《王宮内でも数名の衛兵しか知らない
女王ロカの寝室にて》
「ねずみ一匹入れないで頂戴、もし間者が
入ろうものならあなた達は即刻処刑よ。」
見張りの衛兵二人にそう言って女王ロカと
ナイト•クラウンはロカの部屋に入った。
その後ロカ達二人は部屋の隠し通路を通り
秘密の地下室へ入った。
辺りを警戒し、間者がいないか確認したあと。
ふわりとあくびをして女王ロカが言った。
「….. ここでは誰にも話は聞かれないわ。
さあ、探偵ナイトクラウン?さっきのお茶会で 何か分かったかしら?」
【推理タイム8】
ナイトクラウンは三秒で思考をまとめることにした。
少しでも女王ロカを待たせ機嫌を損ねるとロカに処刑されかねないからだ。
(とりあえず今の状況を整理しやしょう。)
ナイト•クラウンは茶会でとった脳内の推理
メモをざっくりまとめた。
まずは 【バルザード十二世毒殺事件】の実行犯の 容疑者マカロンについて整理した。
【実行犯に関するナイト•クラウンの推理】
•実行犯はビショップ•マカロンでほぼ確定
《理由:国中一の舌と医療知識をもつマカロンが毒入りコーヒーの毒味をし、異変に気付かない筈がないから。》
•マカロンはバルザード十二世のコーヒーに
何らかの方法で毒を仕込んだ。そして毒入り
コーヒーを飲んでも死ななかった。それは
十中八九医療的知識を用いたものである。
・そしてマカロンは女王ロカの拷問に近い
尋問に耐え自白しなかった。これもマカロンの 医療知識を利用したのではなかろうか?
(どこに毒を仕込んだか?どうやって女王に
それを悟らせなかったか?)
ナイト•クラウンは女王ロカから聞いた 当時の状況を頭の中で再現した。
女王ロカの尋問によりマカロンの身体はすみからすみまで調べられたそうだ。
(….本当にそうですかぃ?どこかに盲点があったとか。例えば….体液とかぁ?現場の状況から察するに….唾液。)
そこでナイト•クラウンは思い出した。
異国の海に毒を後天的に獲得する魚がいるという話を風の噂で聞いたことがある、と。
(たしかぁ、フグって言ったかなぁ。フグのように毎日微量の毒を摂り続ければ…..
あるいは …..。)
そして、どうやって女王ロカの拷問に耐えたか 。
(医療、薬、痛み止めぇ……なんかどっかで 聞いたことがありやすねぇ。例えば…..
そうだ思い出した!!……..オキシトシン。
脳の視床下部で合成され下垂体後葉から
分泌されるホルモン…..!!!
痛みをやわらげ、不安やストレスを軽減する
ホルモン…..!!! これを何らかの食材や薬で摂取し、痛みに対する耐性を得ていたとしたら…….!!!)
ナイト•クラウンは口を開いた。
「女王陛下、マカロンはいでででで。」
ナイト•クラウンは女王ロカにほっぺを
おもいっきり引っ張られた。
「何三分間も黙ってるのかしら?
温厚な私でもさすがにぶちギレるわよ?」
【ナイト•クラウンの推理、終了】
ナイト•クラウンのほっぺを離し、あらためてナイト•クラウンの推理を聞き終えた。
ロカは眉をしかめ、額に手を当てた。
(迂闊だった….!!!あの時マカロンの爪をはぎ、歯をへし折り全裸の状態でムチ打ちするだけじゃなく唾液や内臓を検査していれば……!!!)
