あっ、戻ってきた。
「おまたせにゃー。こいつが私の相棒だにゃー」
「俺様はキングコブラッドストーンだ。よろしく!」
「あ、ああ、よろしく」
えっと、キングコブラってこんなにでかかったっけ? 十メートルくらいあるぞ。
「あー、なんか眠くなってきたにゃー。おやすみにゃー」
「あっ! こら! 寝るな! 試練はどうするんだよ!」
「大丈夫だ。俺様が相手をしてやる。さぁ、かかってこい!」
「な、ナオトさん! 相手は世界最大の毒蛇ですよー! どうやって勝つつもりなんですか?」
「チエミ、お前は下がってろ。お前を守りながら戦える自信がない」
「わ、分かりましたー!」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)が洞窟の岩陰まで飛んでいくとやつは何の前触れもなく襲いかかってきた。
「シャー! 死ねー!」
「うおっ! あっぶねえな。というか、変温動物のクセにどうしてこんな寒い場所で活動できるんだ?」
「それは俺様の体がブラッドストーンでできているからだ。いや、キングコブラの形をしたブラッドストーンだからと言った方がいいな」
「そうか。なら、お前の体を砕けばいいんだな」
「砕けるものなら砕いてみろ!」
俺はやつの腹めがけて突撃した。
「おっ、射程圏内だな。これでもくらえ! ポイズンシャワー!」
「なんのっ! ポイズンシャワー返し!」
「ぎゃああああああああ!! め、目があああああああ!!」
風の加護があって助かった。なかったらモロにくらってたな。
「とどめだ! ピーコックガトリング!!」
「いてっ! いててっ! な、なんだ! これ! 鳥につつかれてるような気分だ。あー、もうー、やだ! 降参するからそれやめてくれー!」
「分かった。ところで目、大丈夫か? どこかで洗ってこいよ」
「あ、ああ」
やつはそう言うと洞窟の外にある雪に顔を埋めて目に入った毒を落とし始めた。
「おい、アクアマリンクス。キングコブラッドストーンを倒したぞ」
「あー、そう。じゃあ、私も負けでいいにゃー」
「え? いいのか? 俺、お前と戦ってないぞ?」
「別にいいにゃー。というか、私最初からやる気ないにゃー」
「そうか。じゃあ、三月の誕生石の試練はこれで終わりってことか」
「にゃー。そんなことより私の枕になってほしいにゃー。人間の体温を感じたいにゃー」
「分かった。えーっと、膝の上に乗せるか」
「にゃー。幸せだにゃー」
「ナオトさん、もう終わったんですか?」
「三月はもう終わったな」
「そうですか。意外とあっけなかったですね」
「そうだな」
「その猫、かわいいですね」
「ああ、そうだな。よしよし」
「にゃー、気持ちいいにゃー」
次の試練が始まるまで俺たちはアクアマリンクスを愛《め》でていた。
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