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【あらすじ】
最愛の夫であるバルザード十二世を毒殺した
犯人とその計画を企てた真犯人を探る
女王ロカ。
ロカは夫バルザード十二世と過ごした寝室で
つかの間の休息をとっていた。
《女王ロカの寝室にて》
探偵ナイト•クラウンと離れ、ようやく一人になった女王ロカ。
ロカは部屋の壁や床やベッドの隙間や天井に間者がいないことを確認すると シャワーも浴びずにドカッとベッドの上に横たわった。
ロカは誰にも決して弱みを見せない女性だった。
ロカが唯一弱みを見せることが 出来た人間はただ一人、亡くなった夫である バルザード十二世だけだった。
ロカは寝室の枕の匂いを嗅いだ。
枕に染み着いた夫の匂いは 6年の時間が経ちとっくのとうに 風化していた。
ロカは枕に顔をうずくめた。
それはロカが 寝る前に必ず行う癖であった。
ロカはしばらく枕にうずくまった。
ロカの涙はとっくの昔に枯れていた。
(バル、私やっと貴方の仇が取れそうよ。)
ロカは枕に爪が食い込むほど強く握りしめた。
(国王の食事に唾を吐き、毒を盛った不貞の輩に、必ず死よりも辛い罰を与えてあげるわ。)
強く、強く、枕を握りしめた。
そしてロカはごろんと寝転がりふわりと
あくびをした。
(おやすみなさい、バル。どうか地獄で
見守っていてね。)
こうしてロカは浅い眠りについた。
【ロカの夢の中にて】
ロカは浅い眠りの中、バルザード十二世に
自分が国の皇太子だと告げられ
婚約指輪をもらった時の夢を見ていた。
「…….いいの?」
プロポーズを受け、ロカは涙を流した。
だがそれは、決して喜びの涙ではなかった。
「本当にに私でいいの?」
【回想、幼い子供の頬がごつごつした男の手で 殴られる音】
ロカは異国の地で生まれ 物心ついた時から義母に娼婦として 働かされていた。
ロカとは異国の地の言葉で「娼婦」という
意味だった。
これはロカの産みの母親を ひどく憎んでいた義母があてつけのために ロカにつけた名前だった。
「……僕は、王の役目は民を幸せにする
ことだと思っている。」
バルザード十二世はロカの手を握り
まっすぐロカの目を見つめた。
「そして僕の役目は、君を幸せにすることだ。」
迷いのない目。
ロカはバルザード十二世の目を見つめ、バルザード十二世の真意を読み取ろうとした。
バルザード十二世の言葉に、嘘偽りはないように感じられた。
婚約指輪をはめられたロカは、バルザード
十二世に慈しむように頬を撫でられた。
こんな風に誰かに涙を拭ってもらったのは
この時が始めてだった。
ロカはこの夢にいつまでも浸っていたかった。
目が覚め、ふわりとあくびをしたロカは
従者を呼び、朝の湯浴みの準備をさせた。
《秘密の大浴室にて》
王宮の中でもごく一部の人間しか入ることが
出来ないとてつもなく広い秘密の浴室。
………その正体は
姫と、一部の拷問官のみが知る秘密の拷問部屋であった。
麻布の覆面で顔を覆った拷問官キャッスリング は手際良く五人の全裸の少女の入った
檻を運んできた。
少女はまるで猛禽類に襲われる直前の雛の
ように、皆ぶるぶると震えていた。
『悪政のロカは若返りのために処女を殺し
血を飲んでいる。』
シトラス王国の国民達はそういって悪政のロカ をひどく恐れていた。
しかしロカは決して迷信などを信じる性格ではない。
ロカのどす黒い真意は別にある。
「ごきげんよう、かわいらしいお嬢さん達。
私はシトラス王国の女王ロカよ。」
【ピィピイピィピイ鳴く少女達の声】
その言葉を聞き5人の少女達は雛のように口々に命乞いをした。
ロカはふわりとあくびをして。
「王宮内での暮らしはひどく退屈でね。何か
面白い噂話を知らないかしら?面白い噂話を
してくれた子には、特別に慈悲を与えてあげる。」
そう言ってロカはまるで聖母のような慈愛に
満ちた作り笑いをしてみせた。
【尋問タイム】
ロカはこの六年間、事件の真相を追うための
情報を探し続けていた。
この尋問も情報収集の一環であった。
5人の少女達はまるで猛禽類に襲われる直前の雛のように一斉に、叫ぶように、自らの知る噂話を話しだした。
「あらあら、いっぺんに話すと分からないわ。 まずは一番左の貴女から話しなさい。」
当然、嘘をついたりふざけた噂を話す輩は
即刻拷問し、処刑する腹積もりだった。
そうやってロカは5人の少女達の噂話をあらかた聞き終えた後、少しの間、頭を整理した。
(ふむ、食の聖母マカロンの新作スイーツ
レシピだの王は実は男食家だのとくだらない
噂ばかりね。まあでも……….
その中でいくつか有益そうな情報もいくつか
あった。)
女王は頭の中で有益そうな情報
三つをピックアップしてみせた。
《国の端の山奥で新種の
毒キノコが見つけられた。》
《城下町の路地裏で国王陛下の
絵画と瓜二つの男を見かけた。》
《兵隊である父から年々軍でクーデターを
起こそうとする人達の声が広がってると
聞いた。》
少女達から話を聞き終えたロカは少女達の頭
を順番に優しく撫でた。
その愛撫は先ほどまで 死の恐怖に怯えていた少女達が落ち着きを取り戻しとろんと蕩けた表情を見せるほど 心地よいものであった。
女王が手を止め、高らかに右手で指パッチンをした。
【鋭い剣が女の肉を貫く音、それが五回】
すると麻布を被った拷問官キャッスリングは
少女達の入っている檻の合間をぬって 極めて正確に、そして迅速に少女5人の心臓を レイピアで貫いた。
五人の少女達は自分の身に何が起こったか分からない。
と言った様子で、四十秒もせず 檻の中で生き絶えた。
王宮内において女王の右手の指パッチンが
なす意味は
『慈悲を与え、なるべく苦しめずに楽に殺せ』
というサインであった。
その後ロカは拷問官キャッスリングに手際良く 少女達の死体の内臓やら糞やらを丁寧に丁寧に 、魚を捌く時のように丁寧に取り除かせた後、 浴槽の上に吊るされた特殊な拷問器具を使い 血飛沫のシャワーを浴びた。
そして、血だまりの中でロカはふわり。
とあくびをした。
こうして朝のルーティンを終え、まどろみの
中にいたロカは完全に鳴りを潜め、ロカは
『悪政のロカ』として、いかに実行犯 ビショップ•マカロンを尋問するかを ふわりとあくびしながら頭の中で 思案していた。
《凄惨なるモーニングルーティン 完》
《次回 探偵ナイト•クラウンの暗躍》