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桜咲かな
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第50話
それからというものも、木陰で待っていると他の聖騎士が馬で駆けつけた。僕たちはその馬の後ろに乗せて貰った。
街に被害は殆ど無かったらしい。セルフは武力には力を然程いれてないが、交易の盛んな所で、色々と物は取り揃っているから何とかなったのだろう。
一つ気になってたけど、妖精というか、黄色く光る拳一個分の何かが周りを舞っている。
うん。なにこれ。
流石に、他の人に聞くのはな……というか、昔からいなかったっけ?
僕は二十年くらい前の記憶を漁りながら、この光みたいなやつを見つめていた。
よく考えるとずっと周りで、ぷわぷわ浮いてたかもしれない。でも、光が異様に強くなった気がする。
……力が強くなってるのかな? 知らんけど。
僕の後ろを走っていたアニカが「ロルフさん。何か引っかかる事でも……」と少し震えてる不安気な声を発した。
「あ、違うんです。ルミナの長が倒れたって聞いて……昔からの仲で、気になっただけです。敵の事はもう、大丈夫です。外国の王族でも脅さないと追いつけないですよ」
僕はもう一度『大丈夫』と言うようにアニカを見て頷いた。
小さな街に泊まって、少し休んだ後、一、二個の街に寄ってから夕暮れ頃、ルミナに着いた。
その間は族の気配もせず、安全だった。
僕は少し警戒しながら、二人の家に向かった。公務が無い時はそこにいるはず。
相変わらず、二人は同居。それも、ビタリは一人暮らしができないのだ。
……まぁ、一人だと、無理をする。それが正しい言い方だろうけど。
僕は花壇の水やりをやっていたレーナに話しかけた。
「レーナ。ビタ――」と言いかけた所で「わぁっ! って、ロルフに姫様。本当、驚かさないでください……」と肩をビクッとしながらため息をつかれた。
いや、隠密魔法が使えるなら気配くらい分かっただろ……本当に驚いてるし。
「噂は聞いてるみたいですね。倒れてから、意識が戻ったけど、体調が全然で……そっちも、かなり警戒してるけど、何があったのですか?」
あの、ビタリの体調が……一体、何があったんだ……?
「こっちは、色々と追われてて……撒けたけど気配消しの魔法が使われてたら多分、分からない」
僕は首を振りながらため息交じりに言った。
「……あの、貴女は……」
「あ、申し遅れました。ルミナの長の妹。レーナと申します。以後お見知りおきを……って、私たち昔、会った事があるんですよ」
「え?」
「十五年くらい前だったかな。柔らかくなってくれて、本当、良かったです」
レーナはアニカに思いっ切り抱きついた。
そんな事、近くに居た人しか知らないからな……
大丈夫。本物。
僕は唇を噛みながら二人を見つめた。
✡
私は、レーナさんのお宅にお邪魔させていただく事になった。
綺麗で整理整頓がちゃんとしている。広くて、大きな剣や、槍が棚に飾られていた。
「おかけになってください」
そう言って、私たちを案内して、慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。
柑橘のいい香り……
「夜分遅くにごめん」
「大丈夫。二人とも、お疲れの中、大丈夫?」
私たちが頷くとレーナさんもホッとした表情をした。
レーナさんが口を開こうとしたら、奥の扉からレーナさんと容姿が似ている十代後半の男性が重い足取りで来た。
「ロルフさん。それに姫様まで。いっ……」
そこまで言うとその人は頭を抑えて壁に寄りかかった。
この人がさっき言っていた、ビタリさんって人かな……?
でも、分からないしな……
レーナさんがハッとした顔で振り向いた。
「ビタリ! 何で立ち上がってるの。だから、いつまでも治らないんでしょう」
その人の中に黒いモヤが見えた。ロルフさんはその人を一目見ると駆け寄った。
「黒いモヤモヤがある……?」
私も首を傾げながらその人に近づいた。
「ビタリ。そんなに焦っちゃいけないよ。それにこれは休んで治るようなものでは無い」
ロルフさんがその人に真剣な眼差しを送って言っている。
というか、並ぶと全然、体格が違う。まぁ、その人も、体格がいいのだろうけど、背が高くて筋肉がついてて太いというより、細い感じがする。
ロルフさんは、華奢で、私より少し背が低くて、可愛らしいイメージだけど、強くて、本音を隠してて、過保護な人。そして、あの侍女と同じで、光って見える。
「え?」
「とりあえず、部屋に入っていい? 姫様は、レーナと話しててください」
私はロルフさんを見て頷いた。すると、ロルフさんも『ありがとう』というように頷き返してくれた。
「はい。でも、何っ……」
「ほらほら」
そう言うとロルフさんはその人の体を支えながら奥へ入っていった。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第51話、読み終わりました。 ロルフさんがビタリの体調を一目見て「黒いモヤモヤがある」って言ったところ、すごく印象に残りました。それまで飄々としてたのに、急に真剣な眼差しになるギャップがいい…。アニカが「光って見える」って言う描写も、なんだか切なくて、見えないものを見ようとしてる感じが伝わってきました。 レーナが出てきたときの「柔らかくなってくれて良かった」って台詞、過去を知ってる人の言葉って重みがありますね。続き、気になります🌙