『この続きは、来世でまた』
〜1章〜 「私」
生まれた頃から全てが完璧だった。
運動、勉強、周りからへの信頼。全てが完璧だった。けど、私自身何もかもが
つまらなかった。
紫月紅(しげつぐ)家の長女として生まれた私、麗奈(れいな)は最高傑作として育てられた。毎日が苦痛ばかりで体が壊れそうなくらい苦しかった。そんなある日お父様に呼び出された。「麗奈。お前は私達。いいや、私だけの最高傑作だ。いいか?お前は感情をもつな。嬉しいも思わない。苦しいも悲しいも怒りも全て捨てろ。」私はその瞬間なにかの糸が切れた瞬間だった。それから私はなにも感情をもたず生きてきた。周りからは『無の最高傑作』と言われたこともあった。少しでも感情をもてば酷い体罰をかけられ、涙をだしたらもっと酷いものもあった。
それから数年が経ち私は完全完璧の無になった。周りからの信頼も上がると同時にプレッシャーも上がった。親にひかれたレールただ歩くだけの人生。なにもかもがつまらなかった。私は決意した。もう終わりにしようと。レールを無くしてやると決意した。暗く静かな満月の夜。私は屋上に上がった。屋上に着くと、ある女の子が座っていた。顔には凄いほどの絆創膏が貼られており、腕や足には包帯と打撲があった。私は驚きもせず気にすることも無く靴を脱ぎ飛び降りようとする。すると誰かの声とともに手を掴まれた。
〜2章〜 「君」
生まれた頃から全てが失敗作だった。
運動、勉強、周りからへの信頼。全てが失敗作だった。けど、私自身何もかもが
悔しかった。
黄月紅(きげつぐ)家の次女として生まれた私、星花(せいか)は失敗作として育てられた。毎日が苦痛ばかりで体が壊れそうなくらい苦しかった。そんなある日お父様に呼び出された。「星花。お前は私達。の黄月紅家の恥だ。いいか?お前はもういらない。姉と違ってなにもかもが失敗作だ。」私はその瞬間なにかの糸が切れた瞬間だった。それから私は失敗作として生きた。周りからは『恥の失敗作』と言われたこともあった。少しでも発言すると暴力をふるわれ、涙をだしたらもっと酷いものもあった。それから数年が経ち私は完全完璧の失敗作になった。周りからの信頼も下がると同時に他の一族からのいじめ、姉との差別も酷くなった。親に捨てられたお零れを食べて必死に這い蹲るようなだけの人生。私は決意した。もう終わりにしようと。こんなお零れを食べて這い蹲る人生なんて終わりにしようと決意した。暗く静かな満月の夜。私は屋上に上がった。屋上に着くとそこには輝き眩しい星が数多くあった。「美しい。」始めての感情だった。この心がきゅぅっと締め付けられるような感情。ここで終わればもうこんな感情は味わえられない。気づけば私は屋上の床に座り込んでいた。その日から私は毎晩屋上に上がり星を見るようになった。そんなある日ある女の子がやってきた。顔は整っており、まるで氷姫のようだった。冷たく透き通った肌に綺麗なまるで夜空かのような濁った青い瞳を持っていた。こんな夜遅くに人が居るのにもかかわらず、無のままだった。それどころか靴を脱ぎ始めた。そして飛び降りようとし始めた。私は「待ってっ!!」と声を出してしまった。気づけばその子の手を掴んでいる自分がいた。
〜3章〜 「感情」
手を掴まれた私は変わらず無のままだった。その子は汗を垂らしており必死のようだった。数秒後手を離された。
「少し話そうよ」
訳も分からずその子の隣座り込む。
「私、黄月紅家の星花っ!!よろしくねっ。」
口調は思ったよりも明るく元気だった。
