テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
___
「_意識なし、重症です。」
「了解、すぐに運んでくれ。」
「他の仲間も探せ、あと4人いるはずだ。」
「そ、そうなんですが…!一向に見つからないんです…!」
___
(…あの時の、意識はなかった。)
陽が、2人を照らした。
救済の光とも言えるだろうか?
大いなる力を持っていようと、大いなる存在にはなれない。
終末を告げる神を装った彼も、所詮皇ですらないただの人間だ。
(事の重大さくらい、わかってた。)
(…弔うことも出来なかった、記憶から消えようとしていた。 )
「…最期に立ち会えなかった。未だに、誰も見つかってないんだよ」
「…メテヲさん」
御茶屋は、静かに聞いた。
あの”殺戮”から、おおよそ1週間だろうか?
いや、もう忘れてしまった、遠い遠い昔のように思えたのだ、日数を数えるのも、馬鹿馬鹿しいと思っていた。
「……あれは事故じゃないよ。 」
メテヲは病院の不味い空気をいっぱい溜め込んで、それを吐き出すように、そう呟く。
「事故じゃない…」
御茶屋はそれを飲み込み、ただそれだけ呟く。
「…あの洞窟そのものを破壊したのは、仲間を全員殺したのは…メテヲ。」
「メテヲさんが、殺したんですか?」
「うん。メテヲが、精神を壊した。それが破壊を呼んだ。」
_換気扇の音が響く。
「…受け入れるの、嫌だけどさぁ。」
「どうにかして、思い出そうとして、反して記憶はどんどん閉じてく。」
それは、聞き手のいる独白のようなものだ。
「…あの時のメテヲが、どんどん今のメテヲと乖離して、忘れてって…。また前みたいにつまらない人生に戻るのかな、なんて、夕日を見る度に考えちゃうんだよね。」
「事故じゃないってバレて、メテヲがどっか遠いところで1人になるのかもしれない。」
「…消えたいとか、そんな極端な考えすら、頭には出てこないんだよ。」
「今は…。」
喉がつかえる。
今自分は、何がしたいのか?
こんなことを話して、何になるか?
_そんな妄想も危惧も、頭には入って来ない。ただ、思ったことを機械のように呟いた。
御茶屋は相も変わらず、静かに聞いていた。
初めて会ったときの彼女はどこに行ったのだろう、今は極めて冷静な彼女が、逆に違和感に思える。
この場にいる全員が、空を水色に染める陽を見た。
「…なんにも浮かんでこないんだよ。」
「怖くてたまらないのに、それすらどこか遠くて。」
少しの悲しみが、穴の空いたティーカップに注がれるようだ。
今なんの言葉をかけたとて、彼の喪失も、悲しみも、なにも溜まることはない。
ただ空いた穴から溢れ、また元に戻るだけだ。
__からっぽなのだ。
どこにも、”前の”彼らしき影はない。
メテヲは、静かに目を閉じる。
不味い空気が体内に入り、そのままどこかへ消える。
メテヲはふぅ、と一息つく。
「ねぇ、ここまで話したんだから、そろそろ御茶屋さんに何があったか教えてよ。」
「なんで皇の人?と行動し始めたの?」
「…いつかはそう来ると思ってましたけど、結構早かったですね。」
「沢山話してもらったくせして申し訳ないですし、私も色々話すことにします。」
御茶屋は、深く息を吸った。
そうすると、少しの落ち着きがもどつてくるだからだ。
「_かつて私は孤児で…拾われたにもかかわらず家出少女になったのです。」
メテヲは目を見開き、心底驚いたように聞いた。
「…こ、孤児だったの!?」
____
_皿が、家で投げられる。
皿を投げているのは母だ、それに父も応戦し、鍋が投げられ、ソファが倒される。
「ふざけんじゃねぇ!!!お前が依存して俺の同意もなく無理やり結婚しやがったくせに!!」
父は怒号をあげる。
重いものを投げられるうちに、部屋の電気が少し壊れており、チカチカ、チカチカと絶えず照明は点滅している。
「タヒねよ!!クソババアがぁあ!!!!」
「あんたこそタヒんでくれない!!?私の事愛してないし嫌いなんでしょ!?なら__」
_御茶屋は親の喧嘩を、別の部屋で震えながら耳を塞いでいた。
(こわいよ……)
当時、彼女は4歳だ。
親の愛をもらったことのなかった御茶屋は_震える生活に嫌気が差し、ふたりが居ない間に、
星空の下を駆け出していた。
暗闇が果てしなく続くのが、4歳の御茶屋にとっては酷く怖いものに映る。
無我夢中で闇夜を走り、どこに行くかも分からない。
(…にげよう、きっとそのほうがいい、から…)
そうして、30分だろうか?
大人より遅い足だが、大人よりも体力はあった。
走って、走って、100mは離れた場所に、狭い公演を見つけた。
(…いいや)
御茶屋は、それに吸い込まれるように、座り込んだ。
そしてそのまま_眠りについてしまう。
当時の彼女に、危機感というものはなかったのだろう。
___
朝、御茶屋は目を覚ました。
「いま、なんじ…? 」
御茶屋は、公園に一つだけある時計を見上げた。
…背の低い頃だった御茶屋には高いし、見えそうもないまま、突っ立っていた。
その時だった。
優しそうな女が、話しかけてきたのだ。
「…えっと、大丈夫、ですか…?」
女が御茶屋にそう話しかけると、少し離れた場所にいた男が、女の隣に立った。
そして、男も話しかけた。
「お嬢さん、君はどこからきたの?」
御茶屋は答える。
「わから、ない」
「ずっと、はしってた、から。」
男性はしばらく考えたのち_
「…もしかして、パパとママのこと、怖いの?」
男は、そう聞いた。
御茶屋はこくりと頷いた。
女性はそれを見て、少し考える。
「なら…その、私のおうち、くる?」
「寒いでしょ、ほら、もふもふなコート!」
女性は笑顔で、暖かそうなコートを、御茶屋に差し出した。
132
#グロテスク
観測者l!!@暑すぎて溶けた☆
38,248
#mmmr
菜津/natsu
635