魚肉ソーセージ様のリクエスト
イングランド✕イギリスで共依存
「ぁ゛ッ♡あぁッ♡んぁッ…♡…あ〜ッ♡♡」
薄暗い寝室に、甘く高い嬌声が響いている 。
「はぁッ…♡んッ♡んんッ…♡もっと…ッ♡」
ベッドランプに照らされて、壁に二つの影が揺らめく。
端正な顔立ちの男が、これまた良く似た美しい青年を組み敷いている。
見たところ恋人のような二人が、夜を共にするのは、何ら不思議なことではない、が。
「あッ♡──おにぃさまッ♡にぃさまぁッ♡」
夜伽の真っ最中なのは、英国兄弟──イギリスとイングランドであった。
イングランドのギラめく赤眼が、ドロリと溶けたイギリスの蒼い瞳と交差する。
「おにぃしゃま…ッ♡すきッ…♡すきぃッ♡」
「嗚呼…イギリス…♡」
うっとりと微笑むイングランドは、愛しき弟を、すっぽりと腕の中に閉じ込めた。
二人の愛が歪んだのは、いつだっただろうか。
そんなことは、もはや誰にも分からない。
それでも、ずっと昔──まだ、イギリスが物心つく前は。
「──おにぃちゃまッ!」
可愛らしい声に、イングランドは振り返る。
桃色に染まった頬。
好奇心に満ちあふれた空色の瞳。
イングランドに向かって伸ばされた小さな手。
「どうしたんだ、イギリス?」
しゃがみ込んで、弟と自分の目線を揃えたイングランドは、他の者には絶対に見せない優しい笑みを浮かべている。
「おさんぽ!」
「散歩か、いいな。行こうか」
イギリスの手を引いて、イングランドは歩き出した。
イングランドとイギリスだけが住む邸宅の庭園。
周囲の花々は美しく照り映え、噴水からは清らかな水がさらさらと流れている。
「イギリス、手を離してはいけないよ。迷子になったら大変だ」
「あい!」
「いい子だ、イギリス」
イギリスの手を握ったイングランドは、小さな弟に言い聞かせる。
「だっこ!」
「ははっ…まったく、仕方がないな…」
やれやれとイギリスを抱き上げたイングランドは、満更でもない表情をしていた。
いつもよりもずっと高い位置から辺りを見渡せるのが楽しいのか、キャッキャと歓ぶイギリス。
「イギリス、何をして遊ぼうか」
「うーん…あのね、んっとね、インディアンで遊ぶの!」
「そうか、では何匹か用意させよう」
やはりイングランドの血を継ぐイギリスは、可愛い顔で残酷な遊びを提案する。
自分の色を強く引いたイギリスが、イングランドは愛おしくてたまらない。
「イギリス…おまえが望むものは、すべて与えてやろう。金も、人も、土地も…すべて」
「ぅ〜?」
「今度のプレゼントは、世界丸ごとにしようか」
その言葉を理解しているのかいないのか、くふくふと笑うイギリス。
この時はまだ、れっきとした家族愛が、あったはずだった。
数年後。
いや、数十年後…数百年後だったかもしれない。
イングランドは役割をイギリスに引き継いで、隠居生活を送っていた。
「──お兄さま!」
透き通った声に、イングランドは振り返る。
興奮しているのか、わずかに紅潮した頬。
知的な輝きを有する瞳。
手には何かを抱え、期待の籠もった表情で、イングランドを見あげている。
「どうしたんだ、イギリス?」
イングランドがイギリスの顔を覗き込むと、彼は手に持っていた蒸気船の模型を掲げた。
どうやら、蒸気機関の技術を開発したらしい。
産業革命だなんだと、最近忙しくしていたのは、これを作っていたからなのだろう。
「みてください!僕が発明したんです!」
「イギリスが?すごいな!」
頭を撫でてやると、子供扱いしないでください!と唇をとがらせた。
しかし、イングランドのその手を振り払うことはしない。
「スペインだってフランスだって、もう敵じゃないのですよ!僕は今、世界最強なのです!」
「良くやった、イギリス!」
夜通し研究に励んでいたイギリスの努力が、ようやく報われたようだ。
「いつか僕は、世界中を掌握して、お兄さまに差し上げるんです!海も陸も…そして空も!」
「ふふ…それは頼もしい。ありがとう」
あちらこちらに飛びたっては、植民地が増えたと嬉しそうに報告してくる弟を、イングランドは誇らしく思っていた。
