何も知らずに読んだ方が面白いので何でも大丈夫な方のみお進みください!
桃、白女体化
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彼岸花の季節、猫宮の威風(いふ)様という方は、噂に聞きますとそれは酷い評判だと言います。その評判と言いますと、表情がまるで獄中の鬼の様だと申す者も居ればそれはそれは冷ややかな視線で気味が悪いと申す者もおりました。ですがそのような評価があれど、その辺りでは有名な猫ヶ城の殿であったので威風様の嫁になりたいと言うものは後を立つことを知らないので御座います。
まるで他人の様に話しましたがこの私も威風様の御側遣いをしている一人、李雨羅(りうら)と申します。
さて、先程までのお話は威風様の事を全く知らない他人からの評価で御座いますので、私ども御側遣いからの意見を申し上げますと、ここにいる者は皆、口を揃えてそれはそれはお優しいお方だと言います。
この話から分かる通り身内からの評価と他人からの評価で威風様の印象は大分変わられるのです。
ですが、それが御本人が意図的にしている事だと気づいたものは私含め2人しか存在しません。
流れるように話しましたがこの評判は全て、威風様が意図的に仕組まれた事なので御座います。
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ここからは威風様のまだ誰にも知られていない奥様についてのお話をしましょう。
威風様の奥様は雫威弧(ないこ)様というこの町の商人の娘で御座います。
雫威弧様と威風様はそれは仲睦まじく、使用人のほとんどが全員が口を揃えて祝福の言葉を送るほどお似合いなのです。
この猫ヶ城は丘の上に立ち、9月になると辺り1面に素晴らしい彼岸花が沢山咲き誇ります。
先代からの習わしとして結婚式は彼岸花が咲く季節に行われます。
その為、皆様のお住まいはどうか分かりませんがこちらはもうすぐ彼岸花の季節になりますので、威風様と雫威弧様の結婚準備で忙しいので御座います。
次にお話するとすれば、それは威風様と雫威弧様の結婚式の時でしょうか
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さて、本日は待ちに待った結婚式の日となりました。威風様と雫威弧様は既に化粧や衣服を身に着けている最中で御座います。結婚式まではまだ数時間あるというのに町の女子共が威風様の結婚相手を一目見ようと、既に数百の人が集まっております。
ですがそれ以外にはお話できるようなこともありませんので威風様と雫威弧様の小話でもお伝えしましょうか。
これはまだお二人が会って間もない頃のお話です。
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その日は大雨落雷などが激しい梅雨の日で御座いました。雫威弧様は気圧に少々敏感な為、頭痛で苦しんで居られました。ですが威風様も殿である以上、業務をこなさなければなりません。威風様は心底心配されておりましたが、信用出来る女執事を側に置き仕事に出掛けられました。普段ならば私も威風様と御一緒するのですがその日は雫威弧様に付くよう命令されました。そうして威風様が帰って来られるまでの間は女執事、もとい初兎(しょう)と一緒に看病をしておりました。その間に初兎から妙に視線を向けられていたのはまた別のお話。
雫威弧様は薬が効くまではずっと威風様の名前を苦しそうに呟いて居られました。
雫威弧様が苦しまれている時に思うことでは無いかもしれませんが、威風様はとても雫威弧様に愛されていて、良かったと思いました。それと同時に何か黒い感情が自分の中に上がって来た気がしますが私はわざと無視をさせて頂きました。
その晩、威風様が息を切らして戻って来られた時には既に雫威弧様はご就寝なさっていましたが、威風様は余程心配だったのか、その日は同じ布団に入りお休みになって居られました。
大変恐縮では御座いますが折角なので私と初兎の身分についても少しお話しさせて頂きたいと思います。
私は代々続く専属秘書専門の御屋敷に産まれた者で御座いまして、幼い頃から専属の側遣いになれるように教育されてきました。初兎もそこに入って来た一人で御座います。そこに居る同い年の子供は初兎しか居りませんでしたので、直ぐに仲良くなることが出来ました。
12歳の時、威風様が御主人様と共に秘書探しにいらっしゃいまして運良く同い年だった私と、いつか取ることになるだろう嫁専用の秘書として初兎が雇われる事になりました。
これが私共と威風様の出会いで御座います。
威風様と雫威弧様の出会いもお話ししたい所ですが私共が知らない所で雫威弧様を口説かれた為、お話し出来る事が御座いませんので略させて頂きます。
威風様はこういった事に踏み込まれるのを嫌って居られるのです。
さて、話を戻しましょうか。そろそろ御二人の準備が整った頃で御座いましょう。間もなく宴の開宴です。少し前までは数百しか居なかった町の人間が千を超える程になって参りました。
「そろそろやんなぁ」
…今話されたのが初兎で御座います。
「…ですね」
そのまま軽く初兎と談笑していると本格的に結婚式が始まる雰囲気になって来ました。
勘が良い方なら疑問を抱いた事でしょう。何故秘書である私達が御二人の側に付いて居ないのか。
答えは単純で御二人から
「お前ら二人は小さい時からいつも俺らの為に働いてくれてるから晴れ姿は観客として楽しんで欲しい」
と、言っていただいたからで御座います。
そう言っている間にも初兎は楽しみやなぁと言い目を輝かせていて非常に愛嬌がありますね。
もともと初兎は容姿がとても美人で御座いますから。
耳が破裂しそうになるほどの沢山の歓声が上がりました。結婚式開幕の合図でしょう。
晴れ着を来た威風様と雫威弧様が歩いて来られました。
本当であれば結婚式の様子をお話したい所で御座いましたが私は嬉しさやら悲しさやら苦しさやらで終始泣くのを堪えていたので記憶が朧げな為、略させて頂きます。
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その晩私は中々眠る事が出来無かったので少し部屋から出ることにしました。廊下を歩いていると威風様の部屋から雫威弧様と愛し合って居る行為をする声が聞こえてきました。私は聞いてしまった罪悪感と胸の痛みから、逃げる様に庭へ行きました。
するとそこには辺り1面に綺麗に咲き誇る彼岸花が広がってましたが、そこに一輪。孤独に咲く金襴紫蘇がありました。
私はその花を見た途端に堪えていた涙と共に自分の叶うはずが無い無謀な恋を流しました。
…私の恋愛対象は男女両方なのでございますよ。
そう心の中で想っていた赤髪の少年
その目からは留めなく涙が流れていた
彼岸花に混じり咲いていた金襴紫蘇は知らぬ間に風に飛ばされていて、その後に見たものは居なかったという
これは、彼岸花の季節に隠れるように起きていた一人の少年の切ない恋の物語。
「威風様、ずっとお慕いしておりました__」
猫ヶ城の彼岸花 end
好評であれば続編として青桃のおまけと赤白書くかも…?
コメント
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今回も神作すぎた! 古風(?)な感じで完全に第三者の立場(?)のノベルすっごい珍しくてめっちゃ引き込まれた! てかないふがお互い愛してんのはすごい尊いんだけど、おんなじくらいりうちゃん切なすぎんか!? 妙な視線を向けた初兎ちゃんはまさかりうちゃんのことが…?とか登場人物の色んな思いが沢山あってめちゃ楽しかった! 出来れば続きを書いてください!