テラーノベル
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「まあ……愛が言うなら許してあげても良いけど……でも、次やったら蹴り飛ばすから……」
その時、機械音と共にカギが外れたかと思うと、勢いよくドアが開け放たれた。
「エロスの匂いがしますわ!」
入って来たのはアニメのような金髪をツインドリルにした女子生徒。背が高く、瞳は青く、鼻が少し高い。外国人のクオーターだろうか? こちらもなかなかの美人だが、彼女が何かとんでもない台詞を吐いたような気がして、書也は困惑する。
「エロスちゃん、相変わらずだね」
愛は笑顔で流す。
「エロス……愛、この先輩?……が留学生か外国のクオーターってのは分かるが……エロスってのはあだ名か何かなのか?」
愛に返答を求めると、エロスと名の付く金髪ツインドリル少女は速歩きで書也達に迫る。
「そう! 私がエロスですわ! そして貴方もエロス! 先ほど友美さんにラッキースケベ的な何かをしたのではありませんか! 私のツインのアンテナがそう告げていますわ!」
書也は唖然とする。エロスと呼ばれている女子生徒のツインドリルが獣の耳のようにピクピクと動いているような気がするのは気のせいなのだろうか?
「ラッキースケベとか言うな! た、ただの事故よ! 事故!」
『実際にナニがどうなりましたの?』
エロスが口を友美の耳に近づけ、小声で言う。
「言うわけないでしょ……」
友美がそっぽを向くと、愛が笑顔で前に出る。
「書也君がうっかり、仮眠フロアで胸を触っちゃったんだよ」
「ちょっと!?」
「愛、お前!? 世間体を考えろ!?」
愛の爆弾発言に二人は慌てふためき、頬を染める。
「なるほど。そういう事ですか……ところで、殿方に触れられて気持ち良かったとかありましたの!? 実際にどんな感覚でしたの!?」
エロスは胸の谷間から手帳を取り出し、目を輝かせて聞き始める。
「はぁ? わ、わたしにはそういうの興味ないんだから!」
頬を真っ赤にする友美、質問責めをしそうなエロスに教子先生が咳払いする。
「おほん……自己紹介しておく。熱情友美、日本文学科の二年、一応はお前達の先輩でもある」
「一応は失礼じゃないですか!?」
友美は不服そうな顔で言う。
「じゃあ、熱情さん。先輩なんですね。」
「ここでは先輩も後輩もないわ! 敬語も無しよ! 友美でいいわ」
「えっ……でも……」
「じゃないと、小説の批評がしにくくなるわ」
「批評?」
友美の言葉に書也は首を傾げる。
「次はエロス・セック。同じく日本文学科、これでも三年生だ。このラノケンのスポンサーでもあり、色々と備品を出していただいている」
「へぇ~じゃあ、社長か何かの本当のお嬢様なんですね? どこの会社ですか?」
「そう! お父様は、あの誇り高きレッドムーンの社長ですのよ!」
「レッドムーン!? あのフランス人の社長さんの!? 有名なゲーム会社じゃないですか!? ノベルゲームの同人サークルから転身して、ゲーム会社になった! 俺、何本もPC版から、ゲーム版まで幾つも持ってます!」
書也は思わずエロスに握手をしていた。
「書也君、レッドムーンって、有名なゲーム会社さんなの?」
「ああ、今じゃそのノベルゲームが派生して格闘ゲームから、スマホゲームになっているほどだ。アニメ化、コミカライズ、ノベライズから、幅広い分野でも売り上げているんだ!」
「どんなノベルゲームなの?」
「それはな……」
書也が説明しようとすると、エロスが狸型ロボットのポケットのように胸の谷間からパッケージされたディスクケースを取り出した。パッケージイラストは夜を背景に女鎧騎士と学生服の男子高生が描かれ、タイトルはファイトと記載されていた。確かPC版は……
「それだったら、この原作のPC版をお勧めしますわ。お気に召したら買うと良いですわ」
エロスが笑顔で愛に渡すディスクケースには丸に18と記載されたキラキラと輝く数字が目についた。
「エロス、没収な……後で職員室に取りに来い」
教子の糸目が開き、チベットスナギツネのような瞳になったかと思うと、素早い手つきで愛から奪い取る。
「酷いよ教子先生」
愛は半べそをかきつつ、言う。
「そうですわ! お返しください先生!」
エロスが言うと、さらに教子はチベットスナギツネのような瞳から、狼のような鋭い瞳に変わる。
「誤植、お前にはまだ早い! それとなエロス! ラノケンをここまで発展させた事には感謝するが、私にも譲れないものがある! 教師として道徳を教えるのも、私の務めだ。言いたい事は分かるよな? エロス?」
教子先生の凍りつくような笑みがエロスを貫き、思わず後ずさりする。
「はい! 申し訳ございません!」
エロスは青ざめ、勢いよく頭を下げる。
「分かったら、仮新入部員にいろいろと教えてやれ」
教子先生はデスクに座ると、バッグから小型デスクトップPCを取り出し、置いてあったデスクトップPCとケーブルで繋ぎ、電源を入れた。
「教えろって、何を教えるのよ? まさか文章を一から教えるとか言うんだったら、さすがにパス! そういうのは愛だけで充分よ」
友美はホチキスで留められた印刷用紙の束の山になった席に座ると、長机にある下の棚に無造作に原稿用紙を次々と詰め込んでいく。その束の一部にはタイトルがでかでかと印字され、ヒーローや魔法少女などの文字がちらりと見えた。
「熱情、お前も相変わらずだな。少しは片づけてから帰れ。仮新入部員も呆れるだろ」
「学校のテストや他のプリントと混ざるのが嫌なのよ。少しぐら良いでしょ」
というか、なぜ友美は顧問の先生に対して敬語ではないのだろうか? 親しさは感じるが、まるで不良少女である。
「がさつ……」
教子が呟くように言う。
「えっ? なに言ってるか聞こえません」
「あっ!?」
書也が思わず声を上げた。友美の長机には原稿用紙の束に埋もれるように見覚えのある赤と青の二体のプラモがあった。
「な、なによ!?」
友美が警戒して、二体のプラモを隠すように遠ざける。
「その赤いのレーバティン最終決戦仕様だよな? それにその青いのはイカルガか?」
「分かるの?」
友美が目を輝かせて言う。
「分かるもなにもフルメタとナイツマはラノベ好きなら大好物だぜ!」
「格好良いプラモがあると、創造意欲が湧き上がるのよね。それに多少の手足の稼働もできるから、アクションの動きも再現できるし、無理な動きにならないか、検証できるのよ」
友美はプラモの手足を動かしながら言う。
「その場合、壊れやすいプラモじゃなくて、アクションフイギュアの方が良いんだがな。手足が無いとか、武器が無いとか騒ぐ奴がいるからな」
教子先生が呆れたように口を挟む。
「べ、別に良いじゃない! 武器の構えとか、剣の振りとか研究できる訳だし、動きを文章で再現できるのよ!」
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