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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

53 - 第三章 ときめきの甘い恋を、あなたに EP.1「貴仁さんとの初デート」⑩

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2025年01月22日

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なんて言うか貴仁さんって、計算ずくじゃない分、逆に最強なのかもと密かに思いつつ、胸に手を当てて早る鼓動を抑えた。


そうして次はどこへ行ったら……と、モール内を見渡していると、映画の告知ポスターが目に入った。


「そうだ、見たい映画があって」


思わず声に出すと、「なら、二人で見ようか」と、壁に掛けられたポスターに、彼も目を移した。


「はい!」と勢い込んで返事をしたものの、私の見たい映画を果たして彼が気に入るのかが心配になってくる。


「あの、恋愛サスペンスって、お好きですか?」


「うーん……」と、彼は顎に片手を添えて考え込んで、「あまり私は見たことはないが、別に嫌いではないんで見てみたいな」と、続けた。


もしかして気をつかってくれているのかなと、見るのをちょっとためらっていると、彼がふいに私の手を掴んで、フロアの奥にあるシネマホールに向かった。


「私が見たいかどうかを気にしなくてもいい。君と見れば、きっとなんでも気に入るはずだからな」


ホール内に足を踏み入れると、彼がこちらへ顔を向け、そう話した。


「……そんな風に思ってもらえるなんて、うれしいです」


はにかんで口にする私に、


「君と同じ時間を共有できるのは、私もうれしいのは同じだ」


彼がフッと笑って答えた。


……ほら、ね? こういうことをさらりと言えちゃうんだもの、やっぱり貴仁さんて、無自覚に最強なんじゃないのかな?


そういう彼が好きでと思うと、私の顔も無意識にほころんだ。


チケットを二枚購入した彼に、代金を渡そうとすると、


「いやさっきコロンをもらったから、今度は私におごらせてほしい」


彼がそう言って、私を制した。


「あ、ありがとうございます」


お言葉に甘えて、頭をペコッと下げる。


まだ上映までには時間があって、「ちょっとトイレに行ってきますので、先に席に座っていてもらえますか」と、彼を促した。


トイレから出ると、ロビーでポップコーンが売っているのが目に留まり、映画を見るなら、やっぱりポップコーンがあった方がいいよねと、カップ入りの物を一個買って席へ戻ると、


「……それは?」


と、彼が不思議そうな顔をした。


「映画を見ながら、食べようと思って」


席に着いて話すと、


「えっ、映画を見ながら、食べるのか?」


彼が半ばオウム返しに口にして、ますます不思議そうに首を傾げた。


「えっとポップコーンって食べても音があんまり出ないので、言うなれば映画のお供みたいなものなんですよ」


「そうなのか、全く知らなかった」


ポップコーンのカップを見つめ、あっけにとられている彼に、


「実は一個のカップから二人で食べるのも、映画デートではよくしたりするので、貴仁さん、いっしょに食べませんか」


そう笑顔で勧めた。


「二人で一つを……そういう楽しみ方もあるのか」


新鮮味の感じられる彼の反応に、私まで初めての映画デートみたいに、なんだか気分がそわそわと浮き立ってくる。


「どうぞ食べてみてください。定番の塩味にしたので」


「じゃあ、もらおうか」


二人の座席の間に置いたカップから、彼がひとつまみを食べて、


「うん、うまいな」


と、楽しげに微笑ったところで、館内のライトが落ち上映を告げるベルが鳴った──。



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