前回の続きです!あべちゃんside!
放課後の廊下を歩くたび、足音がやけに大きく響く。
誰もいない校舎は好きだ。
静かで、秩序が保たれていて、僕の居場所みたいだから。
でも、最近は違う。
この静けさの中で、ひとりの名前が浮かぶたびに、胸がざわめく。
――佐久間大介。
生徒会長で、明るくて、誰にでも優しい。
本来、僕とは正反対の存在だ。
けれど、彼が笑うたび、ふと目が合うたびに、 どうしても目を逸らせなくなる。
今日も、提出書類を理由に生徒会室へ向かう。
ドアをノックすると、彼の声がした。
🩷「……どうぞー!」
扉を開けた瞬間、光の中に彼がいた。
夕陽が差し込む室内で、髪が透けるように光っている。
その横顔を見るだけで、言葉が少し遅れる。
💚「失礼します。生徒会への報告書を。」
🩷「ありがとう。……ねぇ、阿部くん、今日も残ってたの?」
💚「あなたも、ですよ。生徒会長。」
そんな軽口を交わすたび、
胸の奥で何かが痛くも、嬉しくもなる。
“生徒会長”と呼ぶ声の奥に、本当はもっと柔らかい呼び方を隠しているのに。
けれど、誰もいないこの部屋で、彼が小さく囁く。
🩷「……今日、会えるの?」
その言葉だけで、世界が色を変える。
僕は小さく頷いた。
💚「場所は、いつもの資料室で。」
その瞬間、胸の奥に温かい火が灯った。
誰にも知られてはいけない、小さな光。
夜の資料室。
暗闇の中、静かに扉を開けると、彼がそこにいた。
制服のまま、机に腰かけて、僕を見上げて笑う。
🩷「お疲れさま。今日も厳しかったね、風紀委員長さん。」
💚「仕事ですから。」
そう答える声が、少し震えているのを自分でもわかっていた。
彼はすぐにその揺らぎを見抜く。
本当に、ずるい人だ。
🩷「学校じゃ冷たいのにさ、俺の前だとすぐ崩れるんだもん。」
💚「あなたが油断させるんです。」
彼の髪を撫でながら、僕は思う。
どうしてこんなに惹かれてしまったんだろう。
触れたら壊れてしまいそうなのに、触れずにはいられない。
💚「……こんなこと、バレたら終わりですよ。生徒会長と風紀委員なんて。」
🩷「わかってる。でも、止められないんだよ。」
その声が、まるで罪の告白みたいで。
それでも、僕はその罪に溺れたくなる。
🩷「……あべちゃん。」
その呼び方は、校内では絶対に許されない。
でも、彼の口から聞くたび、胸の奥があたたかくなる。
この瞬間だけ、名前の響きが僕のものになる。
彼が僕に体を預ける。
そのぬくもりが、夜の冷気を溶かしていく。
💚「……本当は、堂々と隣にいたいです。」
抑えきれずに漏れた言葉は、少し震えていた。
彼が顔を上げて笑う。
🩷「俺も。いつか卒業したら――隠さなくてもいいよね?」
💚「その日まで、秘密を守りましょう。」
あなたを守るために、僕は“風紀委員”でいる。
彼の笑顔がやわらかく滲んで、
その瞬間、世界で一番静かな夜が、僕らを包んだ。
扉の外では風が鳴っている。
だけどこの手の中にあるのは、
誰にも奪えない“彼”のぬくもり。
それだけで、明日もまた真面目な顔で立っていられる。
コメント
3件
早く卒業来て!!笑