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第六話:はじめて見る世界の顔たち
しん、と静まり返った玄関先。
先に押されたインターホンの音が鳴り響いた後、家の中から足音が近づいてきた。
カチャ、と扉が開いた。
「兄様……!」
ぴょこん、と顔を出したのは、まだ幼さの残る小柄な少年――白い肌に、ぱっちりとした赤い瞳。彼こそが、“日本”だった。
ふわりと笑って、躊躇いなく前にいた人物へと抱きついた。
「会いたかった……!」
ふわぁっと柔らかい香りと、ふわふわした腕の中で、日本は幸せそうに目を閉じた。
しかし――
「……ちょ、ちょっと!?io、兄じゃないんね!?イタリアなんね!?!?」
突然のハグに赤面したイタリアが、慌てふためく。
後ろにいたイギリスはあ然とし、中国は片手で口を覆って笑いを堪えていた。
イタ王とソ連、ナチスの面々も状況を飲み込めず、戸惑っている。
日本は驚いて顔を上げた。
「……兄様じゃ、ない……?」
あまりに無垢な目で見上げられて、イタリアは言葉を詰まらせた。
イギリスがむすっとした顔でぼやく。
「まさか、日本って……この子のことだったのでしょうか?」
「小さいアルな……可愛いけど、ワタシ達に気づいてないネ」と中国が呟く。
「というか……はじめて見る奴らに抱きつく子供、普通おらんゾ」ソ連が口の端を吊り上げた。
そのとき、日本の肩が震え始めた。
「し……知らない人……誰……?」
ぱあっと顔が赤くなり、ぶわっと涙があふれる。
「兄様……いない……!」
完全に混乱した日本は、後ずさりしながら泣き始めた。
慌ててイタ王が手を伸ばす。
「ま、待ってなんね!違うんだよんね、ioは悪い人じゃないなんね!怖がらないで欲しいなんね!」
「お前のこと、悪く思ってないアル。ごめんなさいネ、びっくりさせたヨ」と中国。
ソ連とナチスが静かに前に出て、日本の視線を遮るようにかがむ。
「泣かなくていい。お前を傷つけたりはしない。俺たちは……」
「そう、初めて会っただけ。それだけだ」
静かな声。優しい声。
日本はゆっくりと、震える手で涙を拭って、小さな声で聞いた。
「……初めて……?」
ソ連はゆっくりと頷いた。
「うん、お前にとっては初めてでも……俺たちは、お前に会えて嬉しい」
ナチスも、穏やかに言葉を紡いだ。
「そう。出会えたことを、まずは喜ぼう。あとのことは……それからでも、遅くない」
日本は、不思議そうに彼らの顔を見た。
兄様たち以外の大人。知らない言葉、知らない瞳。でも、怖くない。
「……会えて、よかった……?」
「そうアルよ」中国がにっこりと笑った。
イタリアも、涙ぐみながら頷く。
「うん、めっちゃ、うれしい!」
日本はもう一度、泣きそうな顔になりながら――
「……ぼくも、うれしい……」
そう言って、小さな笑顔を見せた。