しかし同時に、雛が巣立っていくのを見届けるような、寂しさも感じていたのだが。
「…そうだ!お兄さま、鳥のように空を飛べたら、素敵だと思いませんか?」
「そうだな。鳥か…翼のあるイギリスは、きっととても美しいだろうな」
「もう!お兄さまったら、またそんなこと言って!」
イングランドの言葉は、決して冗談ではないのだが、からかわれたと思ったのだろうか。
ムッと頬を膨らませて、イギリスは高らかに声を発する。
「僕は、世界一の大国になるのです!世界中を飛び回る、大きな鳥になりたいのです!」
「そうか、イギリスならきっとできるな」
「ふふん…ええ、きっと実現してみせましょう!僕はもう、アフリカを股にかけてますからね!」
胸を張るイギリスに、イングランドは微笑んだ。
この時はまだ、れっきとした兄弟愛が、あったはずだった。
転機が訪れたのは、イギリスが弱ってきた頃からだろうか。
「──イギリス」
暗い自室のベッドの上で、力なく座り込み、項垂れるイギリス。
イングランドの声で、彼は緩慢に顔をあげた。
「あ…あぁ…兄上様」
イングランドは、弟の横に腰を下ろす。
ベッドのスプリングが、ギシリと音を立てた。
「散歩に行こうか。それとも、お茶にしようか」
「…」
「おや、お気に召さないようだな。ならば、遊ぼうか、昔のように」
「……」
黙り込んだままのイギリス。
不思議に思ったイングランドは、イギリスの顔をのぞき込む。
「どうしたんだ、イギリス?」
長い沈黙が下りた。
そして、イギリスの形の良い唇が、わななきながら開く。
「兄上………私は……弱くなりました」
「…そうか」
どうやら、イギリスの子、アメリカが反抗したことが、彼のトラウマとなったらしい。
アメリカはイギリスのお気に入りだから、イギリスは彼をたくさん愛していたのに。
とは言っても、歪な愛しか知らないイギリスの愛し方は、想像に難くない。
「アメリカに負けました…ドイツさんにも勝てません…」
さらに近年、イギリスが100年以上かけて達成した工業化に倣って、他国が数年で成長し、イギリスを超えるまでに至った。
イギリスの覇権─パクス・ブリタニカは、終わりを迎えていたのである。
「もう…もう…だめですッ…!おわりなんです…ッ」
イギリスは顔を手で覆った。
指の間から、透明な水滴が流れていく。
声を上げることもなく、ただ、ポロポロと泣いている。
「私は…私には…ッ…もう、価値がない…ッ」
ついに、イギリスが叫ぶように絞り出した一言。
「──そうかもな」
「え…?」
イングランドは、否定しなかった。
兄はきっと慰めてくれる、否定してくれる、そう思い込んでいたイギリスは、思わず顔を上げた。
頬に、涙の跡が残っている。
「日の沈まない大帝国は終わった、そう揶揄する者はいるだろうな」
「そ…んな…」
「これから先、おまえは失っていく一方かもしれない。金も、人も、土地も…すべて」
色を失ったイギリスに、イングランドは刷り込むように囁く。
─イギリスを敬う者はいない。
─イギリスの味方は、誰もいない。
「兄上…どうして…ッ?うぅッ…どう、して…」
呪いの言葉を注がれたイギリスは、絶望に瞳を昏くした。
ハイライトを喪った青い瞳から、ボロボロと涙滴が落ちていく、堕ちていく。
「イギリス、大丈夫だ。安心しなさい」
「おにぃ…さま…」
そんな彼を、イングランドはそっと抱きしめた。
まるで、壊れ物に触れるように。
まるで、羽をもがれた鳥を拾い上げるように。
「私は、私だけは──イギリスをずっとずっと、愛し続けるから…♡」
イングランドの肩に縋り付き、カタカタと泣きながら震えるイギリス。
声もなく涙を流す弟に見えないところで、イングランドはうっとりと仄暗い笑みを浮かべた。
その日から、イギリスは坂を転げ落ちるように、小さく弱くなっていった。
世界の三分の一を領有した大英帝国は崩壊し、世界の覇権も息子に取られたらしい。
追い込まれ、低空飛行を続けるイギリスに、イングランドは少しずつ様々なことを教えてやった。
─イギリスを愛する者は、イングランドだけ。
─イギリスを救済する者は、イングランドだけ。
