1話「命」
「~~!〜ww」
R「…」
病室の窓から外を見つめる。
俺はまだ小学生だった。
子供には未来がある。
だが俺にはそういうものはなかった。
「残念ですが…ロボロくんの病気は、治るものではない…ですね…」
まだ幼い頃に医者にはそう言われた。
俺には未来というものがない。
どうせ大人になるまでに死んでしまう。
治りもしない病気のせいで遊びたくても体が言う事を聞かない。
親は医者に治らないと告げられた時、涙を流していた。
その時俺はまだそれが何かよく分かっていなかった。
「ごめんね…ッグスッ病気のない体で産んであげられなくて…グスッポロポロッ」
俺のお母さんは病室で横たわる俺によくそう言っていた。
俺は神様は不公平だと思う。
世の中には天才と凡人がいる。
俺はその凡人でしかも負け組だ。
何をしようとしても上手くいかない。
それとは反対に、天才はただ生きているだけで褒められる。
少しひねくれた考えだが、俺にはそう思えてしまう。
神様は俺のような体も弱く、頭も運動もできない凡人を作り上げる。
この世界は残酷だ。
個人個人で圧倒的な力の差がある。
齢16歳。
これはただ人生を諦めていたロボロの話である。
16歳の春__…
「貴方も…もう16なのね…ッグスッ」
R「泣かんといてや母さん…笑」
俺はロボロ。
今年で16、高校生になった。
今は薬でなんとか学校に通えるようになった。
医者にもう長くないと言われ続けて16年。
死は怖くなかった。
ただ、母さん達に親孝行も何もしない、友達も出来ない、そんなまま死ぬのは嫌だった。
だから、ロボロは自信を偽ることにした。
明るく、出来るだけ、辛く思っていなそうな顔で、声で。
そう思い、入学式を迎えた___
ガララ…
桜が舞いピンクに染まる教室にザワザワと話し声が飛び交う。
ここが学校…教室か…!
初めて病室以外で授業が出来る…!そうワクワクしながら教室に入る。
「はい、今日は皆入学おめでとう!初対面のやつもいると思う!あ、当たり前やな」
先生は面白そうな人だった。
何気ない一言で皆が笑う。
そんな中、退屈そうに先生を見ている奴がいた。
R「…?」
なんやコイツ…?髪は茶色で緑色のパーカにフードみたいなもん被ってる。
目は隠れて顔はよく見えないが、ただ、退屈そうだった。
「よーし、じゃあ自己紹介しよかー?」
先生がそう言い、前から順に自己紹介が始まった。
ロボロは緊張すると思いながら順番を待っていた。
ガタッ
「えー、ゾムです。よろしく…」
…え、それだけなん??なんかもっと好きな食べ物はー!ッ的なやつないん!?なんやコイツ…??
ロボロは不思議そうな顔で横の席のものを見つけるが考えているうちに順番が来てしまった。
「はい次その後ろのチビー」
R「チビじゃないですぅ!!w
えー、ロボロでーす!!高校は友達めっちゃ作りたいです!!お願いしまーす!!」
パチパチパチ…
ふー、終わったぁ…そう思って座るとなにか隣から視線を感じ、そちらを見ると、隣の男がこちらを見ていた。
Z「…」
R「…ん??」
え、こわ…何でそんな真顔で見つめてくるん…?しかも無言やし…こわぁ…
Z「…お前その天って書いてあるやつなんなん?」
R「…あー、これ?なんやったっけなぁ…まぁ、まだ教えれへんなぁ〜w」
Z「ふはっ、なんやそれw」
あれ、そんなに怖くない…?
R「なー、ゾムって呼んでええか?俺はロボロでええから!」
Z「ロボロな、ええよ。よろしくな!」
R「おう!!」
こいつとは仲良くなれそうや!第一印象はなんや怖そうやったけど、そんなことないな~
これで、友達は出来た…
後は、死ぬまでにそいつの役に立って、何か残して、死ねれば完璧やな…!
今はただ、出来た友達を大切にしよう。
そして、死ぬまでの時間を楽しもう。
そう思えた。
入学式から数日が経った。
やっと高校生活に慣れてきた。
俺の横には常にゾムがいた。
あれから俺らは行動を共にしている。
ゾムは気さくで話しやすく、クラスの人気者になっていた。
ゾムはとにかく面白いやつだった。
R「…ッ!ゴホッゴホッゲホッ」
Z「!?大丈夫か…?」
そう言ってすぐ俺に背中をさすってくれる。
やっぱ友達って心地ええなぁ〜…
R「ん…ッゴホッだい、じょーぶ」ニッ
ただ、笑う。
そうすれば、相手は安心する。
Z「お、う…お前、風邪か…?」
R「まぁ〜そんなもんやな!大したことないし!」
ゾムは心配そうに俺を見つめれば、そうか…と目をそらす。
あぁ、俺はダメだな。
ゾムには心配させへんように、迷惑かけへんように過ごさな。
死ぬまでに出来た、たった一人の親友やから。
まだ、ゾムには伝えない方がいい。
なんなら死ぬまで言わないままで良いのでは無いだろうか。
そう言ったらゾムは怒るんやろうな。
なんで言ってくれなかったんや。
相談してくれなかったんや。
俺の事信用してないんか?って。
でも、世の中には知らんでいい事やってある。
俺やって、ずっと仲の良かった親友が病気でもうすぐ死ぬとかやったら知りたくないし。
でも何も言わず死なれるのは怒ってしまう…な。
そっか怒られてまうもんな。笑
よし、生きよう。
できる限り。
俺の命が尽きるまで。
寿命が無くなるまで。
我武者羅に、生にしがみつこう。
Z「なぁロボロ。俺に言ってない事とか無いやんな?」
R「…そんなん無いわ!なんや急に!」
Z「…そっか。そうやろな笑」
そう。これでいい。
今はまだ、この時間を壊したくない。
俺の命が燃えて無くなるまでに、ゾムや母さんに色々なものを残そう。
これから出来るかもしれない友達にも。
病気の事を伝えるにはまだ、
早い。
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