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「青信号だ」
下り道で重くしたペダルをゆっくり漕ぎだす。
冬のせいか頬に風があたると思わず口から 寒い のに文字が出て来る。
信号を渡りきった。
先ほどまで辛ったした冬の寒気持ちい風がふと一瞬そこだけ何かあるような生暖かさが漂う。
「…気のせいか?」
構ってられない、いちいち考えるのはなんと無く癪で面倒臭かったから忘れとこうとおもった。
家に帰ると塾の準備をする。
携帯と財布と勉強用具。
鍵と自転車の鍵を持って外に出る。
扉を開けると暖房で火照った体にカラッとした気持ち良い風が頬を撫でる。
ドアが閉まるきわに聞こえてくる家族の「いってらっしゃい」。
また会う為のおまじない、何もなくまた会えるようにする為のおまじない。
ショッピングモールの中の一角にある僕の通っている個別教室の塾。
お気に入りのポケモナのピカチョーをモチーフにしたイヤフォンをつけて高校から出された課題に黙々と取り組む。
薪の焼ける焚火の音と自分のシャーペンの書く音が微かに混じり合ってとても心地の良い空間を創り出している。いつまでも集中してしまいそうだ。と思いながら時間に注意して勉強していると、突然イヤフォンを片方取られる。
「集中しすぎだよ。
今18:00だけど帰らなくていいの?」
時計を見るすると本当にそんなに時間が経っていた。
塾で知り合った友達に感謝を述べてはそそくさと帰りの準備をしだす、そんな俺を横目にその子は席については「あ」と声を漏らす。驚いて「何だよ」と聞くとその子はニヤけながら「知りたいか」と頬ずえをついて聞いてくる。が、返事をガン無視で一方的に話し始めてしまった。
内容を聞いていると実に奇怪な内容だった。
何でもこれくらいの時間に夜中に大学生くらいの男が声をかけて来る。
しばらく話しかけて質問し気にいったら疲れが全て取れてスッキリするだけ、気に入られなかったら意識不明の状態で手には5円玉が握られて発見されるらしい。
「何でそんなこと僕に聞かせた。」
「だって、今にも倒れそうな顔してんじゃん。」
そう言われるとこの時は自分らしくないが少しイラッときてしまった。
「ご忠告どうも」と端的に伝えるとその場を離れ駐輪場に行きチャリのロックを解除した後に走り出す。
しばらく走っていると雨が降ってきた。雨足が強くなる前に帰ろうとおもったが、弱り果てた小さい子犬のような生き物が倒れているのを見てしまった。
見過ごすのも何となく嫌だったので雨が当たらないような場所に移動させようと公園の中に入りチャリから降りるといきなりザアザアと降り始めた。降り始めた雨にも腹立たしいが何よりそんなきっかけを作ったこの子犬に無性にイラついてその場に置いていこうと思ったがブルブルと震えてつぶらな瞳でこちらを見て来る彼だか彼女だかわからない奴を大声上げて叱る気は到底なれなかった。
小一時間すると雨がだんだん止んできた。
僕は流石にこんなに遅れてはいけないと思いそいつに持った板が厚くて脱いでいたネックヲーマーを巻いてさっさとその場から逃げるように走りっさった。