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#執着
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桜子と塁が再会した3年後
―大阪 ミナミ―
あの懇願をした夜から桜子は塁とそれっきり会う事はなかった。
“もっとええ男に抱かれる女になれ”
あの時の塁の言葉が頭にこびりついたまま3年が過ぎた…
夜の世界で働いていると生々しい男女のいざこざや闇を目の当たりにする事が多く、誰かを心から好きになることが段々と出来なくなっていく。
それと同時に塁への思いは逆に増すばかり。
“お前と再会せんかったらこんな事せんで済んどった…”
まるで僅かな望みが残されてるかのようなあんな言葉を最後に残して去っていくなんてつくづく悪い男だ…
あの日から塁に見合うような強い女になりたくて。そして、一度、足を突っ込んだこの夜の世界にとことんどっぷり浸かって極めてやろうと決心し、自分のお店を持ちたいと思うようになった。 そしてあれから必死に働きお金を溜め、今年、遂に自分のお店をオープンさせた。
もしかしたら…
何かの縁で塁もこの店に来てくれるかもしれん…。 そんな淡い期待を抱いて…毎日なんとか頑張っている。
「本間先生、今日もお越しいただいてありがとうございました。またお待ちしております。」
馴染みの客のお見送りに出た桜子。
「えー?ママぁ、今夜はこの後2人きりで付き合うてくれるって約束やったやろぉ?」
「え?そんな約束してましたぁ?先生、今日はえらいお酒進んではったから、違うお店の子とした約束と勘違いしてるんと違います?」
「もーう! またそんなん言うて約束はぐらかすー。 ママこの前約束してたでぇ?俺しっかり覚えてるんやからぁ!」
「そう言われても今日はまだお店にお客様いらっしゃいますし…。」
「なんやぁ!俺ここの店にいくら使うてると思とるんや?ちょっとくらい俺にサービスしてくれてもええんと違うか?今晩だけやねんから?そんな減るもんでもないし、な…?」
ぐい…!
「ちょっと先生!」
相当悪酔いしてるのか教授は桜子の腕を強引に引っ張り出した。
「今晩だけやないかぁー、夜の仕事してたらこんな事くらい慣れたもんやろ?別に一回くらいええやないか…」
そこへ革靴でアスファルトを踏みしめる重たい音が近付いてきて…止まった…
「かっこ悪い遊び方すなおっさん。」
ん?この声は…
聞き覚えのあるそのドスの効いた声の方へ振り返る。
「あぁ? なんやとぉ?誰に向かって口聞いて……」
教授は眉間にしわを寄せて不機嫌な顔をして振り返り…体を固まらせた。
「これはこれは先生、 えらい今日はご機嫌やなぁ?そやけど、わしのツレに手出したらそれなりに高うつくでえ、それでもええんでっか?」
そこにはあの特注のスーツのズボンのポケットに手を入れ、鋭い眼光で教授を睨みつける塁が立っていた。
「あ…………。」
「え?あ!か、金矢はんでしたかぁ〜! は…ははは!こりゃ失敬!」
相手が塁だと分かった途端、急に態度が変わった教授…顔見知り?