─イギリスの側にいてくれる者は、イングランドだけ。
悪魔の囁きに耳を貸してしまったイギリスは、イングランドの愛という鳥かごに囚われていく。
もはやイギリスは、イングランドがいなければ、生きていくことさえできないだろう。
──コンコン、
イングランドは、イギリスの部屋の閉ざされた扉をノックする。
「イギリス、失礼するよ」
返答が返ってこないのは、いつものことだ。
返事を待たずして、イングランドは弟の部屋に、足を踏み入れる。
「にぃさま…」
「おや…おはよう、眠り姫」
公務のない日は、ずっと部屋にこもり、ベッドに横たわることしか出来なくなったイギリス。
やむを得ない仕事がある時は、イングランドに身支度を全て任せ、仕事場まで抱きかかえられて運ばれるのが、日常と化している。
今日もイギリスは、シーツに寝転がったまま、イングランドを虚ろな目で見上げていた。
「スープを持ってきたのだが、食べるか?」
「…ん」
肯定と判断したイングランドは、ベッドに腰掛け、イギリスの上体を抱き起こす。
イギリスの体は成熟し、その体格はイングランドと大して変わらない。
しかし、振る舞いはまるで、孵化したばかりの鳥の子のようだ。ただただ受動的、それに尽きる。
スプーンで掬ったスープを、イングランドはイギリスの口もとに運んだ。
「んん!」
「ははっ…まったく、仕方がないな…」
しかし、ふいっと顔を背けたイギリスに、イングランドは苦笑した。
イングランドは自ら、スープを口に含ぶ──そして。
「んむ…コク…コク…ッ」
イングランドがイギリスに口づけると、彼は自発的に口を開けた。
兄は弟の口内に、スープを少しずつ流し込む。
「コク…んく…ぷはっ」
「ごっくんできて偉いぞ」
餌をねだるひな鳥のように、イギリスは食事さえも、イングランドに任せきりになった。
イングランドに口移しされないと、イギリスはもう、食べ物を口にすることさえ出来ない。
咀嚼、そして嚥下すらも億劫になってしまったようだ。
「んふ…コク…」
それを、何度も繰り返す。
そのうちに、スープ皿は空になった。
「イギリス、片付けてくる。良い子でお休み」
イングランドが立ち上がり、部屋を離れようとした、その時。
ぐっと強い力で腕をつかまれて、彼は振り返る。
「…ください」
「すまない、今なんと?」
「──はなれないでください」
普段の彼からは考えられない程の力の強さで、 イングランドを引き留めるイギリス。
イギリスの青い瞳は、綺麗で澄んでいたはずの瞳は、昏くドロドロと濁っていた。
「離れないで…わたしから…離れていかないで…」
イングランドに縋るような声。
イギリスは必死だ。
もし、兄に見放されたら、文字通り彼は、死んでしまうだろうから。
「もうどこにも行かないで…おにぃさま…!にぃさま!いかないでよッ…!」
喉奥を引き攣らせて、イギリスは叫ぶ。
「にぃさま…グスッ…にぃさまぁ…ぅうッ…」
イングランドの腕に額を擦り付け、グズグズとぐずり始めたイギリス。
そんな彼を見下ろして、イングランドは──ゆるゆると唇の端を持ち上げた。
「イギリス…大丈夫、大丈夫だ」
「にぃさま…」
「私がいる。私だけは、ずっとおまえの側にいるよ」
やっと、やっと堕ちてきた。
イングランドの可愛い小鳥は、ようやく鳥かごに帰ってきた。
自信という名の双翼をもがれ、野心という名の飛翔力を失ったイギリスは、もう二度と、イングランドの元から飛び立つことはできまい。
「ずっと、いっしょ…? 」
「ああ…ずっとずっと、永遠に」
イングランドの言葉に、イギリスは心底安心したように息を吐く。
ベッドに再度戻り、イギリスの隣に腰掛けたイングランドは、弟の顔をそっと引き寄せた。
そして、どちらからともなく接吻を始める。
「ん…ふぁッ…にぃひゃま…はぁ…ッ♡」
れろ…くちゅ…いやらしい水音が鼓膜を打った。
兄の長い舌を絡められ、イギリスの脳は甘く溶けていく。
「ふ…ぅん…はぁッ…♡は…♡んくッ…♡」
嗚呼…越えてはいけない線を越えた。
これはもう、兄弟間のキスだとは言えない。
ぼんやりと自覚したイギリスは、それでも自ら舌を伸ばして、甘い甘い口づけに酔った。
