?珍しいわね?こんな時間に」
こずえは梶橋を目視すると、立ち上がり小走りで梶橋に近づき抱きつく。
「たまたま用事があった物ですから・・にしても相変わらずお綺麗だ!こずえさん」
梶橋はこずえの胸を揉む。
「今・・君の娘さん・・梓と言っていた・・その子にに会いましたよ」
梶橋がそう口にすると、こずえの顔から笑顔が消える。
「え?梓が?高校生がこんな所に何の用よ・・」
こずえはムスッとした表情でタバコに火をつけ、口から濁った煙を吐き出す。
「お母さんが行方知らずで探していると・・そう言っていましたよ?」
「けっ、少し母親が帰ってこないだけで・・相変わらず甘ったれたガキだこと!」こずえは苛立った様子で、タバコを灰皿に押し付ける。
「こらこら・・こずえさん?実の娘にそんな事い言うもんじゃありませんよ」
梶橋はこずえの頬に手を添える。
「いいのよ・・アイツも母親の有り難みを知るいい機会よ・・」こずえは不的な笑みを浮かべて、自らの腕を梶橋の首元に絡ませる。
「でも・・今のこずえさんを見たら・・娘さんはどう思うんでしょうか・・借金を肩代わりしてもらった代わりに・・こんな風俗で体を売っていると知ったら・・」
梶橋はこずえの体を舐める様に手で触れる。
「今・・私幸せよ?母親やってた頃とは違って・・今は毎日がハッピーなんだから」
こずえは梶橋の股に手を添える。
「じゃあ・・もっと幸せになってもらいましょうか」梶橋はこずえを抱き寄せ、ベッドに押し倒す。
「うんもう❤︎龍彦さんったら❤︎乱暴なんだから❤︎」
「乱暴な男はお嫌いですか?そんな事ありませんよね?」
「乱暴な男だぁーいすき❤︎」
「では荒々しく行かせてもらいますよ?」
こずえと梶橋は、雑居ビルの一室で激しく愛を感じ合う。
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