「……夜の店で遊ぶんはあんたの勝手やけど、あんたも大人の男なんやったらもっと気前よう遊ばな…… 終いに痛い目見るで。」
「ほんま!言うとおり!ちょっと今日は呑みすぎたかなぁ…。はは、ははは…! ママ!えらい迷惑かけて申し訳なかったな!ほな、わしはこれで帰らせてもらいますぅ。金矢はん!ほんますんませんでした…!」
「謝るような事、最初からすな…。 あぁ、そやけどまた銭に困るような事があったらいつでも用立てまっせ。」
「い、いやぁ!それだけはもうよろしいわ! ほな失礼っ!」
そう言ってさっきまでの勢いはどこへやら…。足早に去っていった教授。
贔屓にしてもらっているお客様とはいえ、もう二度とお店に来てもらいたくない。
私が会いに来てもらいたいのは…
「塁……、久しぶりやね…あれから…。」
塁との思わぬ再会。
少し小っ恥ずかしいような、嬉しいような…でも不思議と気まずさはなかった。
「おう…。米原、久しぶりやのう。」
「まさかこんなとこで会えるやなんて。」
「そやから言うたやろ、ミナミの街は狭いからまた会えるて。」
「ほんまに世間は狭いもんやね 笑。 悪い事できひんわ…。」
「ふっ…。あのおっさんわしのとこの昔の客なんや。 ああいう威張り散らす奴に限って人に知られたくない弱みぎょーさん持っとるもんや…。」
「そ、そうやったんや… 。でも馴染のお客様やから無下には出来ひんくて…。困ってたからほんまに助かったわ。 ありがとう。」
「ああいうややこしい客は銭絞れるだけ絞り取ってから願い下げたったらええんや。」
「えぇ…塁、相変わらず鬼みたいに厳しいね…。」
「鬼かて役に立つこともあるっちゅうもんや。」
「確かに…笑」
「まだ仕事中やろ。店はよ戻った方がええんと違うか?」
「うん。私あれから頑張って働いて自分のお店開いてん。少しくらいやったら店は若い子らに任せてられるから大丈夫。」
「ほー、自分の店持ったんか。 そらええなぁ、また資金繰りに困ったらいつでも融通するで。」
「えぇ…悪いけど塁のとこからお金借りるのだけはごめんやわ…笑」
「へー、3年前”私に1000万貸せ”言うて喚いてたんはどこの誰やったかいのう?」
「ちょっと!あの時の事はもう終わったことやんか… 人に聞かれたらどうするんよ。」
「その頃に比べたら強なったんちゃうか?米原。」
「本当?そう見える!?」
「ほんのちょっとだけな。」
「またそうやって意地悪な言い方するんやから!なぁ、積もる話もあるしよかったらお店でゆっくりしていかへん?サービスするし。」
「ゆっくりしたいところやけどわしも仕事がある。」
「そっか、残念…。」
「まぁ安生気張って、店、繁盛させろよ。ほな。」
そう言ってその場を立ち去ろうとする塁
正直、また会えなくなるのが辛くて仕方ない… あの孤独感がまた蘇ってしまった。
「 あ!塁、ちょっと待って!」
咄嗟に私は塁を引き留めた…
3年前とまた同じ事をしてしまっている自分が悲しい…。
「なんや?」
「あの…実はお金融通してくれるとこ探してるお客様がいて。 塁…一回その人の話だけでも聞いてあげてくれへん?」
「あぁ…それは別に構わへんけど。その客は今店におるんか? 」
「いや、今日はお店には来てないから…。そのお客さんに一回、話だけでも聞きに会いに行ってあげてくれへん?」
「まぁ…しゃあないな。特別に話聞きに行ったる。」
「ありがとう!お客さんに伝えとくわ!あ、ちょっと待ってて。」
………
………
「はい、これ!」
桜子は急いでそのお客の連絡先と住所を書き、塁に手渡した。
「……ここに話聞きに行ったらええんやな?」
「うん、また時間ある時でいいから。」
「わかった。いっぺんわしから連絡入れるて、その客が来たら伝えといてくれ。ほな…。」
「うん!塁、ほんま色々ありがとうね。」
そして、塁はミナミの街へ消えて行った。
でも…私はこの時嘘をついた
お金を融通してほしいお客さんなんて… 実はおらんかった。
ただ塁と2人だけで会いたい…。その一心でまた嘘をついてしまった。
さっき教えたのは私の家の住所。
連絡先も私の番号だ。
塁に会うとどうしても自分の感情がコントロール出来なくなってしまう。
私は塁じゃないとダメ…
どうしても………
コメント
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みぅです🥀 第8話、読み終わりました……。 桜子、あれからちゃんと自分の足で立ち始めてたんだね。自分のお店を持って、夜の世界で生き抜く女になって。でもあの言葉がずっと心に刺さったままで、会いたくても会えないまま3年も経ってるの、考えるだけで胸がぎゅってなるよ。 再会シーン、塁があの教授を一発で黙らせるところ、痺れた……「かっこ悪い遊び方すなおっさん」って、もう一言で空気変えちゃう感じが塁らしい。でも桜子が最後にまた嘘をついて自分の住所を渡しちゃうところ、読んでて「ああ……」ってなった。また同じことを繰り返してる自分を悲しく思ってるのに、塁じゃないとダメなんだって。その執着が、すごく痛くて、でも美しいなって思った……。 次、塁は桜子の家に行くのかな。ドキドキする。続きが待ちきれない🌙