「ん…にぃさま…」
「どうしたんだ、イギリス?」
嗚呼…もう、戻れない。
「──満たして、ほしいです」
イギリスの瞳には、もはやイングランドしか映っていない。
昏い悦びに胸を躍らせたイングランドは、イギリスをシーツに押し倒す。
「愛しているよ、イギリス…♡」
「んッ…わたしも…あッ♡おにぃさまッ♡」
二人の愛は、歪んでいた。
ぱちゅん♡ぱちゅッ♡
「んッ♡ふ…ッ♡あ゛〜ッ♡んぁッ♡ぁあッ♡」
薄暗い寝室に、甘く高い嬌声が響いている。
イギリスが陥落したあの日から、英国兄弟は毎晩、愛を確かめ合っていた。
「にぃさま…ッ♡あ゛ッ…♡にぃしゃまッ…♡」
「ふふ…イギリス♡」
きゅんきゅんと疼いてたまらないイギリスの腹の奥は、兄の怒張で満たされていた。
こつん、こつんと最奥を突かれるたびに、イギリスの視界で星が散る。
「はぁ…ッ♡い゛ッ♡ぁあ゛ッ♡あ゛ぁあッ♡」
ぢゅ、ぢゅ…ッと肌に吸い付かれて、イギリスはピリピリとした痛みに喘いだ。
既に彼の体には、イングランドの噛み跡が、ほぼ全身にわたって刻まれている。
「おや…また消えかかっているな」
「あ゛ぅッ♡ぃ゛いッ♡きもちッ♡ん゛くッ♡」
薄くなってきた所には、イングランドが再びマーキングするものだから、消えない傷跡になったものも少なくない。
ぱちゅ♡ずちゅんッ♡
「あ゛ッ♡ィくッ♡イきゅッ♡…あ゛ぁあ〜ッ♡♡」
快楽漬けの日々に、射精システムが壊れてしまったのだろうか。
ついにイギリスは、達しても精液を吐き出さない不能と化していた。
でも大丈夫、今さら何を失っても、兄に愛されることに変わりはない。
「はーッ♡はーッ♡…おにぃ…さま…ッ♡はぁッ♡」
快楽の頂点に上り詰めた直後、息を切らして、ピクピクと痙攣するイギリス。
無理もない。今日の絶頂回数は、二桁をとうに超えている。
「にぃしゃま…ッ♡も、むりぃ…♡」
「イギリス…おまえは本当に可愛いな…♡」
イギリスは、舌をしまうのすら忘れ、涎をたれ流し、快楽ゆえの涙をポロポロ零した。
そんな弟の姿に、イングランドは更に、加虐心を昂らせる。
ごちゅんッ♡
「──んぁあ゛ぁあ゛ッ!?や゛ッ♡むりぃッ♡」
「ほら、頑張れ♡まだイけるだろう?」
イったばかりのイギリスに向かって、イングランドは再び腰を打ち付けた。
「あ゛ぁあ゛ッ♡はぁあ゛ッ♡イぐッ♡あ゛ッ♡」
カシャンッ!カチャカシャガシャ!
喘ぎ声とともに聴こえてくるのは──やかましい金属音。
見ると、イングランドの左手と、イギリスの右手は、互いに手錠で繋がれている。
イギリスが暴れるたびに、鎖が擦れて音を立てているようだ。
パンッ♡ずちゅッ♡─カシャンッ!カシャッ!
「こらこら…暴れるな、イギリス♡」
「ひゃいッ♡…んぁ゛ッ♡ごめんなしゃッ♡」
舌っ足らずで謝るイギリスに、イングランドは愛おしそうに目を細めた。
しかし、依然として律動を止めることはない。
それどころか、更に腰の動きを早めていく。
ぱちゅんッ♡こちゅんッ♡
「それに…ッ、私は言ったはずだろう?」
イングランドは、イギリスの指に自身の指を絡め、恋人のように手を繋ぐ。
そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「イギリス、手を離してはいけないよ…とね♡」
イギリスが幼い頃、イングランドが繰り返し言い聞かせたその言葉。
成長したイギリスは、一時、イングランドの手を振り払って、世界という大空に飛び立ってしまったけれど。
「あぅッ♡はひッ♡にぃさまッ♡」
もう、イギリスは、二度とイングランドの手を離すことはない… いや、できない。
飛べなくなった小鳥は、愛の檻に囲われて、一生餌付けされるだけ。
「んッ♡いぎりすはッ…ずっとッ♡にぃさまといっしょだから…ッ♡」
二人を結ぶ手錠が光る。
「にぃさまのて、はなさないからぁッ…♡」
恋人繋ぎした手を、イギリスにきゅっと握られて、イングランドはうっとりと微笑んだ。
「いい子だ♡」
「あッ♡イくッ♡あぁッ♡にぃさまッ♡イきゅッ♡」
ぱんッ…!ぱんぱんぱんッ!
