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2話「マブタチ様」
とても大切な。
何故か今まで忘れていた、親友が。
そいつも俺と一緒で病室で寝たきりになっているのが日常だった。
でも、明るいヤツだった。
本当は病気なんか持ってないんとちゃうか?と思うほどには。
それぐらい、隠したかったのだろう。
彼の名はシャオロンといった。
頭にはニット帽を被り、豚の飾りを付けていた。
そして何より、笑顔が絶えないようなやつだった。
S「なーロボロー!」
R「…?なんや」
S「俺ら大人になったら色々なとこ出かけてみーひん?」
彼は常日頃から”大人になったら”の話ばかりしていた。
R「そうやなー、今の病気が治らんと無理やと思うで?」
S「はっ、そんなん分かっとるわ…
でも大人になるまでには良くなるって先生が言っとたんや!」
彼はきっと未来を信じているのだろう。
元気な彼を見ていると自分も元気が出るような気がして、彼と過ごす日々は嫌いではなかった。
R「そうやねぇ、そうなるとええなぁ」
その次の日、シャオロンは病室から姿を消した。
R「…ん…っ、ふあぁ…おはよ、シャオロン。」
その日俺は目が覚めいつも通りシャオロンにおはようと伝えた。
はずだった。
声がしない。
いつもなら俺より早く起きて俺を起こしに来るはずなのに。
R「…?シャオロン…?
なんやまだ寝とんのかぁ?さっさと起きんかいな…」シャアッ
俺はシャオロンのベッドを囲んでいるカーテンを開いた。
だが、そこにシャオロンの姿は無かった。
R「え…?…ははっ、変な冗談やめろよ…
隠れてんねんやろ?分かっとるで…?」
そういう俺の声は震えていた。
病院では1日に1人亡くなるなどは日常茶飯事だ。
俺は慣れているはずだ。
人が消えていくのは…
ガララ
R「!シャ…」
病室のドアが開き、誰かが入ってきた。
なんや、外におったんかシャオロン。
そう思っていた。
振り返れば、そこにシャオロンの姿は無かった。
ただ、白衣を着た医者が立っていた。
R「あ…せんせ!シャオロンどこに行ったか知らん?」
「…シャオロンくんは今集中治療室にいる。」
R「え…?」
医者は下を向き、悲しそうな顔でこちらを見ていた。
「昨日の夜急にシャオロンくんが倒れてな…意識がない状態が続いて…今も、まだ…」
どういうことや…?
昨日までシャオロンは元気やった筈や。
集中治療室…?訳が分からん…
あの男がいなくなってしまうわけない。
だって、本人がそう言っていた、!
S『俺は大人になるまでは生きるで!』
昨日まではそう言っていたじゃないか、!
「最前は尽くす。それが今医者としてやれる事です…ロボロくん、君はここで良い結果が出るのを祈っていてね…」
R「…っ、あ、当たり前や!シャオロンやで!?そんな簡単に死なへんやろ…っ!」
「…そうだね。ではまた…」
ガララッピシャンッ
R「…」ガクッ
俺はその時まだ頭が追い付いていなかった。
もしかしたらシャオロンがいなくなってしまう。
そんな事考えたくも無かった。
R「大丈夫や…あいつは戻ってくる…そういう奴やろ…?」
そうただひたすらに願った。
そして、数日後
ーーーー!ーー?
なにやら外が騒がしい。
今日は何かある日だったのだろうか?
R「ん…?」
ガラッ
R「え…っ?」
病室のドアを開ければ、目の前にはシャオロンの両親と医者がいた。
そして医者と両親の間にある担架の上には、
シャオロンがいた。
顔には白い布が被せられている。
シャオロンにしがみついて泣き叫ぶ両親。
人目見ただけで理解した。
嗚呼、シャオロンは、死んだんや
「最前は尽くしましたが…残念ながら息子さんは…」
「あぁっ!!ぁぁぁぁああああああああああぁ!!!」ボロボロボロッ
R「…ッあ」ポロッポロッ
その光景を見た時のことはよく覚えている。
母親は泣き叫び、崩れ落ち、父親は呆然と立ち尽くし、頬には涙を流していた。
そうか、シャオロンは死んだのか。
俺との約束、無くなってしまったんか。
S『俺とお前はマブダチやからな!!』ニッ
そう言って笑いかけてくれる親友はもういない。
もう旅立ってしまった。
R「ひ…ッぅあ…ッあぁあ!!ぅああああああああああんッッッ!!!」ポロッボロポロッ
人生で初めての親友を亡くした時だった。
あれから数時間経ち、病室でベッドに横たわっていた時だ。
ふとシャオロンのベッドに目がいき、ベッドの横の机の上に何か置いてある事に気づいた。
R「なんや、これ…」
そこには、『天』と書かれた雑面があった。
____…
S『俺死んだら天国に行くねんな?でも、そんな確証は無いから、こういう…布とかに…ほら!見てや!』
R『…?なんやこれ…”天”…?』
S『せや!天国の天な?そんで、これを机に置いといたら、死んだ時とか天国に行けるかもやんか!
それに、俺が天国行って、ロボロがまだ生きてる時。その時に天国から天の声でお前に話しかけたるわ!』
R『なんやそのアホらしいのは…』
S『…じゃあこれはロボロにあげるわ!』
R「はっ!?いらなぁ!!」
S『だって、ほら、俺は大人になっても生きてるからいらんやろ?それに、これ付けてる方が俺が死んだ時お前を見つけやすいやん!顔に付ければ…ほら!』
R『ちょ、やめーや!』
S『こっち見てやロボロ。』
R『むぅ…』
S『よぉ似合っとるわ』ニヒッ
R『そ、そぉかぁ?』
S『おう!俺からのプレゼントや!ま、また今度渡すな?』
R『今やないんかい…』
R「あん時の…まだ、あったんや…笑」
少し涙ながらに俺はその雑面を顔に付ける。
これはシャオロンからの唯一の贈り物だ。
これを大事にして生きていこう。
ピピピピピピピピッ
R「ん…っふぁ…?夢…?」ツ-…
朝起きると、頬になにか水っぽいものが伝った気がした。
R「んぁ…?これ..涙…?」
頬を拭いても、目からは涙が溢れて止まらなかった。
R「ちょ…シャオロン…今泣かせに来んといてや…笑」
S『ロボロ…俺の事忘れんなよ?笑
お前の…”マブダチ様”やぞ…?笑』
そう聞こえた気がした。