ロカは自分の詰めの甘さを呪った。
もしナイト•クラウンの推理が正しければ
事件当日にビショップ•マカロンの唾液を
とり、内臓を摘出し検査をすれば、ロカは
すぐにでもマカロンを処刑できただろう。
しかしロカは女王であって医者ではなかった。
そのためロカは医学的知識の差でマカロンに 出し抜かれたのだった。
「それにしても、オキシトシンで私の尋問に
耐えるのはともかく、体に毒を貯め続けて
唾液を毒にするなんてこと、人間に可能なの
かしら?」
ロカはナイト•クラウンに尋ねた。
ナイト•クラウンは少し悩んだ。
(うーん、私はマカロンみたいな食や医学の
プロじゃありやせんからねぇ…..。)
少し悩んだ後
「とりあえず、民を使って実験してみるのは
どうですかい?」
と女王ロカに提案した。ロカは
「悪くない提案だけど、時間がかかりすぎる
わね。それよりもマカロンを再び尋問して
無理やり吐かせるのが手っ取り早いわ。」
と言ってふわりとあくびをしてみせた。
【推理タイム9】
(それにしてもぉ、誰にも悟られないように
長い間微量の毒を摂取し続け、バルザード十二世を殺害したとすりゃぁ、マカロンは随分
長い間殺意を隠し、バルザードを処刑したことになる。とてつもない殺意でさぁねぇ。)
ナイト•クラウンは女王ロカとの会話を続け
ながらマカロンの異様な殺意に疑問を持った。
(これだけ強烈な殺意を持っていたなら、
毒殺計画もマカロンが企てた可能性すら
ありやすよぉ。となれば気になるのは動機
だぁ。ベタなのは肉親や恋人を殺された、
とかですかねぇ。)
そして、ナイト•クラウンは
女王ロカに尋ねた。
「女王陛下、マカロンがバルザード十二世に
恨まれる理由に何か心あたりはありやすかぃ?例えばバルザード十二世に肉親を処刑されたとか。」
「…….肉親の線はないはね。マカロンは元奴隷で先先代のバルザード十一世に料理の腕を 買われるまで天涯孤独だったそうよ。
それにマカロンは生まれつき子供を
産めない身体だったの。だからマカロンに
家族はいないわ。」
「そしたらパワハラですかねぇ。バルザード
十二世に毎日のようにパワハラを受けてた
とか?」
「…….それも考えにくいわね。夫はマカロンのことをそれはそれは寵愛してたわ。今まで王の元で独占されていたマカロンの料理レシピを世に広め、マカロンの料理人としての栄誉を確個たるものにしたぐらいにね。私から見ても二人の間には強い信頼関係と絆があるのを感じて いたわ。」
「うーんじゃあ痴情のもつれとかですか
ねぇ。」
「あまり私をなめないで頂戴、夫に一度でも
色目を使った女は皆私が処刑してきたわ。あの二人の関係はそんなんじゃなかったわよ。
どっちかと言うとあの二人は ……親子に近い関係だったわね。」
しばらく考えこんだ後、
女王ロカはふわりとあくびをした。
(まあいい、動機など尋問で吐かせれば
済むだけだ。)
ロカはそう思い、如何にしてマカロンを脅し
拷問し、口を割らせるかを考えていた。
一方ナイト•クラウンは
(肉親の仇でもない、パワハラでも痴情のもつれでもない……何だ?何がマカロンにそこまでの殺意を抱かせたんでしょうねぇ?この事件の真相を説くには彼女に話を聞く必要がありやすねぇ。)
と考え頭の推理メモにこう書き足した。
【推理タイム9 まとめ】
•マカロンが実行犯だと仮定して動機は
なにか?その蓄積された殺意の元は何か?
•真相を知るためにはマカロンの話を聞く必要がある。他の容疑者三人についても一人一人 個別に事情聴取をするべきだ。
【推理タイム9 終了】
「女王陛下、近い内に容疑者四人に事情聴取を 取る機会を与えてくだせぇ。」
ナイト•クラウンが女王ロカに提案した。
「あまり私をなめないで頂戴、そんな時間。
今日中に手配して明日には全員に事情聴取する時間をもうけさせるわよ。」
そう言ってふわりとあくびをした。
「今日は私が用意したこの秘密の地下室で休み なさい。我が忠実なる騎士ナイト•クラウン。明日は死にものぐるいで働いてもらうわよ。」
そういって女王ロカはナイト•クラウンに
背を向け地下室から去っていった。
(次回、第五話
女王ロカの凄惨なるモーニングルーティン)
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