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少女が去ったあと、湊はポストをそっと撫でた。
このポストに届いた手紙は、湊がすべて回収し、
洋館の暖炉で丁寧に焚き上げることになっている。
煙となって空へ昇り、大切な人のもとへ届くように。
その日の夕暮れ、次に現れたのは小さな男の子だった。
ボロボロのぬいぐるみを手放せないまま、彼はポストの前で立ち尽くしている。
『どうしたのかな?』 湊が膝をついて目線を合わせると、
男の子は小さな声で答えた。
「……ポチに、これを渡したいの」
差し出されたのは、犬の足跡が描かれた手書きの絵だった。
先週、愛犬を亡くしたのだという。
「ポチ、お空でお腹すいてないかな。僕のこと、忘れてないかな」
湊は、少年の頭を優しく撫でた。
言葉は出せなくても、手の温もりで伝えられることがある。
湊はパレットのような鮮やかな色鉛筆を取り出すと、
少年の絵の端っこに、黄金色の「骨のクッキー」を描き加えた。
「わあ……!」
『これを持っていけば、ポチも大喜びだね』
メモを見た少年は、今日初めての笑顔を見せた。
手紙や絵がポストに吸い込まれるたび、そこには小さな救いが生まれる。
けれど、湊自身の「救い」はまだどこにもなかった。
彼が毎日、夜遅くにポストを確認するのは、
ある「一通の手紙」を待っているからだった。