コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
後編です~‼︎どんどんぱふぱふ‼︎
crxv nmmn
青橙(ほぼ友愛です)
橙視点
死ネタ
年齢操作(14、5歳だと思っていてください)
「銀河鉄道」
ところで、「銀河鉄道の夜」という小説を聞いたことがあるだろうか。孤独な少年ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道の旅をする…、生と死、友情などを描いた宮沢賢治の有名な童話作品である。主人公ジョバンニは気がつくと小さな列車の中にいて、白鳥の停車場に行ったり鳥捕りやに出会ったり…。
つまり何が言いたいのかというと、俺は今この童話と同じように進んでいる。幼い頃の記憶だから頼っていいのかわからないが、このまま進めば車掌が切符を確認しに来るだろう。
しかし生憎俺は切符を持っていない。気がついた時にはここにいたのだから持っているはずがなかった。どうしよう…。
「切符を拝見いたします」と気がつくとせいの高い車掌がいつからかまっすぐに立っていた。冷や汗が流れどうしようかと青の方を見ると、彼も自分の分しかないのか同様に慌てていた。
本格的に焦り出した時、小さい頃に母がその童話を毎日少しずつ読み聞かせてくれたことが思い返された。あっと、パジャマのポケットに手を入れてみると緑色のはがきのような紙が出てきた。ポケットに入れた覚えもないし、見たこともない。藁にもすがる思いで車掌に渡すと「南十字へ着きますのは、次の第〜時ころになります」と紙を渡して次の乗客のところに向かっていった。
なんだか可笑しくなって二人で「大丈夫だったね」とくつくつと笑い合った。
ふと視線に気がつき横を見ると、俄かにそこに髪や肩が濡れた少年がひどく驚いたような顔をして立っていた。さらに気配に振り返ると少女と青年もいる。少年と少女が会釈をしてからそれぞれ青と俺の隣に腰掛ける。
少年が「僕、船に乗らなけぁよかったなぁ…」と呟くと少女は両手を顔に当てて肩を振るわせ始めた。青年は二人を宥めている。三人は髪や服が濡れていてどこか顔色も悪かった。
だんだんと顔色が良くなってきた彼等にどこから来たのかと尋ねると、「氷山にぶつかって船が沈みましてね。私は大学生でこの子達の家庭教師に雇われていたのです。ボートは一つが壊れていた上にもう片方はすでに他の小さな子供達でいっぱいでした。みんな泣いていて、腑が千切れるようでした。必死に二人を抱えて浮かべるだけ浮こうと思いましたが渦に巻き込まれてぼうっとしたと思ったらここへ来ていたのです」と青年が答えた。
俺は最初どういうことなのかわからなかった。しかし先生が言っていたり、テレビや本で見たことがある。おそらく彼らはタイタニック号の沈没事故に巻き込まれてしまったのだろう。まだ六歳ほどの少年と十二歳ほどの少女を連れ、人生を全うした大学生の青年。気の毒に思うとだんだんと目頭が熱くなるのを感じた。
そこからは、灯台看守のおじさんがくれた苹果を食べながら、どこからか聞こえるごうごうとしたセロを聞いたり、孔雀が羽を広げたり閉じたり、海豚が川を泳いだり、信号士が赤旗や青旗を振ったり、インデアンが黒い野原を駆けるのを眺めたりしていた。
談笑している青と少女、椅子にもたれながら寝息を立てている少年と成年。みんなが優しい夢を見ていた。
みんな目を覚ました頃、赤い三角標が見えた。さそりみたいに真っ赤だねえと亡き母が話してくれたんだと思い出して微笑んでいた少年少女を見て、なんとも言えないような気分になった俺は二人の頭を撫でてやった。
さそりの火が後ろの方になるにつれて、俄かににぎやかな楽の音や草花の匂いのようなもの、星巡りの口笛やざわざわと賑わう声が聞こえてきた。
「ケンタウル露を降らせ」と反対側の窓の外にいつからかあった青いもみの木を見て少年が叫んだ。青年や青も「ああ、今夜はケンタウル祭だねえ」と頷くものだから、わからない自分がおかしいのかとまた変な気持ちになってしまう。
しばらくすると、「もうじきサウザンクロスですよ降りる支度をしてください」と青年が少年と少女を見た。「僕もう少し汽車に乗ってたいよ」と少年が云うと「ほんとうの神様に会いに行くのですよ」と青年が制止した。しかし、三人みんな別れを惜しそうにしていたのだった。
