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#三角関係
霞花怜
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#イラスト部屋
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
695
大盛り上がりのうちにカラオケ大会が幕を閉じ、心地よい疲労と余韻に包まれながら片付けが進む中、柊吾が真理子に帰る事を伝えていると、うっとりとした瑞樹の声が耳に響いて来た。
「じゃぁ俺も今日、このまま半休取って一緒に帰ります!」
真面目な顔でそう宣言した瑞樹に対し、近くにいた同僚の近藤から「ダメに決まってるじゃないですか! まだ午後も仕事残ってるのに」と見事なまでの冷ややかなツッコミが即座に入る。
「えぇ、でも……」
「でもじゃないです! ほらっ、片付けとトイレ介助! 行きますよっ」
全く、何を考えているのだろうか。真面目でクールそうに見えた瑞樹の意外な一面をまた発見して、なんだかむず痒いような気分になる。
「安心しろって瑞樹。コイツは俺が責任持って家まで届けてやっから」
ひょいと柊吾の肩に腕を回しながら言い放つ大樹に、瑞樹はピキッと眉をひそめた。
「大樹が一緒だから余計に心配なんですっ!」
「なんだと?」と言い合う二人を見て、柊吾は苦笑しながら宥めるように割って入った。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。大樹さんは黒瀬さんが思うような人じゃないって僕、知ってるから大丈夫だよ」
「……っ。それは。柊吾さんが、こいつの本性を知らないから……っ!」
唇を噛み締めながら敵意剥出しの瑞樹を他所に、大樹は「お前は仕事があるんだろ? ほら、行けよ。 頑張れー」と、この上なく棒読みで煽るような言葉を投げ捨てた。
悔しそうに歯噛みしてこちらをガン見してくる瑞樹に苦笑していると、そのまま、ぐいと肩を抱き寄せられて強引に施設の出口へと歩き出す。
「大樹さんも、あんな言い方しなくてもいいのに……」
外に出るやいなやそう咎めると、大樹はフンと鼻を鳴らした。
「あん? 俺なりの精一杯の愛情表現だっつーの」
「ははっ。何それ……。って言うかさ、ペンライト! あんなの持ってくるなんて思ってなかったですよ。確かに、カラオケ大会に出る予定ですって送ったのは僕だけど……。あれ、結構地味に恥ずかしかったです」
「ばーか。柊吾が生で歌うんだぞ? ただ手拍子するだけじゃ勿体ねぇっつーの。それに、あのペンライトの海、お前に見せたかったんだよ」
「うん……。ありがとうございます。凄く、凄く楽しかった……」
ぽっと頬を染め、これ以上ないほど柔らかく満面の笑みを浮かべて見上げる柊吾に、大樹はビクッと動きを止めた。
数秒間固まった後慌てて片手で自分の口元をグッと押さえ、あからさまにそっぽを向く。
歩き出す足をふと止め、大樹はまるで何かを確かめるように片手で自分の後頭部をガシガシとかいた。けれど、すぐに観念したように大きく息を吐き出すと、そのまま柊吾を振り返る。
その瞳には、さっきまでの茶化すような光は微塵もなく、息をのむほど真剣で、そしてほんのりと熱を帯びていた。
「お前さ……その顔、外で他の男にホイホイ振りまいてんじゃねぇぞ。……瑞樹じゃなくても、普通に心配になるわ、まったく」
「ん? 僕の顔が、どうかしたんですか?」
小首を傾げる柊吾を捉えたまま、大樹はふっと喉の奥で低く笑った。その声音には、普段の軽口からは想像もつかないような、大人の男の生々しい色気が含まれていた。
「なんでもねぇよ。……ただ、俺もお前の歌がまたこうして聞けて、本気で嬉しかった。すっげー感動したわ、マジで」
軽口の裏に隠しきれなかった本音を零すと、大樹は不意に一歩、距離を詰める。
逃げ場を失った柊吾がハッと息を呑んだ瞬間、大樹の手がスッと伸びて、その細い首裏と額を優しく、けれど絶対に逃がさない力加減で引き寄せた。
「っ……大樹、さん……?」
抵抗する間もなく、ふわりと香る大人のオトコの気配に視界が埋め尽くされる。
寸分も狂いのない距離で、大樹の熱を帯びた瞳が柊吾のそれを真っ直ぐに見据えた。見つめ合ったまま、ほんの零コンマ秒、時間が止まったかのような静寂が落ちる。
――こつん。
柔らかくて、けれど確かな熱を宿した唇が、柊吾の額へと落とされた。
瑞樹とはまた違う、どこか荒削りで、それでいて不器用なほど優しい独占欲が、その触れ合う一瞬の体温を通じて脳髄まで直接流れ込んでくるような感覚。
「っ……!」
頭が真っ白になり、柊吾は思わず両目を見開いたままその場で硬直した。
双子の弟である瑞樹の圧倒的な執着とは違う、もっと自由で、だからこそ抗えない「黒瀬家の血」が持つ危険な色気。
大樹は、真っ赤に染まって固まる柊吾の反応に満足したのか、フッと余裕を含んだ不敵な笑みを浮かべる。
「じゃぁ、またな」
名残惜しそうに指先を離すと、大樹は振り返りもせず、まるで何事もなかったかのようにヒラヒラと片手を振って歩き出した。
そのあまりに自然で、どこか艶っぽさを含んだ仕草に、柊吾は脳の処理が追いつかずにその場で固まった。
(……えっ……?)
背中で聞いた瑞樹の低音や、ふとした瞬間の強引さと、驚くほど重なる双子の血筋。
(黒瀬家の遺伝子のほうが、なんかこう……別の意味で危険な気がするんだけどっ!? なにあれ、心臓に悪いっ……!)
真っ赤に染まった顔を両手で必死に押さえ込みながら、柊吾はしばらくその場で動けなくなってしまうのだった。
コメント
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うわあああ110話おめでとうございます…!!🎉✨ もう大樹さんの「俺もお前の歌が聞けて嬉しかった」って本音こぼすとこ、心臓ぎゅってなったよ…!!あの普段の軽口の裏に隠してたリアルな感情がぽろっと出る瞬間がエモすぎる😭💕 それでいて最後の額へのキス!「逃がさない」って距離の詰め方と、実際はすごく優しい触れ方のギャップにやられた…「黒瀬家の遺伝子危険すぎる」って柊吾くんの叫び、めっちゃわかるよ!!!笑 ペンライトの海、見せたかったっていう大樹さんの愛情表現にもじんわり…素敵なお話ありがとうございます🌸