肌が重なる音が大きくなっていく。
フィナーレも近い。
ぎゅっと眉を寄せたイングランドの腰に、イギリスは足を絡ませる。
「にぃさまっ♡いっしょッ♡いっしょがいぃッ♡」
「嗚呼、イギリス…♡」
どちゅんっ!
イングランドがイギリスを抱え込んだ瞬間。
ビュルルルルルルルルルルルッッッ!
「あ゛ッ♡───〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ♡♡♡」
「ふ…♡」
イギリスの最奥が、イングランドの色に染められた。
「ん…ふ…♡」
絶頂とともに意識を飛ばしたイギリス。
目の前が真っ白になって、お腹の中が温かくて、それでいて、心は満たされている。
「にぃ、さま…♡」
イギリスは、腹の奥に確かな熱を感じながら、ゆっくりと深い眠りに落ちた。
「イギリス…」
イングランドは、穏やかに眠る弟の頬を撫でた。
美しいかんばせに、満足そうな笑みを浮かべ、魅惑的な紅い瞳に、執着心を宿している。
「可哀想なイギリス…私の可愛い弟…♡」
頬に添えられたイングランドの手に、イギリスは頬を擦り寄せる。
意識がないにも関わらず、イギリスはどこまでも健気である──しかし。
「ふふ…おまえは気づかないだろうな──おまえの破滅も何もかも、全ては私のせいなのだよ」
イギリスが力を失い始めた時。 夜な夜な無力感に苦しむ弟を、イングランドはあえて、見て見ぬふりをした。
イギリスが壊れ始めた時。本来ならば励まさねばならないのに、イングランドはあえて、イギリスを洗脳して追い込んだ。
イギリスが兄を”そういう”相手として認識し始めた時。 健全な兄弟関係を維持するのではなく、イングランドは嬉々として、イギリスを抱いた。
イギリスは、飛べなくなった。
それは、イングランドが、弟を弱らせたから。
弟が自分に依存するように、仕向けたから。
そう、イギリスの風切り羽を切り落としたのは、他でもないイングランドだ。
「イギリス、手を離してはいけないよ」
イングランドは、何度も何度も刷り込んでいく。
「もう二度と、私の手を離さないでおくれ…」
じゃら…。
イギリスとイングランドを結ぶ手錠が、無機質な音を立てた。
「おまえが飛んでいってしまったら──今度こそ私は、狂ってしまうだろうから」
愛しているよ、イギリス。
イングランドはそっと、イギリスの額に口づけた。
──さて、飼い慣らされた小鳥は、一体どちらだったのだろうか。
ありがとうございました。
今回は、史実重視ではなく、心情重視で書いてみましたの。
ですから、本来はザックリ申し上げますと、
産業革命→1776年アメリカ独立→19世紀半ば〜パクス・ブリタニカ(イギリスの一人勝ち)→19世紀後半〜帝国主義(イギリスの転落開始)→第一次世界大戦→帝国主義終了・イギリス転落→第二次世界大戦→脱植民地化ほぼ完成
ですが、所々、ごっちゃになっております。
途中、ん?と思われた方もいらっしゃると思います…ごめんあそばせ。
R18描写が少なくて申し訳ありません。
鬱になって何もできなくなった受けが、口移しされるのが癖でして、無駄表現が文字数を圧迫してしまいましたの…。
英国空軍って、お強いんですってね。
空軍→空→鳥…ということで、今回は鳥になぞらえた描写を増やしました。
意気揚々と世界に飛び立ったイギリスさん、ぜひとも羽根をもがれて、お兄さんに飼われていて欲しいですわ!!
手錠シーンについて。
24時間365日、ずっとつけっぱなしです。
イングランドさんが鍵穴を潰したので、二度と外れません。
魚肉ソーセージ様、素敵なリクエストありがとうございました!
それでは皆さま、ごきげんよう。
コメント
8件
インイギってあんまり見ない(見れない)から見れて良かった…尊かったです
すげえ…こんなに神作なら自分のリクエストも期待しちゃう… 頑張ってください!!
歪んでしまった兄弟愛。共依存しているお二人。最高でした。イングさんの行動をしらずに依存してしまうイギリスのなんと愛おしいこと。そして、貴方様の表現もお美しく、すっと頭に入ってきました。最高の作品をありがとうございました。