天の川に差し掛かったその時、青や橙やらあらゆる色で散りばめられたような大きな十字架が凍った雲の中から顔を現した。みんな真っ直ぐに立って手を組んでお祈りを始めた。子供のようにみんな喜んで「ハレルヤ、ハレルヤ」と明るい声が響いた。
十字架の真向かいに向かうにつれ、列車はゆるやかにゆるやかに止まっていくのだった。もう行きますよと青年が少年の手を引き少女の襟を整えてやって、それぞれがこちらにさようならとお礼を言い去っていった。
なんだか寂しくて「さよなら」とぶっきらぼうに返事をするのが精一杯だった。
急にこんなので長男やれるのかなと情けなくなった。ここで優しく頭を撫でてやれる青のような人になりたいのだと気がついた。
車室の中はもうほとんどの人が降りて行きがらんとしていた。
橙「また二人きりになってもうたな…」
青「うん」
橙「…ずっとこのまま青とどこまでも行きたい…なんて可笑しいよな(笑」
青「あは、一緒のこと考えてたんだ。でも…(笑」
橙「でも、俺は彼奴らを守らんといけん…」
青「…ふふ、頼りになるお兄ちゃんだ」
青「でも無理はしないでね(手握」
橙「なー青、本当の幸ってなんやろなあ」
橙「…俺どうしたら彼奴らを幸せにできると思う?」
青「うーん…。一つ助言をするならね、」
青「前橙が住んでた近くに駄菓子屋さんがあるじゃん」
橙「へ、?…青が住んでたところ?」
青「そう。そこのおばさんは信用していいよ」
橙「え…あ、おん」
青「俺は今更気がついたんだけどね、時には信じて逃げることも大事なんだよ」
橙「ふぅん…?」
青「ふふ、今はまだわからなくても大丈夫(撫」
青「あ、あと橙に伝えたかったんだけどね、自分に素直になればいいんだよ。高校だって行っていい。受験応援してるよ」
橙「ふは、青にはなんでもお見通しなんやな(泣笑」
青「うん。何故かわからないけどわかるんだ」
青「橙は昔大人が嫌いだって云っていたけど、意外と大人になるのも悪くないのかもしれないよ」
橙「そうかなあ」
変なことを云い出したと思えば、「あの時の俺たちはまだ子供すぎたんだよ。大丈夫」と云い俺の頭を撫でて笑った。
昔からよく掴めない奴だったけど今の青はさらに大人びている気がして少しむず痒くなったけど「ああ、ありがとうな」と笑ってみせた。
青「あ、次の駅に着いたらもうお別れだよ」
橙「そうかあ…おっさんになってからまた会いに行くな(笑」
青「約束だよ(手握」
橙「ああ、きっと(握返」
葉書のような切符を握って、「ありがとうな」と青に大きく手を振り、列車が走り出して行くのを見つめていた。
不思議と涙は出なかったし、寂しくもなかった。また必ず会えるのだとそんな気がしていたからだ。
列車が完全に見えなくなると同時にそこらがいっぺんに真っ暗になった。ああ、お別れだ。
気がつくといつもの天井が見えて、横の時計は五時を指している。隣には弟や妹が布団もかけずに寝ていて、きっとみんな途中で目を覚まして、父が外に出て行ってからここまで運んでくれたのだと思う。
子供らしい寝顔を眺めて嬉しいような気持ちと、こんな暮らしを強いてしまって申し訳ないというような気持ちの狭間でぼーっとしていると、次男が目を覚まして俺の顔を見るなり「心配してん」と泣き出してしまった。その声で目を覚ました他の兄弟達もみんな目を覚まして泣くんだからつられて急に悲しくなってしまう。
少ししてみんな落ち着いてきた頃、もう逃げてしまおうと話した。最初は慎重な次男が心配していたが、確かにおじさんとおばさんならもう起きているだろうし、顔見知りだから大丈夫だろうと納得してくれた。しっかりしている兄弟を見ていると俺が守っていたんじゃなくて、守られていたんだとつくづく思う。
父がもう家を出ていたことを確認して、みんなで朝の街を駆けた。なんだか久々に息を据えた気がして心地よかった。
瞼の裏にはまだ黒い車体に「銀河鉄道」と無機質な字で書いてあるあの列車が浮かんでいる。何年後かもわからないけど、またこの列車に乗るときまで。
きっと大丈夫。
完成しました‼︎見てくれた方ありがとうございました/ ̫T
いいねコメントフォローよければお願いします‼︎