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「改めて、私は矢子瑠々と言います。魁と仲良くさせてもらってます」
「俺は悠磨、こっちが柊磨。魁ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」
3人がそれぞれ自己紹介をして、やっちゃんは用事があるからと言い私たちと別れた。
私たちは3人並んで家まで歩きながら喋る。
「入学式良かったよ。喋ってると思ったら瑠々ちゃんだったんだ」
「あ、式中喋ってるのバレた?」
「そりゃあね」
「先生に怒られなかったからバレてないと思ってた」
「担任の人優しそうな人だったね」
「あれ怒ったら怖いタイプだろ」
「よくわかんないけどノリはめっちゃいい」
「それ最高だね」
他愛ない会話をしながら話すこの時間は、私にとって1番大好きな時間かもしれない。
「あ、ねこ」
「えっ?」
悠磨が茂みを指さしながら言う。その方向に、私と柊磨も目を向けた。
「わぁ…真っ白な猫だね」
「毛なが。美猫ってやつ?」
「でも、野良猫だと思うよ。耳がちょっとちぎれてるし…結構細い」
猫を見つめる。ずっと外にいたからか、体にはノミがたくさん着いている。でも、それを感じさせない真っ白な長い毛は綺麗としか言いようがない。顔が綺麗で、目は青色だ。
「かわいい…」
「飼う?」
「えっ!? 」
唐突にすごい事を言い出した悠磨を見る。結構真面目な顔だったから本気で言っているんだと察した。
「飼いたいけど、命を育てるのは大変なんだよ。それに…」
「それに、なんだよ」
私のせいで犠牲になってしまうかもしれない。そんなありえない未来を想像してしまう。私はどうしても、命に関われない。自分のせいでと思ってしまう事がまだある。それを克服できない限り、動物を買うなんて事夢のまた夢だろう。
「大丈夫だよ。この子は野生でここまで生きてきた。そう簡単には死なないさ」
「…でも」
「今更何気にしてんだよ。また社会不適合者に戻りたいのか?」
2人から背中を押される。
この子をきっかけに、命に関わることを克服してもいいのかもしれない。
「この子、助けてあげよう」
「そうだね。そうと決まったらまずは動物病院だ」