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町田のアウトレットモールを後にした二人は、途中、食事をしてから怜のマンションへ戻ってきた。


うがいと手洗いを済ませ、怜が沢山の紙袋をソファーの上に置くと、冷蔵庫からペットボトルのお茶を二本取り出し、一つを奏に手渡す。


「ひとまず休憩するか」


どことなく不機嫌そうな表情を浮かべながら、怜はフウっと大きくため息を吐くと、キャップを開けてグビグビと一気に半分ほどお茶を流し込んだ。


気まずい。非常に気まずい雰囲気。


奏はソワソワしながらソファーに腰掛け、チビチビとお茶を口にした。




「なぁ奏」


「何でしょう?」


先ほどまでムスっとしていた怜が、今はどこか困惑しているような表情に変わっている。


奏に言いあぐねているように、彼は無言だった。


リビングには沈黙が降り、外から消防車がサイレンをけたたましく鳴らしながら走り抜けている音が微かに聞こえている。


そんな物騒な音を耳にしながら、奏は呑気に『ああ、年の瀬だな』と感じてしまう。


「違ってたら申し訳ないんだが……。奏、あの二人を前にも見たのか?」


「え? あの二人……というと?」


「今日、町田のアウトレットモールで、圭が婚約者以外の女を連れて歩いてただろ?」


顔を瞬時に怯ませた後、曖昧な面持ちの仮面を装着した奏を、怜は見逃さなかった。




「もう一度聞く。圭が他の女を連れて歩いているのを、前にも見た事あるのか?」


見た。思いっきり間近で。


それも、怜と恋人同士になった翌日、電車で帰宅して、立川駅から自宅へ徒歩で向かっている時。


奏は、怜に告げ口みたいな事をするのが嫌で、ずっと黙っていた事だ。


怜に、どう返答しようか考えているうちに、漆黒の大きな瞳が宙を彷徨う。


その表情に、怜は素早く反応した。


「やっぱり見た事あるんだな?」


奏の心の内を見透かすかのように、彼女を貫く、怜の鋭利な眼光。


いつか奏に『なぜ君は、人を寄せ付けないように冷たく振る舞う?』と問いかけた時と同じ、尋問するような冷たい視線。


久々に感じた『畏怖』のようなものに、奏の背筋がゾクリと凍りついた。


「怜さん…………怖い……」


彼から顔を背けて、彼女がポツリ呟くと、怜は『すまなかった……』と言い、眉間に皺を刻ませながら後頭部を掻いた。




(それにしても、何でお兄さんの女性関係の事を、怜さんはこんなに気にするんだろう?)


不意に疑問に思う奏だが、圭のフィアンセは、怜の元カノでもある園田真理子。


大分前に、奏がハヤマ ミュージカルインストゥルメンツの創業パーティで演奏の仕事を終えた後、パウダールームに向かおうとした際に、盗み聞きした形になったとはいえ、真理子は怜が会社を継がないという理由で別れ、副社長でもある圭に鞍替えしたと漏れ聞いたのだ。


だとしても、怜と真理子は別れてから大分時間も経っているわけだし、圭が他の女性と二股かけているのなら、それは圭自身がけじめを付ける事なのではないか。


怜がいちいち口出しする事ではないのでは。


二人とも三十三歳。もういい大人なのだ。


でも、あの創業パーティで圭と真理子の婚約を大々的に公表したから、そうも言ってられないのか。


婚約中の身であるのにも関わらず、圭が他の女とデートという場面に二度も遭遇した奏は、元カレ、と思うのも馬鹿馬鹿しい相手、中野の事を思い出してしまう。


(考えているうちにワケわからなくなってきたけど……あのイケメン双子の間には園田さんを巡って、大きな溝でもあるのかな……)


朧気に考えた後、奏は思考を停止させた。

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