「ねぇ、なんでさっき飛び降りようとしたの?」私は話さなかった。話す価値もないと判断したから。
「ねぇってばぁ〜!」しつこい。うるさいし。もう今日は諦めようかと帰ろうとした瞬間、その子が口をひらいた。
「私ね、見ての通り失敗作なんだ。きっと君と違ってね。」急に喋り始めた。帰らせる気ゼロだ。そのまま喋り続ける。
「私ね星が好きなんだ。」
「なんで。」気づけば声に出していた。その子は顔をパァっと明るくさせ答える。
「美しいから」ニコッと笑うその先はなにか物足りないような目をしていた。
「っで〜、本題に戻るけど、なんで飛び降りようとしたの〜?」本当にしつこい。私は仕方なく答える。
「親にひかれたレールを歩くのが嫌になったから。」
「へぇ〜。私と真反対だね。っていうかホントにずっと無じゃん。」
「お父様からの命令だから。」
「なるほどねぇ〜。」
静かな夜。どうでもいい質問に仕方なく答える。
「ねっ!ちょっとでいいからさ少し笑ってみてよっ」
「はぁ?」
「だーかーらー、笑ってみてって!」
さっきの話を聞いた後によくそんなことが言えるなと思う。こいつ頭がおかしい。
「無理。」
「えぇ〜。ちょっとでいいじゃんかぁ〜」
「無理。」しつこい。
「ちょっとだけ〜」
「無理」しつこい。
「ねぇ。お願い〜」
「あぁ!もうしつこいっ!!」うるさい。ってあれ。
「プハッ!感情でたじゃん。」
あまりにも怒りの感情が久しぶりすぎて頭が困惑する。
「ねね。名前は?」
「紫月紅麗奈」また気づけば声に出していた。
「じゃぁ、れいっ!れいは私にどれくらい時間をくれる?」
「1秒たりともあげたくない。」これは本音。
「ひどっ!じゃぁ、うーん…3ヶ月!3ヶ月私にれいの時間ちょーだい!」
「どうでもいい。好きにして」
「酷いなぁ〜。れいの3ヶ月で全ての感情ださせてあげる。」優しく微笑む。
「好きにして。だけど3ヶ月ね。3ヶ月経ったら今度こそ私は終わりにするから。」つられて私も微笑む。
れいの微笑む顔が。2度目の感情。けど前のとは違う。氷のように冷たい風が私の髪を揺らす。初めての光が差し伸べたような瞬間だった。
〜4章〜 「私のはずの君の3ヶ月」
それから私は毎晩屋上に行き風花とたわいのない話をした。そして最後は必ず『おやすみ。』と言うのが日常になった。奥底に眠っていた私の感情がどんどん起きていくことばかりだった。そんな3ヶ月経つ10日前の頃お父様からまた呼び出された。私は感情を無にして行く。
「麗奈。お前は私だけの最高傑作だ。そう。私だけの、私だけのだ。お前を10日後海外留学させようと思っている。いいな。」
「かしこまりました。お父様。」そんなことはもうどうだっていい。もう
〜5章〜 「私と君」
3ヶ月の経つ夜私は屋上へ向かった。そしていつも通り星花に会う。
「遅かったじゃん」
「知ってる。今日が最後よ。もういいわね。」
「待って。あとひとつだけ感情がでてない」そうだろうか。もう一通り感情はでたはず。
恐怖は怖い話を聞かせられ、怒りは最初のあの日に感じさせられた。最初、最初…懐かしいな〜。
ポロポロ……え、なにこれ、え、
前を向くと星花が笑っている。なんでだろう。星のように眩しく笑っている。星花が口を開いた。
「これが悲しみ。」そう言いながら私を優しく身体包むように抱きしめてくれる。
「辛い時、悲しい時は無理せず泣いてもいいんだよ。『どうでもいい』なんて思わないで、今、自分がなんて思っているか気持ちを殺さなくてもいいんだよ。誰だって1度は泣きたい時はあるんだもん。」星花も泣きながら微笑む。まるで暗闇のなかでひとつの星が私に手をさし伸ばすように。星花の目はどこか何かを語っているように見えた。
