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夜。
シェアハウスの前。
「……」
もふくんが戻ってくる。
静かな足取り。
でも——
「遅かったな」
声がかかる。
「……」
顔を上げると。
うりが、壁にもたれていた。
「……起きてたの?」
「まぁな」
軽く笑う。
「で?」
視線を向ける。
「誰と話してた?」
「……」
少しの沈黙。
「……見てたの?」
「さぁな」
はぐらかす。
でも。
「……来てたんだろ」
その一言で。
「……」
もふくんは、何も言えなくなる。
「……やっぱりな」
うりが小さく息を吐く。
「何言われた?」
「……戻ってこいって」
正直に答える。
「……はは」
うりが笑う。
「分かりやす」
「……」
「で?」
少しだけ真面目な顔になる。
「どうすんの?」
その問い。
「……戻らない」
即答。
迷いはない。
「……」
うりは、その顔を見る。
「……ほんとに?」
「……うん」
静かな声。
「もう関わらないって決めた」
その言葉。
「……」
一瞬、沈黙。
そして——
「……無理だろ」
うりが、ぽつりと言う。
「……」
「もう始まってんだよ」
少しだけ、低い声。
「お前がどう思ってても」
「向こうは止まらねぇ」
その現実。
「……」
もふくんは、目を伏せる。
「……それでも」
小さく言う。
「やらない」
「……」
「仲間巻き込みたくない」
はっきりと。
「……」
うりは、しばらく黙る。
そして。
「……もう巻き込まれてる」
その一言。
「……!」
もふくんが顔を上げる。
「気づいてねぇだけで」
「もう関係者なんだよ」
静かな声。
でも、重い。
「……」
言い返せない。
「……」
空気が止まる。
「……じゃあどうすればいいの」
もふくんが、初めて弱さを見せる。
小さな声。
「……」
うりは、少しだけ驚いた顔をする。
でも。
すぐに笑う。
「簡単だろ」
「……?」
「全部守ればいい」
あっさりと。
「……は?」
「仲間も」
「日常も」
「全部」
軽く言う。
「……」
もふくんは、何も言えない。
「できるだろ?」
ニヤッと笑う。
「無敗なんだから」
その一言。
「……」
もふくんの表情が、変わる。
ほんの少しだけ。
「……」
目が、静かに鋭くなる。
でも。
「……やらない」
もう一度言う。
さっきよりも強く。
「……」
うりは、少しだけ黙る。
そして。
「……そっか」
それ以上は言わない。
ただ。
「……まぁいいや」
軽く伸びをする。
「俺は隣にいるだけだし」
その言葉。
「……」
もふくんは、少しだけ驚く。
「お前がどうするかは、お前が決めろ」
背を向けながら言う。
「でも」
少しだけ振り返る。
「必要になったら、呼べよ」
その目は——
本気だった。
「……」
もふくんは、小さく頷く。
「……ありがとう」
ぽつりと。
「どういたしまして」
うりは笑う。
いつもの、軽い笑顔。
でも。
その奥には——
覚悟があった。
―――
そのやり取りを。
少し離れた場所から。
「……」
ヒロくんが、静かに見ていた。
(もう関わってる……)
その言葉が、頭に残る。
(じゃあ)
ゆっくりと、息を吐く。
「(自分たちも、無関係じゃない)」
そう、気づいてしまった。
その瞬間。
“日常”は——
完全に、戻れない場所へ進み始めた。