「………っ」
口を紡わずには居られなかった。
るいが、私に『可愛い』と言ったのだ。
しっかりと聞き取れた。
思わず動揺し、目が泳いだ。
これまで言ってくれたことが無かった言葉―――。
私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
言葉に表せない。
だから、私はるいに、ゆっくりと言った。
「もう一回、言って―――、」
「え?」
「もう一回、さっき言ったことを、言って―――」
「……」
るいはしばらく黙ってから言った。
『るなは、ありのままの姿が一番可愛い』
って。
あんなるいが、こんな事を言ってくれるなんて―――。
未だに信じ難くて、目を見開いている。
そんな私を見たるいは、唐突な笑顔で言った。
「たとえるなが俺のことを好きじゃなくても、俺はずっと好きだからな」
「分かれても、契約解除してもだ」
「退院したら、また美味いもん食いに行こうぜ?」
可愛いからの、好き攻撃はもう……
死にそう……っ!!////
私は心の中でそう叫んだ。
―――もう私、るいにゾッコン状態。
縁なんて無いと思ってたけど、今ではちゃっかり仮を外して彼氏扱い。
自分の中では、もう彼氏としか見ていないから。
でも、そんな事はまだ言えない。
もっと私を好きにさせてから、愛の告白をするんだ!
だから、それに向けて力をつけて、無事退院しないといけない。
まずはこれが第一関門だ。
るいのおかげで 更に元気がみなぎってきた。
そしてるいが帰ってからも、懸命にリハビリに励んだ。
―――全てはカレのために。
―――1ヶ月後
真夏の炎天下、病院内の部屋は、外の暑さを忘れてしまうほど涼しく快適だった。
そんな中、私はリハビリを頑張ったおかげで、少し早めに退院出来ることになった。
今日も、るいが退院を祝うために来てくれる―――
予定だった。
―――そろそろるいが来てくれる時間。
私はこの瞬間を楽しみにしていたのだが、るいはいつまで経っても姿を現さない。
そして、心配になった看護師さんがるいに電話をしたところ、あいにく今日は病院に来れないのだと言う。
急な予定が出来たそうだと、教えてくれた。
「今日、来れないんですか…?」
「ええ、そうみたいですね。電話、代わりましょうか?」
「お願いします」
「(せめて口頭だけでも、おめでとうって言ってもらいたいし…)」
電話を代わると、真っ先にるいの声が聞こえてきた。
『るな!』
『ごめん、ほんとに急な予定が入っちゃったんだよ…』
『今日が一番大事なのに………ごめんな』
そう言う るいの声色に、私は少し違和感を感じた。
言葉では「ごめん」と言っているものの、どこか愉しそうで、哀しいという雰囲気が伝わってこないのだ。
それに、ざわざわと後ろから雑音が聞こえるのも確か。
黄色い歓声が耳に飛び込んでくる。
____だけど、私は続けた。
『全然大丈夫だよ!今日じゃなくても、いつでも会えるよ!』
『……ところで、今どこに居るの?』
その問いに、るいは早口で答えた。
『家家!俺の家だ』
『…………そっか、分かった』
『じゃあまたね』
『ああ、了解』
るいはそう言って間もなく、電話をぷつりと切った。
やっぱり違和感を感じた。
これは何かおかしい。
嫌な予感がする。
そんな事も考えたが、私は至って純粋な笑顔で、病院の方達に感謝を伝えた。
そして、病院を無事退院したのである。
コメント
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ごめん!これ妹www
あのさ~今日さ一おすしやさんいくんだーいいでしょー