麗奈は立ち上がりひとつに結んでいる紫がかった綺麗な癖のない黒い髪をほどく。空を見上げながら靴を脱ぎフェンスに寄ると立ち止まり私の方へ向く。美しい。麗奈が見せてくれる世界は全てが美しいかった。そして麗奈が涙を零し口を開く。
そう言い麗奈は飛び降りる。
私は無なんかじゃない。1人の人間だ。
私は不幸せなんかじゃない。
本当に幸せだった。この三ヶ月間。
神様。また来世では……
髪と涙が風で上へ上がっていくのがわかる。
誰かが私を抱きしめた。そして唇を重ねる。
暖かくて優しい。
星花。星花だ。なんだろう。この気持ち。心がきゅぅっとなる感情。
「ねぇ。星花、この感情はなんな「れい。来世ではさ、普通に生きよ。普通にご飯食べて、普通に遊んで、放課後には一緒に勉強して……『また明日』なんか言っちゃってっ!!……だから、ね?」「待ってこのままじゃっ!星花がっ「だからこそ私も一緒に行かないとっ」
そしてもう一度唇が重なる。
そしてもう一度こう言う。
〜6章〜 「来世で また」
「ね〜、次どこ行く〜」 「カラオケとかど〜」「え、ありじゃん」
「星(せい)も行く〜?」
慣れた手つきでスマートフォンをうつ。黄色がかった癖の着いた髪に、星のように輝く目をもつ女子高生が明るくこう言う。
「ん〜。ごめんっ。今日無理だわ」
「えー、またぁ〜。」 「せいがいなかったらまとまらないんだってぇ〜」
「どうせ今日も屋上に星 見に行くんでしょ〜」
「バレたか」
「ホント星好きだよね〜」 「せいだけにねっ」 「上手いこと言ってんじゃないよ〜」
たわいのない話をして普通に生きる日常。
「何で星好きなん〜」
「ん〜。何となくっ?」
「なんじゃそりゃ笑」
「じゃ、明日、またね。」 「バイバイ〜」
明日、また ……っか〜。なんだか懐かしい気がしなくも無い。不思議な気持ちになる。
そう思いながらいつものとこへ行く。廃墟になった大きな建物へ。昔はどこかの一族の敷地だったという噂がたっている。皆はそこで自殺した女の子2人がいるっていう噂があり、怖がっている。けど、私はそうは思わない。何故か懐かしいと思える時がある。
その廃墟に行くために走って行く。風が心地よい。
私の顔に髪の毛が触れる。
私は立ち止まる
どこかで感じた感触。振り返るとその子も振り返っている。私と同じくらいの歳だろうか。整った顔に、透き通った肌。紫がかった癖の無い髪に夜空のように濁った青い綺麗な瞳を持つ女子高生。また思う。懐かしい。その子は口を開いた
「星花……?」
これは私と君だけの物語。この続きは来世でまた。
〜後書き〜
いや〜、こんなクソ長い物語を読んでくれてホントに感謝です。百合を書くのは久しぶりで少し気持ち悪い部分もあると思いますが目をつぶってなにも見なかったことにしてください。好評だったら続編だすかもしれません。誤字脱字は気にするな。最初は今よりもちょい昔の話で、来世の方では現代です。
〜人物紹介〜
昔 紫月紅 麗奈 今 紫月白 麗
紫がかった癖の無い黒髪に夜空のように濁った青い瞳をもつ少女。普段は1つ結び。
好きな〇〇 特に無し。
昔 黄月紅 星花 今 黄星白 星
黄色がかった癖のある髪に、星のように輝いた瞳を持つ少女。普段は髪をおろしている。
好きな〇〇 星 夜空
2人は同じ一族で遠い親戚みたいなものです。
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